採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~
第9話 2番目の武器
シルフに歩く音を小さくしてもらいつつ、ゆっくりと近づく。
まずは、アクアリーフと同じやり方で倒せないか試してみようかな?
「……それじゃ、行くよ」
僕自身が集中できるように、小さく呟いて息を吐く。
集中すれば心音まで聞こえるなんて……、ちょっとリアル過ぎる気がするんだけど……。
脱線しかけた思考を切り替えて、玉兎へと視点を合わせる。
そのまま飛び立つように一歩踏み出し、右腕を大きく横に薙いだ。
アクアリーフ相手なら、この動作だけで倒せる。
しかし、僕の手には倒せたような手応えは感じられない。
避けられたかと思いつつ、体勢を立て直し、身体を反転させた。
「……ッ!」
直後、僕のお腹を中心に、衝撃が走る。
どうやら、玉兎の体当たりを受けたらしい。
思わず倒れそうになる身体を、その場になんとか留めつつ、玉兎を見れば……傷ひとつなくピンピンしていた。
「これは、難しい……ね」
横目でHPを確認すれば、さっきの体当たりだけで、5%ほど減っている。
アクアリーフと違い、動きが速いのもあるけど……武器の相性が悪い!
元々、玉兎のサイズは人の顔くらいしかないため、草刈鎌を当てるには、低目に薙ぐ必要があるんだけど……、そうするとどうしても体勢が崩れてしまう……。
タイミングも難しいし、今みたいに避けられでもしたら、また反撃を受けるかもしれない……。
(草刈鎌だと難しいみたいですね)
(そうだね……。シルフ、ちょっとお願いがあるんだけど)
(なんでしょうか?)
(採取道具の中で、使えそうな道具を考えてくれる? その間、僕は避ける事だけに集中するから)
(わかりました!)
話をしている間も、玉兎は体当たりを繰り返していて、僕は休む暇もなく動き続けていた。
といっても、玉兎自体が大きくないからか、飛んでくるのは高くてもお腹の辺りまで。
さらに、直線的にしか飛んで来ないからか、しっかりと見ていれば避ける事は簡単だ。
ただ、身体が小さい分小回りがきくのか、反転してからの再飛び込みが早く、最初の敵としてはかなり大変な気がする。
……でもまぁ、トーマ君の投げダガー一発で倒せるくらいのHPと、そんなに痛くない攻撃力って考えれば……。
序盤の敵……なのかなぁ……?
後々になったら、この速度でもっと強いとかあるんだろうか……。
(アキ様。セットの中に、木槌がなかったでしょうか?)
(あったと思う。確かあと、ノミとツルハシも)
(でしたら、今回は木槌が良いかと)
(了解! やってみる!)
シルフが思いつくまでの間、何度も避けた事もあって、避けながらインベントリを開くくらいの余裕は出来ている。
攻撃を小さく避けるようにしながら、僕は手元の草刈鎌と木槌を入れ替えた。
「よっし! 準備完了! 第2ラウンド始めるよ!」
手に持った木槌は、手のひらサイズでそこまで大きくはない。
きっと、本来はノミとセットで使う用なんだろう。
ただそれでも、草刈鎌と違って『叩きつけること』でダメージが出せる!
「タイミングを合わせてー……」
何度か体当たりを躱し、玉兎と身体の向きを合わせる。
そして、ほぼ同じリズムで飛び込んでくる玉兎めがけ――
「ここでっ!」
左に半歩ほど身体をずらし、すくい上げるように右腕を振る。
一瞬の後、ドゴッと低い音がしたと同時に、重い衝撃が右腕に……。
しかし、それを無視して押し返すように、腰を捻り、腕を振り抜いた。
「ホーム……ラン?」
(……?)
