転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 934

逃げ惑う人々、それに向かって変な雄たけびを上げて変化した化け物が襲い掛かろうとしてる。でもそこで声が響く。

「抜刀!」「自身の力を脚に集めろ!! 動け!!」

 するといくつもの同じ鎧に身を包んだ人たちがその鎧の重さなんてないかのように、人のいる間を縫うように進んでいく。一斉にあの化け物から逃げるように皆が進んでるから、実際かなり動きづらいはず。でもそんなの関係ないかのように……まるで人の動きを一つ一つ予測してその動きが分かってるかのように、彼らは動いてる。

 そして真っ先に化け物の傍に到達した奴が背中の剣をぬいた。自身の身長よりも長い剣は、その鎧に直についてて、抜き身である。斜めについてるその柄を握りこむと、鎧のロックが外れて剣を抜けるようになってた。

 そしてそれを抜いて一気に近づく。獲物がやってきたと言わんばかりに化け物は攻撃を仕掛けてくる。気持ち悪い手が迫り、そのいくつもある眼球がギョロギョロと鎧を着た人達を追いかけてる。さらにはそのつぼみの様な頭が膨らんで、地面に紫色の煙を吐き出した。

『麻痺毒か……』

 厄介なものを。私はドローンで瞬時にその成分を分析したよ。まあ即死の毒じゃないのは助かった。逃げてる人々もちょっと吸い込んだ程度で死ぬようなものじゃない。

 実際何人か倒れてるが……まあ大丈夫。それよりも鎧を着てる人たちの動きに変化はない。なにせ鎧にはそういう毒耐性がある。だから何ら問題にはならなかった。

 それに視界も悪くなったはずだが、ただ視界が悪くなるだけのヘルメットを彼らはしてるわけじゃない。確かにあの鎧……最初はそれこそ原始的な鉄の鎧だった。こんなクソ暑い砂漠の世界であんなのは自身を蒸し焼きにしてるのと同じである。

 でも今や違う。私たちの技術を少し与えてもっと軽量に、そして快適で、さらにはいろいろな機能がついてる。まああれだけの動きができるのは、血浄というものよりもより安全で効率がいい方法を勇者が教えたからだけどね。

 それらのパワーアップ要素が集約されたあの鎧。自身と鎧の力を相互に120%引き出した状態だ。だからだろう。

 スパっと切って、スパッと切って、スパッと切った。それによって、あれだけ脅威に見えた化け物がものの数秒で討伐される。その光景にアズバインバカラの住民は勿論だけど、外からきてた人達だってポカーンだ。

 でも少し間をおいて剣を掲げた人が叫ぶ。

「安心してください! 我らは教会を打倒し、世界を開放して見せます!!」

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! という揺れが町全体に響いたのは言うまでもない。

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