クリティカル・リアリティー
第一話 健人&俊樹
気づいた時にはもう、終わっていた。目が覚めたというわけでもない。木が倒れ、光によって三人は貫かれた。僕はそこで死んだと思い込んでいた。長い沈黙。
あの怪物の気配はなくなり、僕、神崎健人は指を動かし体を起こす。陽向、明人、弘成の体には穴が空いている。三人は死んでしまった。
悲しんでいると隣から微かな声が聞こえ、振り返ると奇跡的に無傷の真凛がいた。僕は真凛をじっと見つめる。生きていた。
真凛を助け、この森から抜け出そうとした。だが、真凛は助けた時から虚ろな目をしていて、普段見たことのない様子だった。今の彼女のことは忘れた方が彼女の為かもしれない。
数分もしない間に彼女はどこかへ逃げるように消えた。追いかけようとしたが、そんな体力は残っておらず、追いつくことは出来なかった。
何時間たったのだろうか。俺は、気がおかしくなっていた。朝日が登る頃だった。
「はァ……はァ……」
息が続かないほどの疲労、もう駄目だ……足が動かない。ここは森、逃げているうちに迷い込んだようだ。
膝から崩れ落ちた。僕は、不安だった。
「だ、だれかッ‼ 助けてくれ‼」
僕は叫んだ。声は響かない。沈黙が走る。
意識が朦朧として、もう動けないかもしれない。
ふと、先程の『アレ』を思い出した。体は悲鳴を上げるが、もう声は出ない。殺されるかもしれない。
脳内は闇で埋め尽くされ、休むことも忘れ、ひたすら進むことだけを考える。
突然、重力を感じる。体から力が抜け、声も出せず堕ちていく。
…………意識が少しだけ飛んでいたようだ。時間で表すと一時間、二時間ほどだろう。朝日は登っていた。走っていたときに、軽く落っこちたらしい。怪我がないのは奇跡だ。それほど時間は経っていないが、疲労はかなりなくなった。
かといって、行き先もない。どこに行くか迷っていると遠くから声が聞こえた。初めて聴いた声だ。
目を凝らし、周りを探し、その人物と僕は目が合う。背は自分よりも高く、スラッとしている。おそらく女性だろう。森とは合わない服装をしていた。行く宛もないので僕はその人についていくことにした。遠くからだと分からなかったが、顔は整っている。
* * *
僕は助けられ、森から抜け出せた。
山を下りどこかの街が見える。あまり来たことがない場所だ。それでも、いつもはもっと賑やかな場所なんだろうと思った。
足を止めたので、助けてくれた女性に時間を聞くことにした。
「……7時くらいかしら」
それは曖昧な答えだが、一夜が明け、生きていたことを実感した。
……この人が何故あそこにいたのかはわからない。
そこまで気にしなくていいことだ。助けられた命だ。
五分ほど歩き、商店街についた。
人は居らず、とても静かだ。彼女に案内されて店に近づく。
中には昨日、五人とは一緒ではなかったので、死んだと思っていた俊樹がいた。
俊樹に声をかけるも、ああ、健人生きてたんだ、と軽く言われてしまったので
「生きてたんだ、って……酷いな」
と返してしまった。
星野俊樹。背も低く、この女性と比べると僕以上の格差がある。普段は陽向と同じくらい口が悪く、性格は少し暗いが、今はいつもと雰囲気が違う。
……なんだか、不気味だった。
……そういえば、山で助けられたとき、他に誰かが追ってきているように感じたことを思い出す。
冷静になった瞬間、
近くから物音が聞こえた。二人が反応する。
音の先から人が現れる。真凛だった。逃げるように走っていたので、こっちに気づくように僕は手を振りながら、話しかけた。
え?、と反応したので、汗だくだったがが聞こえたようだ。
こちらに向かってくる。
真凛のすぐ後ろから、夜に見た化物とは違う化物が真凛に向かって走りかかる。見た目は似ていたが、手首にグローブのような物をつけている。
足が早そうではないが、体を使って真凛に飛びかかる。真凛の体を手で掴み、残虐にも壁に叩きつけ、命を奪った。