こっちの世界には、野球はないのかもしれない。
なんて……、空中で消えていく玉兎を見つつ、そんなことを思った。
「……ふぅ」
(お疲れ様です)
「とりあえず、玉兎みたいな小さくてよく動く相手には、木槌とかが良いみたいだね」
(そうですね。相性を考えながら使っていく必要がありそうです)
「うん。頑張ろう」
相性を考えてくれたシルフに感謝しつつ、木槌をインベントリにしまう。
そのついでにドロップアイテムを確認すれば、[ボーリングラビットの肉]と[ボーリングラビットの皮]が1つずつ増えていた。
「おつかれさん。なんや面白い戦い方してんやな」
「<戦闘採取術>っていうスキルだからね。採取道具が武器なんだ」
「へぇ……」
面白いものを見たと言わんばかりに笑っていた顔を、彼は小さく驚きに変えて、納得した風に頷いた。
「聞いた事ないスキルやな。特殊取得系か」
「そうなのかな? 訓練所の兵士さんが教えてくれたんだけど……」
「なるほど……。住民から教えてもらう系か。戦闘スキル以外なら、何個か情報が入ってきとるな」
「情報って……?」
「公式サイトのプレイヤー専用掲示板とかやな。すでに結構情報が上がっとる。ただ、住民関係は教えてもらえん時もあるみたいやで」
つまり、今までのゲームみたいに、クエストが絶対発生して、とかではなないってことかな?
それ以外になにか要素があるのかな……?
……好感度、とか?
「んー……。これも攻略情報に載せておいた方がいいかな?」
「別に載せんでもええと思うで? 戦闘スキルやけど、採取道具だけってなると縛りがきついわ。『武器として作った採取道具』は、あかんのやろ?」
「みたいだね。あくまで、『武器にもなる採取道具』じゃないとダメみたいだから」
「実入りは大きいんやけどなぁ……」
「倒し方とかの条件もあるしねぇ……」
まぁ、それに……どこからこのスキル習得クエストが始まったのかもわかんないしね。
おばちゃんに出会って、採取して、ポーション作って……って繋がってるし。
「ま、好きにすりゃいいさ。それより他にも色々あんだろ? 玉兎狩りながら、どや?」
「ん、いいよー。トーマ君も話してくれるなら……?」
「りょーかい! 交渉成立ってやつやな!」
そんな話をして、2人で笑う。
その後ログアウトするまで、トーマ君と話したり、狩りを手伝ってもらったり……フレンド登録したりして、今日は過ごした。
--------------------------------------
名前:アキ
性別:女
称号:ユニーク<風の加護>
武器:木槌 ←NEW!!
防具:ホワイトリボン
冒険者の服
冒険者のパンツ
冒険者の靴
スキル:<採取Lv.3→4><調薬Lv.1><戦闘採取術Lv.4→5>
精霊:シルフ
まずは、アクアリーフと同じやり方で倒せないか試してみようかな?
「……それじゃ、行くよ」
僕自身が集中できるように、小さく呟いて息を吐く。
集中すれば心音まで聞こえるなんて……、ちょっとリアル過ぎる気がするんだけど……。
脱線しかけた思考を切り替えて、玉兎へと視点を合わせる。
そのまま飛び立つように一歩踏み出し、右腕を大きく横に薙いだ。
アクアリーフ相手なら、この動作だけで倒せる。
しかし、僕の手には倒せたような手応えは感じられない。
避けられたかと思いつつ、体勢を立て直し、身体を反転させた。
「……ッ!」
直後、僕のお腹を中心に、衝撃が走る。
どうやら、玉兎の体当たりを受けたらしい。
思わず倒れそうになる身体を、その場になんとか留めつつ、玉兎を見れば……傷ひとつなくピンピンしていた。
「これは、難しい……ね」
横目でHPを確認すれば、さっきの体当たりだけで、5%ほど減っている。
アクアリーフと違い、動きが速いのもあるけど……武器の相性が悪い!
元々、玉兎のサイズは人の顔くらいしかないため、草刈鎌を当てるには、低目に薙ぐ必要があるんだけど……、そうするとどうしても体勢が崩れてしまう……。
タイミングも難しいし、今みたいに避けられでもしたら、また反撃を受けるかもしれない……。
(草刈鎌だと難しいみたいですね)
(そうだね……。シルフ、ちょっとお願いがあるんだけど)
(なんでしょうか?)
(採取道具の中で、使えそうな道具を考えてくれる? その間、僕は避ける事だけに集中するから)
(わかりました!)
話をしている間も、玉兎は体当たりを繰り返していて、僕は休む暇もなく動き続けていた。
といっても、玉兎自体が大きくないからか、飛んでくるのは高くてもお腹の辺りまで。
さらに、直線的にしか飛んで来ないからか、しっかりと見ていれば避ける事は簡単だ。
ただ、身体が小さい分小回りがきくのか、反転してからの再飛び込みが早く、最初の敵としてはかなり大変な気がする。
……でもまぁ、トーマ君の投げダガー一発で倒せるくらいのHPと、そんなに痛くない攻撃力って考えれば……。
序盤の敵……なのかなぁ……?
