危雪の淡夢
大通り
あの日から何度も夢を見た。しかし、あの日見た夢を再び見たのは、片手で数えられるほどだった。どうやら夕暮れ時、そして少しほんのり赤らんだあの雪が降ったその瞬間以外、あの夢を見ることが出来ない。そんな結論に至った。
その後俺は何度もあの夢を見た。何度も何度も告白した。なぜ彼女達が声を発さないのか、何度も何度も考察した。しかし俺には分からなかった。ただ見たものを絵にすることしか出来ない画家の俺には、考えることは向いていなかったのだろう。唯一の心当たりと言えば、ふと思い浮かぶものがとある都市伝説だ。危雪、と言ったかだろうか。なんとも、人生の分岐点になるかもしれない恐ろしい夢なんだとか。しかし都市伝説が実在するなどとは到底考えられず、堂々巡りだった。
と、そんなことを考えているうちに岬はいつもと変わらず、この大通りの端から姿を現した。今日は何か進展があるだろうか。いや、行動に何も変化を持たせない俺に進展などなくて当たり前なのだろうか。脳内には毎度の如く心配性の俺がいた。
そんな俺の存在に気づいた岬が、その手で大きく手を振った。
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