転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 655

「皆さんももうわかってるはずです」

 そう言っておじさん『コルドバ』さんはこのサーザインシャインインラの上層部の面々の所にいた。やっぱり彼はこのサーザインシャインインラの運営部分のかなり偉い部分に居たから、戻ってきた彼を上層部の奴等は歓迎したみたいだ。最初はね。

 コルドバさんはお仕事的には偉い立場だが、地位的には偉くはないらしい。なんかややこしいが、叩き上げ? 的な感じなんだろう。上層部の連中はある程度の使える奴等を下において、自分たちは楽をしてる。ようは上層部の奴等が楽をするために据えられた椅子に座ってたのがコルドバさんと言うことだ。

 上層部が何もやらないからサーザインシャインインラの実質的な経営やら運営はコルドバさんがやってたも同然なんだ。彼が宮殿に戻ってきて、周囲の人達は喜んでいた。何をしたら良いか、どうやら上層部の連中は方針も出さなかったらしい。

 奴等に面会するまえに少し軽く現状を聴いてたが、どうやらこの宮殿内部ではほぼ情報を把握してない――という感じだった。上層部とその息の掛かった奴等はそれこそ狂ったように「教会が……教会が」といってたそうだ。

 あの橋の手前に設置された砲台の事もここの普通の職員の人達はしらなかった。どうやら上層部の一人の独断みたいな? そんな感じだったらしい。指針がなくなって、指示もなく、ただここまで砂獣がやってくるのを手をこまねいて待つしか無い……そんな状態だったらしい。宵が終わって明になったときに金色の鬼が咆哮を放ってた筈だが、それから慌てるしかしてなかったらしい。一応軍は動かしたけど、それだけらしい。その後、軍がどうなったかも知らない。

 そんなのある? と思うかもしれないが、軍なんてのはここサーザインシャインインラでは本当に飾りだったんだ。少なくとも、上層部の連中はそう思ってる。上層部は宵が終われば今度こそちゃんと教会と連絡を取れる……と本気で思ってたのか……今更絶望を感じてる。それて戻ってきたコルドバさんをみてまず開口一番に言ったのが「なんとかしろ!」――だったからね。

 もうね、どれだけクズなのかと。あの時コルドバさんはコイツ等殴っても悪くなかったとも思う。そんな一方的な上層部の一人を説得して、とりあえずサーザインシャインインラの上層部の連中を集めて、話し合うことになって今に至る。

 無駄に豪華て広い部屋。調度品から今座ってるソファーにいたるまで、庶民のそれとは違う物で埋め尽くされた部屋。そして上層部の連中は一人一人若い女性を侍らせている。それを見てコルドバさんは「こんな時に」と思う。まあ私も思ってる。奴等は私の事を認識してるけど、どうでも良い存在と思ってるのか、全然触れてこない。きっと自分で考える頭がなくなってるんだろう。可哀想……とは思わない。愚かだなって思う。職員の人達はまだ私に関心があったのに。 

 職員の方たちにはコルドバさんが言っていつでも動いてもらえるようにしてる。私たちの目的は上層部の連中に現実を突きつけて、彼等が持ってるであろう教会の道具を出させることだ。実際何を持ってるのか、使えるものがあるのかはわからない。でも何かが有るはずだと、コルドバさんは思ってる。

 実際私もなにかあるだろうとも思ってる。だって砲台みたいなのがあったのだ。他にもきっとあるたろう。それに実際ここを見捨てる気が無い時は教会だって本当にここを守る気はあったと思う。ということは、そのためにも何かを置いてることは考えられる。

 だってピンチになった時に中央からサーザインシャインインラに何かを運ぶ時間は無いだろう。転送装置とかあるなら別だが……流石にそれはないと思う。

「ここサーザインシャインインラはもう教会から見捨てられたんです」

「そんな事があるわけない!」

「我らがどれたけ教会に貢献したと思ってる!!」

「そうだ!! せめて我らだけにでも助けが来るはずだ!!」

 そんな言葉を堂々吐く奴等。コイツ等はこの街のことなんて微塵も思ってなんかない。ただ我が身可愛さだけなのが心底溢れ出てる言葉に、明らかにコルドバさんは怒ってるが、奴等がそれに気づくことはないようだ。

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