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カミナリ神社の巫女物語

ふじゆう

そのよん。

 ワタクシは深々と頭を下げ、逃げるようにその場から去った。背後から皆様の視線を感じつつ、妙香様の笑い声で耳が痛かった。未神様に仕える身でありながら、無礼な態度を取ってしまった。しかし、場の混沌が収まったのだから、結果オーライだ。そういうことにしておこう。そう自分に言い聞かせなければ、やっていられない。
 炮烙様は、クソがつくほどの真面目な方だ。堅物で順応にかける。直情型で、己が正しいと思い込んでいる節がある。しかし、だからこそ、人間への対応は誠実で紳士的だ。人間と真正面から向き合い、人間の幸福と成長を望んでいる。故に、一人一人の対応に恐ろしく時間がかかる。自分にも他人にも厳しい方だ。しかし、頭が悪い訳ではない。先ほどの衝突の後すぐに、ワタクシに謝罪をして下さった。深々と頭を下げ、反省されていた。己の非を認め、素直に謝罪する姿は、大変好感が持てる。長所は、真面目。短所は、真面目過ぎる。
妙香様は、己の欲望に忠実な方だ。故に、行動力があり、驚くような策に打って出る。怖いもの知らずで大胆。見た目も言動も一言で言うと、軽薄なのだが、なかなかに思慮深く弁が立つ。好奇心旺盛だが、飽きっぽい。社交的で誰にでも距離感が近い方だ。しかし、人間への対応は、あまり誠実とは言えず、神様に縋りつく人間をやや見下している。強欲が故に、人間を己の出世の道具として見ている感が否めない。ワタクシの体に、気安く何度となく触れてくる。過去の苦い経験から、拳を握り耐えているのは、秘密だ。
 残寿様は、最も理解に苦しむ方だ。怠惰的で、面倒くさがり。出世欲が皆無で、神様にまるで興味がないご様子。何の為に、ここにいるのか、さっぱり分からない。誰とも争わないが、協力もしない。誰にも何も求めないから、自分にも何も求めないで欲しい。常に一歩引いて俯瞰で物事をみている感じだ。だから、大きな成功もなければ、大きな失敗もしない。修行への意欲もなく、その極みとして、人間がやってくると、サイコロを振る。一の目が出たら、不快を顔一杯に広げ、しぶしぶ重い腰を上げる。
 はあ。溜息しかでない。しかし、ワタクシの職務は、三座の方々のお世話役だ。お三方に仕える身、逃げ出す訳にはいかない。この神社に来た理由が理由だけに、移動願いなど聞き入れてもらえる訳がないし、それこそ心証を悪くするだけだ。そもそも、巫女の移動願いなどというシステムがあるのかも分からない。前例を聞いたことがない。ワタクシが以前に仕えていた神様は、きっと千里眼を用いて、ワタクシが戸惑っている姿を観察していることだろう。そして、ほくそ笑んでいるに違いない。

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