あまりの出来事に理解が追いつかない。血だらけで、痛々しい真凛が目に焼き付いた。また、吐き気がする。
前にいた彼女に襲いかかる。怪物は一瞬彼女の目の前で何かにぶつかるような仕草をしたが、すぐに何かが破られた。少し前にいた俊樹は何かしようとしたが、怪物が操っているのか、どこからかパイプのような金属が飛んでくる。俊樹は避けられずに頭部に当たり、パイプごと壁へと飛ばされ激突する。ピクリとも動かない。
怪物は女性の肩を掴んだ。子供に言い聞かせるように。
「お前、なんで人間なんかを助けたんだ! 俺達が殺す相手だろうが!」
「……ワタシが一人や二人助けた事がそこまで問題かしら。」
「……もういい。会話をするつもりが無いようだな。いいか? こいつらは殺される立場なんだよッ!」
そういうと怪物は、今までの物より大きい、軽自動車、鋭利な物が飛ばす。女性は僕をアイツに気づかれないように守ろうと身を挺して庇ってくれたが、体ごと吹っ飛ばされ、壁に勢い良くぶつかった。
ボロボロになった彼女に対してアイツは使えない奴だ。と言い放ち、この場から離れていった。
今の一撃によって僕の腹部には包丁がぐさりと刺さり、彼女は今ので致命傷を負ったことがわかった。
血が溢れだす。地面が赤く染まる。彼女が言った。
「今回で……終わらせて。」
「ワタシは貴方を見つけたときに、もしかしたら。」
「貴方達なら出来るかもしれないと。」
「貴方に貸すわ。ワタシの『 』を。」
唐突に言われたことに、すぐには理解出来なかったが、意味はすぐに分かった。彼女僕の包丁を抜き、僕の左手に握らせ、彼女自身に刺すように僕の腕を操る。そして改めて、僕は殺された。僕は死んだ。ほんの一瞬。すぐに目が覚めた。
目の前では彼女の体が薄れていく。先程の一撃で死んでしまったのかもしれない。
体のあった空間は光出し、やがて光は力強くなり、いつの間にか握られていた僕の右手に伝わり、体全体が光で満たされた。
感情が昂ぶりだす。
意識が朦朧としだし、意識が混ざり溶け合う。目を瞑った。
あの怪物の気配はなくなり、僕、神崎健人は指を動かし体を起こす。陽向、明人、弘成の体には穴が空いている。三人は死んでしまった。
悲しんでいると隣から微かな声が聞こえ、振り返ると奇跡的に無傷の真凛がいた。僕は真凛をじっと見つめる。生きていた。
真凛を助け、この森から抜け出そうとした。だが、真凛は助けた時から虚ろな目をしていて、普段見たことのない様子だった。今の彼女のことは忘れた方が彼女の為かもしれない。
数分もしない間に彼女はどこかへ逃げるように消えた。追いかけようとしたが、そんな体力は残っておらず、追いつくことは出来なかった。
何時間たったのだろうか。俺は、気がおかしくなっていた。朝日が登る頃だった。
「はァ……はァ……」
息が続かないほどの疲労、もう駄目だ……足が動かない。ここは森、逃げているうちに迷い込んだようだ。
膝から崩れ落ちた。僕は、不安だった。
「だ、だれかッ‼ 助けてくれ‼」
僕は叫んだ。声は響かない。沈黙が走る。
意識が朦朧として、もう動けないかもしれない。
ふと、先程の『アレ』を思い出した。体は悲鳴を上げるが、もう声は出ない。殺されるかもしれない。
脳内は闇で埋め尽くされ、休むことも忘れ、ひたすら進むことだけを考える。
突然、重力を感じる。体から力が抜け、声も出せず堕ちていく。
…………意識が少しだけ飛んでいたようだ。時間で表すと一時間、二時間ほどだろう。朝日は登っていた。走っていたときに、軽く落っこちたらしい。怪我がないのは奇跡だ。それほど時間は経っていないが、疲労はかなりなくなった。
かといって、行き先もない。どこに行くか迷っていると遠くから声が聞こえた。初めて聴いた声だ。
目を凝らし、周りを探し、その人物と僕は目が合う。背は自分よりも高く、スラッとしている。おそらく女性だろう。森とは合わない服装をしていた。行く宛もないので僕はその人についていくことにした。遠くからだと分からなかったが、顔は整っている。