後々になったら、この速度でもっと強いとかあるんだろうか……。
(アキ様。セットの中に、木槌がなかったでしょうか?)
(あったと思う。確かあと、ノミとツルハシも)
(でしたら、今回は木槌が良いかと)
(了解! やってみる!)
シルフが思いつくまでの間、何度も避けた事もあって、避けながらインベントリを開くくらいの余裕は出来ている。
攻撃を小さく避けるようにしながら、僕は手元の草刈鎌と木槌を入れ替えた。
「よっし! 準備完了! 第2ラウンド始めるよ!」
手に持った木槌は、手のひらサイズでそこまで大きくはない。
きっと、本来はノミとセットで使う用なんだろう。
ただそれでも、草刈鎌と違って『叩きつけること』でダメージが出せる!
「タイミングを合わせてー……」
何度か体当たりを躱し、玉兎と身体の向きを合わせる。
そして、ほぼ同じリズムで飛び込んでくる玉兎めがけ――
「ここでっ!」
左に半歩ほど身体をずらし、すくい上げるように右腕を振る。
一瞬の後、ドゴッと低い音がしたと同時に、重い衝撃が右腕に……。
しかし、それを無視して押し返すように、腰を捻り、腕を振り抜いた。
「ホーム……ラン?」
(……?)
こっちの世界には、野球はないのかもしれない。
なんて……、空中で消えていく玉兎を見つつ、そんなことを思った。
「……ふぅ」
(お疲れ様です)
「とりあえず、玉兎みたいな小さくてよく動く相手には、木槌とかが良いみたいだね」
(そうですね。相性を考えながら使っていく必要がありそうです)
「うん。頑張ろう」
相性を考えてくれたシルフに感謝しつつ、木槌をインベントリにしまう。
そのついでにドロップアイテムを確認すれば、[ボーリングラビットの肉]と[ボーリングラビットの皮]が1つずつ増えていた。
「おつかれさん。なんや面白い戦い方してんやな」
「<戦闘採取術>っていうスキルだからね。採取道具が武器なんだ」
「へぇ……」
面白いものを見たと言わんばかりに笑っていた顔を、彼は小さく驚きに変えて、納得した風に頷いた。
「聞いた事ないスキルやな。特殊取得系か」
「そうなのかな? 訓練所の兵士さんが教えてくれたんだけど……」
「なるほど……。住民から教えてもらう系か。戦闘スキル以外なら、何個か情報が入ってきとるな」
「情報って……?」
「公式サイトのプレイヤー専用掲示板とかやな。すでに結構情報が上がっとる。ただ、住民関係は教えてもらえん時もあるみたいやで」
つまり、今までのゲームみたいに、クエストが絶対発生して、とかではなないってことかな?
それ以外になにか要素があるのかな……?
……好感度、とか?
「んー……。これも攻略情報に載せておいた方がいいかな?」
「別に載せんでもええと思うで? 戦闘スキルやけど、採取道具だけってなると縛りがきついわ。『武器として作った採取道具』は、あかんのやろ?」
「みたいだね。あくまで、『武器にもなる採取道具』じゃないとダメみたいだから」
「実入りは大きいんやけどなぁ……」
「倒し方とかの条件もあるしねぇ……」
まぁ、それに……どこからこのスキル習得クエストが始まったのかもわかんないしね。
おばちゃんに出会って、採取して、ポーション作って……って繋がってるし。
「ま、好きにすりゃいいさ。それより他にも色々あんだろ? 玉兎狩りながら、どや?」
「ん、いいよー。トーマ君も話してくれるなら……?」
「りょーかい! 交渉成立ってやつやな!」
そんな話をして、2人で笑う。
その後ログアウトするまで、トーマ君と話したり、狩りを手伝ってもらったり……フレンド登録したりして、今日は過ごした。
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名前:アキ
性別:女
称号:ユニーク<風の加護>
武器:木槌 ←NEW!!
防具:ホワイトリボン
冒険者の服
冒険者のパンツ
冒険者の靴
スキル:<採取Lv.3→4><調薬Lv.1><戦闘採取術Lv.4→5>
精霊:シルフ
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