ファウスト−FAUST−

藤田 吾郎

第1話 始まり−全てはアノ日−

俺はあの怪物は人間じゃないとは思っていた。
だが、その怪物はいったいなんなのかを知りたいのだけどな。

『知りたければ起き上がれ。ついでに力もくれてやる。』

すぐにでも教えて欲しい俺だが、神様は神様なりの考えがあるんだろうと思いつつも、やはりその力というのはどんなものかも気になる。やはり今の俺にはすぐには答えは出ない。

「そうか、わかった。だが少し考えさせろ。」

そして何かを悟ったゼウスは言った。

『良いだろう。私は待っている。いつでも来い。もし力が欲しければとあるオフィスビルの駐車場の地下に来い。道標は貴様の頭の中に焼き付ける』

そしてゼウスは俺の頭の中に待ち合わせ場所を焼き付けた。

「そうか。だいたい分かった。」

『そこに私の使者がいる』

ゼウスはそう言い残し光は消え去り、俺は再び暗闇の中に目を閉じた。



そして、俺は目を開き、見上げると白い天井、消毒液の匂いの部屋。

そして、起き上がると少し腹部が痛む。更に柔らかい枕に優しく包み込む様に乗せられた布団。

俺の目の前で座っている女の子がいる。
その姿の女の子は俺にとってはもの凄く見慣れた女の子……


それは優梨だ……


俺は重い体を歩み寄り思いっきり抱き寄せた。

「優梨……無事だったのか!良かった……本当に無事で……」

そして優梨は答えた。

「大翔……私……私……お姉ちゃんじゃないよ……」

「え?……」

俺は耳を疑った。何を言ってるんだよ?冗談なら今の俺には笑えないぜ?

「私……お姉ちゃんじゃないよ……大翔……私は妹の優菜だよ……大翔……」

俺は手を解いて答えた。

「おいおい嘘だろ?優梨?こんな時に、こんな時に冗談は辞めろよ優梨……」
優菜は涙を流しながら答えた。

「嘘じゃないよ大翔。確かに私はお姉ちゃんと似てるけど……よく見て大翔私の目の下に涙ボクロがあるでしょ?」

優菜は右の目の下の涙ボクロを人差し指で差した。俺は優菜の目の下をよく見て涙ボクロを確認した。


確かに優梨の双子の妹の優菜だ。

俺には分かる。優梨と優菜とは昔からの幼馴染みだ。

優梨と優菜は一卵性の双子の姉妹だ。
優梨と優菜はかなり似ている。そして唯一見分けがつくのが右目の下にある涙ボクロだ。

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