* * *
僕は助けられ、森から抜け出せた。
山を下りどこかの街が見える。あまり来たことがない場所だ。それでも、いつもはもっと賑やかな場所なんだろうと思った。
足を止めたので、助けてくれた女性に時間を聞くことにした。
「……7時くらいかしら」
それは曖昧な答えだが、一夜が明け、生きていたことを実感した。
……この人が何故あそこにいたのかはわからない。
そこまで気にしなくていいことだ。助けられた命だ。
五分ほど歩き、商店街についた。
人は居らず、とても静かだ。彼女に案内されて店に近づく。
中には昨日、五人とは一緒ではなかったので、死んだと思っていた俊樹がいた。
俊樹に声をかけるも、ああ、健人生きてたんだ、と軽く言われてしまったので
「生きてたんだ、って……酷いな」
と返してしまった。
星野俊樹。背も低く、この女性と比べると僕以上の格差がある。普段は陽向と同じくらい口が悪く、性格は少し暗いが、今はいつもと雰囲気が違う。
……なんだか、不気味だった。
……そういえば、山で助けられたとき、他に誰かが追ってきているように感じたことを思い出す。
冷静になった瞬間、
近くから物音が聞こえた。二人が反応する。
音の先から人が現れる。真凛だった。逃げるように走っていたので、こっちに気づくように僕は手を振りながら、話しかけた。
え?、と反応したので、汗だくだったがが聞こえたようだ。
こちらに向かってくる。
真凛のすぐ後ろから、夜に見た化物とは違う化物が真凛に向かって走りかかる。見た目は似ていたが、手首にグローブのような物をつけている。
足が早そうではないが、体を使って真凛に飛びかかる。真凛の体を手で掴み、残虐にも壁に叩きつけ、命を奪った。
あまりの出来事に理解が追いつかない。血だらけで、痛々しい真凛が目に焼き付いた。また、吐き気がする。
前にいた彼女に襲いかかる。怪物は一瞬彼女の目の前で何かにぶつかるような仕草をしたが、すぐに何かが破られた。少し前にいた俊樹は何かしようとしたが、怪物が操っているのか、どこからかパイプのような金属が飛んでくる。俊樹は避けられずに頭部に当たり、パイプごと壁へと飛ばされ激突する。ピクリとも動かない。
怪物は女性の肩を掴んだ。子供に言い聞かせるように。
「お前、なんで人間なんかを助けたんだ! 俺達が殺す相手だろうが!」
「……ワタシが一人や二人助けた事がそこまで問題かしら。」
「……もういい。会話をするつもりが無いようだな。いいか? こいつらは殺される立場なんだよッ!」
そういうと怪物は、今までの物より大きい、軽自動車、鋭利な物が飛ばす。女性は僕をアイツに気づかれないように守ろうと身を挺して庇ってくれたが、体ごと吹っ飛ばされ、壁に勢い良くぶつかった。
ボロボロになった彼女に対してアイツは使えない奴だ。と言い放ち、この場から離れていった。
今の一撃によって僕の腹部には包丁がぐさりと刺さり、彼女は今ので致命傷を負ったことがわかった。
血が溢れだす。地面が赤く染まる。彼女が言った。
「今回で……終わらせて。」
「ワタシは貴方を見つけたときに、もしかしたら。」
「貴方達なら出来るかもしれないと。」
「貴方に貸すわ。ワタシの『 』を。」
唐突に言われたことに、すぐには理解出来なかったが、意味はすぐに分かった。彼女僕の包丁を抜き、僕の左手に握らせ、彼女自身に刺すように僕の腕を操る。そして改めて、僕は殺された。僕は死んだ。ほんの一瞬。すぐに目が覚めた。
目の前では彼女の体が薄れていく。先程の一撃で死んでしまったのかもしれない。
体のあった空間は光出し、やがて光は力強くなり、いつの間にか握られていた僕の右手に伝わり、体全体が光で満たされた。
感情が昂ぶりだす。
意識が朦朧としだし、意識が混ざり溶け合う。目を瞑った。
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