ずっとお前が嫌いだった

いとうゆ。

彩也子の供述

まさか、姉が亡くなるなんて人間っていつ死ぬか分からないものなのね。
スーパーの階段で足を滑らせるなんて…ごめんなさい。
突然のことだから、動揺してしまって…

話は何でしたっけ?

ああ…そう、姉の生前の事ね。

姉は…そうね。
子供の頃から人の神経を逆撫でするところがあったんです。
そのせいで、父から殴られて兄弟で何度も止めに入ったわ。

それに、髪を抜く癖があって頭が拳大くらいの大きさにはげてたの
それを本人もコンプレックスに思っててね。
抜けた髪をもう一度固めて…こうかつらみたいにしてね
はげた部分に被せてたの。なんか、すごく気持ち悪かったわ。

それに、子供の頃から私と孝次と清次はいじめられてた
お菓子を捨てられたり
孝次なんて体が小さかったから姉からいつも叩かれたりしてた。
私たち兄弟で姉の事が好きな人はいないわね。

母?

そういえば、母は姉の話をしないわ…というより
母が姉と話してるところは見たことないの。

とにかく、姉は私たち兄弟とは違う世界線でいきてたわねえ…

あ、でもね藤次兄さんは姉のお気に入りだったわ。

高校のころだったかしら
姉はね兄の藤次に勉強を教えてもらってたの。
変でしょ、兄の藤次のほうが姉より年下なのに。

でね、その勉強を教えてもらってるとき
姉ってば兄の体をベタベタ触るの…抱きついたりとかもしてたわ。

父がそれを見てすごく不愉快そうな顔で「あいつは婬売だ」って。

たしかに姉もおかしいけど、実の娘に婬売ってねえ…

え、ええ。

姉が結婚したのは28の時よ。

私や藤次兄さんよりあとだったかしら。

それがすごくコンプレックスだったみたいで
藤次兄さんの結婚式の時はお酒をたくさん飲んで
くだを巻いてたんだから、私たち親戚中すごく恥をかいたわ…。

私の時も大変だったの。

私ね、20頃かな。
父の暴れたり殴ったり…そういうところがですごく嫌で
どうにかして、この生活から抜け出したくて
その時にバイトで出会った男性と付き合うことになったのね

でも、姉はそれが気に入らないみたいで
「男と出歩くなんてどうかしてる」って言って
「付き合うことにも反対だ」って言って私を部屋に閉じ込めたのよ。

しかも、その彼の家まで押し掛けて行って
「うちの妹ともう会わないでください」なんて
言いに行ったのよ?考えられる?

今で言う毒親というか毒姉ね。

でも、彼も彼の両親も真に受けない人でね
結局、私がむりやり実家を出る形で彼と結婚したの。
それで、娘の小夜が産まれたんだけどね。

えーと、そうね

その3年あとくらいかしら。

スーパーの鮮魚店のバイトの男性を好きになったのね。
その男性の家に押し掛けたり、電話を何度もかけたり
今だったらストーカーみたいで気味が悪いし
相手の男性も嫌がって父と母に「やめてくれ」って言いに来たのよ。

でも、そのときたまたま実家に藤次兄さんがいたの
一人暮らしをしてたんだけど帰ってきてたのね。
姉がかわいそうに思った藤次兄さんは
姉と結婚してあげてくれって頭を下げたのよ。

私だったら頭を下げてまで結婚なんてしていらないけどねえ…

それで、お相手の男性…隆士さんっていうんだけど
隆士さんと結婚することになったの。
きっと、頭を下げられてバツが悪くなったのよ。

結婚式は父が資金を出してくれたんだけどね
そのときは幸せそうにしてたわ。

でも、隆士さんがそうじゃなかったの。

結婚したあとは、隆士さんは姉に暴力をふるうようになったの
姉の顔にタバコの焼きあとがついてたときがあったわ。
そこが、染みになってずっと顔に残ってたわね。

そもそも、隆士さんなんてどこがいいのか私にはまったく分からないわ。

どうして、姉はあんな人と結婚したのかしら?







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