転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 612

「ご苦労」

 そんなことをいつも通りにいうおじさん。それに対して橋を警備してる兵たちが胸に手を当てて『ご苦労さまです』と返した。その反応から、やっぱりおじさんはそこそこ偉いんだろうってことがわかる。いや、偉そうだとは思ったけどね。けどそもそも橋を警備させてる兵士なんて下っ端だろうし、大体の人は上司のような気はする。

 けど別に怪しまれずにここを通れればいい。私はイシュリ君を抱えて後ろからついてきてる。まあ私というか、ドローンたちだけど。もちろんわざわざたくさんのドローンを侍らせてはいない。イシュリ君を運べる最低限の数で後ろにいる。そうしないとたくさん集まってると流石に音がうるさくなるからね。今も一応音はしてるはずだ。けど今日は風が強い。その御蔭で外ではドローンの音が聞こえにくくなってるようだ。

 

 まあけどここの兵士たちはほぼ真面目な奴らなんていないからね。だってコイツラはおじさんを見てようやく真面目に職務をしてる――という体裁を取ってるだけだ。さっきまでは普通に地べたに腰を下ろしてだべってた。

 警備する気とかなさそうだ。だからもしも変な音が聞こえたとしても、多分気の所為……とかで処理すると思う。厄介事には首を突っ込まない感じの空気がある。まあそれは私達にとってはありがたいからいいけどね。

 とりあえず順調に橋を進んでた。けどそのときなんか向かい側から歩いてくる兵士の一団が見えた。いや、ドローンでわかってはいたけどね。一応おじさんに報告はしてる。けど「彼らなら大丈夫だろう」ということだった。

 仲間? いや、知り合いなんだろうね。しかも腐ってない? わかんないけど……それともそいつらも間抜けすぎるから大丈夫ということか? そう思ってると、一番前を歩いてる優男に見える青年が気さくに話しかけてきた。

「やあコルドバ殿。宮殿から出るなんて珍しい」

「お疲れ様です。いやなに、こんな状況ですからね。閉じこもってても何もできませんよ。それで、砂獣の様子はどうでしたか?」

「相変わらずですね。こちらを伺って不気味なほどにじっとしてるよ。だがその数は着実に増えている。我らも最善を尽くすが、正直このままだと厳しい。本当に教会からの増援はないのですか?」

「連絡は取れないみたいですよ。そのせいで上の方はてんてこ舞いです」

「こっちだってそうだよ。お互い全力を尽くそう」

 そう言ってその好青年は兵士たちを引き連れて宮殿の方へと向かう。そのさい、なんか背後の私というか、ドローンに視線を向けたような気がしたが、きっと気のせいだよね。

『彼は何者なんですか?』

「このサーザインシャインインラで一番有能な部隊を率いてる隊長ですよ。彼はこの街には珍しく、剣に誓った行動をしている。気持ちいい奴だよ」

『それはそれは惜しいですね』

 このおじさんにそこまで言わせるとはなかなかだと思う。こんな街でなくてアズバインバカラに生まれてたらもっと出世したんじゃないだろうか? それに隊長クラスってことは多分だけど前線に出るだろう。そうなるとこの戦いで……とりあえず彼のこともドローンに見張らせておこう。もしもおじさんが言う通りの人物なら、もったいないからね。

 そんな事もあったが、私たちは無事に橋をわたり終えて市外の方へとやってきた。

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