クリティカル・リアリティー

ノベルバユーザー390796

第十二話 静寂(4)

 利名子は迷わず前へ出ていく。目の前の男は銃を構えている。
 利名子がお互いに手を伸ばせば届く程の距離に着いた。


「さァ始めるぜ」


 利名子は身構えるが、男はバットを振り下ろし利名子の手に直撃する。間髪入れずバットで利名子の脇腹を殴りつける。利名子は横になって苦しそうに脇腹を抑えているが男は止めようとしない。利名子は涙を流しながら俺達を見つめる。


「なんで私を助けてくれないの……? 酷いよ」


 何かがおかしい。利名子はそんなことを言わないはずだ。なんと言うか……助けを求めたりは出来ない……思い込んでいるだけかもしれないが。それに、抵抗しないのは不自然だ。まるで誰かに助けられる用に仕向けているようだ。


「ねぇ……一人にしないでよぉ……」


「……っ……!」


 陽向が利名子の言葉に反応する。やめろ、近づくな。そう言い出そうとしたが、陽向はすぐさま走り出したため止める事ができなかった。


「……‼ このクソガキ!殺されてえのか⁉」


 男は陽向をバットで軽く薙ぎ倒す。利名子に近づけない。気のせいかもしれないが、利名子の顔が一瞬、顔がニヤッとした気がする。
 俺は走り、陽向の肩を掴み、利名子に近づけないようにする。


「そこのガキは物分りがいいねぇ、オラァッ!」


 利名子をバットで殴り続けている。三人はただ眺めているだけだ。陽向は必死に抵抗するが、俺は羽交い締めに動けないようにする。


「ナ……なんデ……たすけて……くれねえんだよ……!」


 利名子の顔が溶け、男とも女とも思える中性的な顔が姿を表す。服装は学校指定の制服が溶け、どんな服かもわからない。


「ッ!!」
「悪いけど、僕本気で君のこと殺すから」


 そういうと怪物セイギは全身を変化させる。まるで俺が好きなアニメの『物理16世』、その中の悪役の怪人『ディーヌ』にそっくりだ。セイギはディーヌと同じように一本の線を生み、男の腹部にめがけて放つ。


「……わりーけど、てめえが何になったのか知らんが、そんなのに負けるわけねぇだろ!」


 男はディーヌの特徴を知らない。ディーヌは主人公の仲間を七人も殺した必殺技を持っている。まさか……


「〈スプラッシュ・ドラグーン〉」


 この技は、赤と青の二重の螺旋状になるように敵を貫く。それを11本放つ。作中では未だに受けきれた人物はいない。主人公ヒーローでもない一般人が耐えられる訳がない、本物なら。


「グッ」


 一本が脇腹を掠めるが、なんとか避けきった。二本をバットでずらすも次の三本目でバットを飛ばされた。残り八本も残っている、どうするんだ?


「……そういうことね、ターゲットがいる地点で交差する。そこで回避すればいい容易な技だ」


 そんな手が、と思わず感心してしまったが、男は言った通りに華麗に避けていく。七本避けきった所で俺達は油断していた。
 残った一本が俺のところに飛んできた。が、男の言ったように行動すると避けきることが出来た。


「……やるじゃん、初めてだよ避けきった奴を見たのを。」


「……‼」


 男は俺達に背を向けている。男は俺達に脅すように話す。


「……悪いがお前達ガキは逃げたほうがいいぜ。久しぶりにマトモに戦えそうな奴を見つけられたんでな、邪魔されたくねえんだ。立花とか言う奴にも一応伝えといてやるぜ。殺すかもだけどよ。」


「フード野郎、このセイギ相手に殺されないとでも言いたいのか?来いよ」


 二人が戦闘をしてる内に三人はこの場を去ることにした。
 海廊中学校へ向かった。






























 俺とセイギが殴り合ってから数分が経った。結果としては、俺は負傷こそしてはいないが、スタミナや疲労の限界が近く、セイギは余裕こそあったが、何かが伝えられたように何処かへ消えていった。
 先程貴田財団の者を殺害したのは不味かったな。とりあえずどこかの怪物に殺してもらうか。
 前回までは殺さないように抑えてたのにあの野郎俺の秘密晒しやがって、おかげで殺しに行かねえとだな。
 待ってろ、
 

コメント

コメントを書く

「現代アクション」の人気作品

書籍化作品