クリティカル・リアリティー
第八話 再動
「知音、待て!」
健人は俺達が移動するのを制した。
「こっちに来てくれ」
再び健人のいる店に入る。
「ここに、あるんだろ? 怪物の残骸が」
そう言って足元を指す。そうだ。ソウ……とやらもあの崩れた、死んだ場所にいたんだ。
健人と共に灰になった残骸からアイツを探す。
といっても、すぐに見つかった。心臓のような見た目をしているが、サイズはテニスボールとハンドボールのボールの中間ほどで思っていたよりも軽そうだ。
「これが……あの怪物なのか……これで誰かがまた能力が使えるようになるのか? ……いや、それとも……?」
もしかしてと思い、触ってみたが何も起こらない。
能力を複数持つことは出来ないのか?
「俺が持っとくか?」
「はい、レオさんが持っていたほうが良さそうだ」
レオさんに差し渡す。
レオさんはどこで拾ったのか分からないが、ショルダーバッグにしまう。
弘成、待ってろよ。
光が差し込む。暖かい日差しだ。長い夢でも見ていたような気分に陥る。不安に耐えきれず目を開けた。周りには折れた木ばかりで状況を飲み込めなかった。
とりあえず立ち上がって見て初めて気づいたことがある。俺は陽向を下敷きにしていた。
ここで、今までの出来事を思い出した。
怪物に襲われた事。ここまで逃げてきた事。そして……ここで殺された事。
何が起こったのかが分からない。今でも夢なのではないかと思える。
そうだ。まずは陽向を起こそう。腰をかがめ、手を顔に近づける。手を、握られた。まだ夢でも見ているのだろう。
急に、体を引っ張られ、倒れ込む。肌と肌が触れ合う。陽向の手の力は抜け、我に返った。だが、陽向は俺を思いきり抱きしめる。口が軽く開き、寝言だろうか、一言呟いた。
「おかあ……さん」
そうだった。お互いそこまで仲は良くないが知っていた。陽向の親は離婚している。
「お母さん……たすけて……」
より力強く抱きしめられる。今はお父さんと過ごしているはずだ。寂しいのかな。目が覚めたときに何を言われるか分からない、そっと彼女の手から抜ける。
「まって……いかない……で」
この言葉に何故かドキッとした。何故だろう。考えてみる。
――そうだ、あれを思い出したくはない。あの事は。
「……おーい大丈夫か? 弘成……とひな……た」
「なんか勘違いしてるな?」
明人のおかげで冷静になれた。改めて陽向を起こす。
「陽向、俺だ。深谷弘成だよ。とりあえず……起きて」
陽向も目を覚ました。
「……あ、お、おはよう」もしかして起きてた?いやでもそれを聞くのはやめとこう。
***
五分ほど経ち、ようやく状況が掴めた。どうやらここには俺と。陽向、そして明人の三人しかいないようだ。
あの時、他に健人と真凛がいたはずだが、どこへ行ったんだろう?
「明人ー今何時くらいだ?」
明人は腕時計をつけているので聞いてみた。
「えーとな、今は9時36分、何時間か立っているな。」
「とりあえずさ、さっきというか、直前までいたあの公園?に行ってみる?もしかしたら皆いるかもしれないし」
「……えっ? あそこに戻るの?」
陽向はさっきから落ち込んでいる。
「行動しなかったら何も変わらない。だろ?」
「動けないなら俺が支えるからさ」
明人がアシストしてくれる。
こうして、あの場所に向かうことにした。
歩いて向かっている分とても遠く感じる。
しばらくして公園の近くに来た。
む? 公園の中から声が聞こえてくる。
「弘成、止まれ。なんか怪しいぞ」
足を止める。ちらっと覗きながら聞いてみる。
どれどれ?
「た、たのむ! もうこれ以上はやめてくれ!」
半泣きの男の声が聞こえる。
その男の前にいるのは……中学生だか小学生くらいか、声質は女か?仮面をつけていて顔も見えないし、大きなコートも着ていて全然分からないな。
「……いや、ダメだね。悪いけどさあ……死んで?♪」
「やめ」
一瞬、コート仮面の腕から植物の枝らしきものが伸び、男の頭を刺す。一箇所だけではなく、何箇所も、あらゆる角度に刺さっている。
「う、嘘だろ……?」
明人の顔がどんどん青ざめる。陽向はそもそも見ようともしていない。
これは逃げたほうが良さそうだ。
逃げようとした。
「おーーい弘成ーーー‼ 逃げないでーー‼」
あのコート仮面が俺に向かって声をかけてくる。仮面の中にボイスチェンジャーでも入っているのか本当の声が分からない。
なんで俺を知ってるんだ?
「もしかしてさぁ、今の見てた? やだなぁ、私達は悪い事してないよ? だってこの男達、いきなり襲ってきたんだよ? 間違ってないよ?」
ん? 私達? まさか複数……どうやら、ここから間違った返答をしたら終わりそうだ。仮面の背後からさらに似た格好をした二人が出てきた。
「確かに、襲ってきたほうが悪いが、その……許しても良かったんじゃないか? それに……さっきの枝みたいなのはなんだよ?」
「……あぁ⁉」まずい。触れちゃいけなかったようだ。
「やっちゃいますかぁ♪」
後ろの二人もどうやら何か持っているらしい。
「死にたいようだね」
「……逃げたほうがいいよ」
片方も戦闘意欲が高い。もう一方は追って来ないようだった。
リーダーらしき人物と一人が襲い掛かってくる。
「逃げるぞ! ほら陽向いくぞ!」
しゃがみこんでる陽向を引っ張り逃げる。
ズドンと音がし、俺のすぐ真横をすり抜けていく。なんだよこれ⁉
まるであの怪物と同じじゃねぇか!
必死に逃げているがあいつらの足も人間レベルのようで、意外と追いつかれそうにはならない。だが、問題なのはあの二人の超能力だ。
種は分からないがとにかく危険、追い詰められたら最後だ。
「弘成! どこに逃げんだ⁉」
「森には入るな! さっきのところに戻るんだ!」
「おう!」
「舐められたもんだね……? アンタ、行くよ!」
あの二人、これ以上詰められるのか?
ドン!
振り返って見てみると、小さい方がもう一人の腕から出てくる砲弾? のような物に乗っている。
「そんなの……アリかよ!」
「……」
陽向は黙っているが、足にも力を入れ走っている。
「右に行くぞ!」
「おう!」
右へ走って逃げる。
「ふーん……甘いね」
そういって女は、腕から生やした枝で周りの木を掴み、パチンコの要領で一気に距離を詰められる。俺はさらに焦る。
「待て弘成!」
――しまった。逃げる事に必死だった俺達は崖に気付けず、山から滑り落ちる。
「おい待て! 意地でも捕まえてやるっ!」
枝が伸びてくる。だが、捕まるよりも先に地面に落ちた。
「逃げよう!」
「あっ‼」
陽向の首に枝が絡みつく。足が地面に浮き、呼吸が出来ていない。
明人と俺で解こうとしたが解けない。
「俺が土台になる!」
明人は陽向の足場になり息が少しだけ吸えた。
解こうとするもまだ解けない。
「アハハ! 面白いねぇ! まぁ。殺しちゃうけど」
枝に少しずつ力が込められていく。
「やめ……て……」どうすれば……
「ハハ……ん? な、なんだアンタ?」
その時だった。崖の上からけたたましい轟音、そして、砂煙が舞い、やがてこの鎖も一部分が溶けて落っこちる。
「ハァハァ……」
陽向の呼吸は荒いがどうにかなったようだ。
まだ、苦しんでいるが、ここよりも遠い何処かへ逃げないといけない。俺達は山を下り街へと逃げた。
「なんでアンタがここにインだよ、怪物が」
「悪かったね、お前が何をしているか知らんが、俺はお前ら人間を殺すことが目的なんでねッ!」
「させるかよっ!」
私は枝で壁を作りこいつの攻撃を防ぐ。
「同じ手は効かないよっ!」
「そうよ、くらいなさい、この弾丸を」
怪物に向かって仲間は砲弾を打ち込む。
怪物の体に被弾し、屠っていくと思われたが、軽く凹んだ所で勢いは止まり、地面に落ちる。
「! 何故お前らがそんな能力を……仲間のものでもない……お前らは一体……?」
「……私達はね!」
「―――お前の協力者。だ。」
「――て、奪わないでよ!カッコイイのにそれ!」
いつの間にか追いついてた彼。むー悔しいな。
「そんな話信じられるとでも思ったのか?」
「じゃあさ、信じられる話でもしてあげようか?」
「断る。お前を殺すだけだ。」
「――オマエはホントに私達を殺せると思うの?ねぇ№1、いえ、カイさん?」
「な…………何故知っているその名を」
「……僕らは協力者だからですよ、同じ目的―――」
「そう、人を殺すの」
「私達も!」
「フッ……面白い……そうか」
少し笑いながら怪物は森の中へと消えていく。
もうあの三人はいないし、他の人を探そうかな♪
人間はどーこかな?
健人は俺達が移動するのを制した。
「こっちに来てくれ」
再び健人のいる店に入る。
「ここに、あるんだろ? 怪物の残骸が」
そう言って足元を指す。そうだ。ソウ……とやらもあの崩れた、死んだ場所にいたんだ。
健人と共に灰になった残骸からアイツを探す。
といっても、すぐに見つかった。心臓のような見た目をしているが、サイズはテニスボールとハンドボールのボールの中間ほどで思っていたよりも軽そうだ。
「これが……あの怪物なのか……これで誰かがまた能力が使えるようになるのか? ……いや、それとも……?」
もしかしてと思い、触ってみたが何も起こらない。
能力を複数持つことは出来ないのか?
「俺が持っとくか?」
「はい、レオさんが持っていたほうが良さそうだ」
レオさんに差し渡す。
レオさんはどこで拾ったのか分からないが、ショルダーバッグにしまう。
弘成、待ってろよ。
光が差し込む。暖かい日差しだ。長い夢でも見ていたような気分に陥る。不安に耐えきれず目を開けた。周りには折れた木ばかりで状況を飲み込めなかった。
とりあえず立ち上がって見て初めて気づいたことがある。俺は陽向を下敷きにしていた。
ここで、今までの出来事を思い出した。
怪物に襲われた事。ここまで逃げてきた事。そして……ここで殺された事。
何が起こったのかが分からない。今でも夢なのではないかと思える。
そうだ。まずは陽向を起こそう。腰をかがめ、手を顔に近づける。手を、握られた。まだ夢でも見ているのだろう。
急に、体を引っ張られ、倒れ込む。肌と肌が触れ合う。陽向の手の力は抜け、我に返った。だが、陽向は俺を思いきり抱きしめる。口が軽く開き、寝言だろうか、一言呟いた。
「おかあ……さん」
そうだった。お互いそこまで仲は良くないが知っていた。陽向の親は離婚している。
「お母さん……たすけて……」
より力強く抱きしめられる。今はお父さんと過ごしているはずだ。寂しいのかな。目が覚めたときに何を言われるか分からない、そっと彼女の手から抜ける。
「まって……いかない……で」
この言葉に何故かドキッとした。何故だろう。考えてみる。
――そうだ、あれを思い出したくはない。あの事は。
「……おーい大丈夫か? 弘成……とひな……た」
「なんか勘違いしてるな?」
明人のおかげで冷静になれた。改めて陽向を起こす。
「陽向、俺だ。深谷弘成だよ。とりあえず……起きて」
陽向も目を覚ました。
「……あ、お、おはよう」もしかして起きてた?いやでもそれを聞くのはやめとこう。
***
五分ほど経ち、ようやく状況が掴めた。どうやらここには俺と。陽向、そして明人の三人しかいないようだ。
あの時、他に健人と真凛がいたはずだが、どこへ行ったんだろう?
「明人ー今何時くらいだ?」
明人は腕時計をつけているので聞いてみた。
「えーとな、今は9時36分、何時間か立っているな。」
「とりあえずさ、さっきというか、直前までいたあの公園?に行ってみる?もしかしたら皆いるかもしれないし」
「……えっ? あそこに戻るの?」
陽向はさっきから落ち込んでいる。
「行動しなかったら何も変わらない。だろ?」
「動けないなら俺が支えるからさ」
明人がアシストしてくれる。
こうして、あの場所に向かうことにした。
歩いて向かっている分とても遠く感じる。
しばらくして公園の近くに来た。
む? 公園の中から声が聞こえてくる。
「弘成、止まれ。なんか怪しいぞ」
足を止める。ちらっと覗きながら聞いてみる。
どれどれ?
「た、たのむ! もうこれ以上はやめてくれ!」
半泣きの男の声が聞こえる。
その男の前にいるのは……中学生だか小学生くらいか、声質は女か?仮面をつけていて顔も見えないし、大きなコートも着ていて全然分からないな。
「……いや、ダメだね。悪いけどさあ……死んで?♪」
「やめ」
一瞬、コート仮面の腕から植物の枝らしきものが伸び、男の頭を刺す。一箇所だけではなく、何箇所も、あらゆる角度に刺さっている。
「う、嘘だろ……?」
明人の顔がどんどん青ざめる。陽向はそもそも見ようともしていない。
これは逃げたほうが良さそうだ。
逃げようとした。
「おーーい弘成ーーー‼ 逃げないでーー‼」
あのコート仮面が俺に向かって声をかけてくる。仮面の中にボイスチェンジャーでも入っているのか本当の声が分からない。
なんで俺を知ってるんだ?
「もしかしてさぁ、今の見てた? やだなぁ、私達は悪い事してないよ? だってこの男達、いきなり襲ってきたんだよ? 間違ってないよ?」
ん? 私達? まさか複数……どうやら、ここから間違った返答をしたら終わりそうだ。仮面の背後からさらに似た格好をした二人が出てきた。
「確かに、襲ってきたほうが悪いが、その……許しても良かったんじゃないか? それに……さっきの枝みたいなのはなんだよ?」
「……あぁ⁉」まずい。触れちゃいけなかったようだ。
「やっちゃいますかぁ♪」
後ろの二人もどうやら何か持っているらしい。
「死にたいようだね」
「……逃げたほうがいいよ」
片方も戦闘意欲が高い。もう一方は追って来ないようだった。
リーダーらしき人物と一人が襲い掛かってくる。
「逃げるぞ! ほら陽向いくぞ!」
しゃがみこんでる陽向を引っ張り逃げる。
ズドンと音がし、俺のすぐ真横をすり抜けていく。なんだよこれ⁉
まるであの怪物と同じじゃねぇか!
必死に逃げているがあいつらの足も人間レベルのようで、意外と追いつかれそうにはならない。だが、問題なのはあの二人の超能力だ。
種は分からないがとにかく危険、追い詰められたら最後だ。
「弘成! どこに逃げんだ⁉」
「森には入るな! さっきのところに戻るんだ!」
「おう!」
「舐められたもんだね……? アンタ、行くよ!」
あの二人、これ以上詰められるのか?
ドン!
振り返って見てみると、小さい方がもう一人の腕から出てくる砲弾? のような物に乗っている。
「そんなの……アリかよ!」
「……」
陽向は黙っているが、足にも力を入れ走っている。
「右に行くぞ!」
「おう!」
右へ走って逃げる。
「ふーん……甘いね」
そういって女は、腕から生やした枝で周りの木を掴み、パチンコの要領で一気に距離を詰められる。俺はさらに焦る。
「待て弘成!」
――しまった。逃げる事に必死だった俺達は崖に気付けず、山から滑り落ちる。
「おい待て! 意地でも捕まえてやるっ!」
枝が伸びてくる。だが、捕まるよりも先に地面に落ちた。
「逃げよう!」
「あっ‼」
陽向の首に枝が絡みつく。足が地面に浮き、呼吸が出来ていない。
明人と俺で解こうとしたが解けない。
「俺が土台になる!」
明人は陽向の足場になり息が少しだけ吸えた。
解こうとするもまだ解けない。
「アハハ! 面白いねぇ! まぁ。殺しちゃうけど」
枝に少しずつ力が込められていく。
「やめ……て……」どうすれば……
「ハハ……ん? な、なんだアンタ?」
その時だった。崖の上からけたたましい轟音、そして、砂煙が舞い、やがてこの鎖も一部分が溶けて落っこちる。
「ハァハァ……」
陽向の呼吸は荒いがどうにかなったようだ。
まだ、苦しんでいるが、ここよりも遠い何処かへ逃げないといけない。俺達は山を下り街へと逃げた。
「なんでアンタがここにインだよ、怪物が」
「悪かったね、お前が何をしているか知らんが、俺はお前ら人間を殺すことが目的なんでねッ!」
「させるかよっ!」
私は枝で壁を作りこいつの攻撃を防ぐ。
「同じ手は効かないよっ!」
「そうよ、くらいなさい、この弾丸を」
怪物に向かって仲間は砲弾を打ち込む。
怪物の体に被弾し、屠っていくと思われたが、軽く凹んだ所で勢いは止まり、地面に落ちる。
「! 何故お前らがそんな能力を……仲間のものでもない……お前らは一体……?」
「……私達はね!」
「―――お前の協力者。だ。」
「――て、奪わないでよ!カッコイイのにそれ!」
いつの間にか追いついてた彼。むー悔しいな。
「そんな話信じられるとでも思ったのか?」
「じゃあさ、信じられる話でもしてあげようか?」
「断る。お前を殺すだけだ。」
「――オマエはホントに私達を殺せると思うの?ねぇ№1、いえ、カイさん?」
「な…………何故知っているその名を」
「……僕らは協力者だからですよ、同じ目的―――」
「そう、人を殺すの」
「私達も!」
「フッ……面白い……そうか」
少し笑いながら怪物は森の中へと消えていく。
もうあの三人はいないし、他の人を探そうかな♪
人間はどーこかな?
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