転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 603

サソリは簡単に確保できた。どうやら油断しきってたみたいだね。ドローンは光学迷彩で見えなくしてたしね。いきなり身動きが取れなくなって焦っただろう。そしてそのまま寝かせた。どうやって寝かせたかというと、何故かこのドローン、デフォルトでそういう機能があった。

 無味無臭の薬品を撒けるっていうね。今まで使ったことはなかった。だって基本このドローンたちは情報伝達のために砂漠にはなってるからね。街近くのドローンは上空からその街の観察を任務にしてるけど、極力気づかれないために近づかないからね。

 どう考えてもこの薬品を使う場面って不意に気づかれてしまったときとかに寝ぼけてたか――とか思わせるためのものだと思う。なんか効果に睡眠導入もそうだけど、直前の記憶の混濁……とかもあった。そして大体どんな生命体にも聞く。

 さすがはG-01を作った奴らが用意してるような薬品である。たったの数mlでも大きな、それこそ人のサイズの倍以上の図体がある動物とかにも瞬時に効くらしい。でもさ……

(砂獣は動物なの?)

 そもそもが砂獣に眠るなんて行動原理があるとは思えないというか……むしろよく寝たね。

(いやそっか、この砂獣は普通の砂獣じゃない。教会が生み出した可能性高いもんね。まあだからって寝かせる機能とかあるのがおかしいけど)

 もしかしたら教会が生み出した砂獣は完全にそこらにいる砂獣を再現してるわけじゃないのかもね。てかそうだよね。だってそこらの砂獣って頭的なものってない。いや、頭的というか脳みそだね。別に頭はある。その中身がないのだ。だから砂獣は生物と呼べるかというとね……怪しい。

 でも教会がその秘術で生み出してる砂獣はきちんと教会の奴らに従ったりしてるわけで、頭がうみだされてるのかもしれない。

(まあサソリのことは後でいいか。いつだって解剖できるしね。問題は……)

 私は耳からサソリが出てきた子供を見る。はっきり言ってまずいことになってるね。何がまずいって肉体的にまずい。なにせ拷問を受けてたみたいだからね。てか今も背中側にあるでかい岩にその腕を杭で打ち付けられてるわけで……そして全身にはムチで叩かれたような傷と、火傷の痕……まあようは衰弱しつつあるってことだ。

(これって今まではこのサソリがいたからってこと?)

 サソリが肉体から出てきたら一気に衰弱が進みだした感じがある。きっとこのサソリがなにやらやってたんだろう。それこそ痛みを感じないような成分を脳に撒き散らしてたとしてもおかしくなんてない。

 それがなくなったから、一気に脳は体のピンチに気づいてる状態なのかも……でももうその体でアクションを起こす力もこの子供の中には残ってないんだろう。もうあとはただ生命活動が停止するのを待つばかり……的なさ。

 このサーザインシャインインラの上層部にとっては、こいつが生きてようが死んでようがどっちでもいいだろうしね。

「流石にこのままじゃ、かわいそうすぎるよね」

 私はドローンたちを使って彼も助けてあげることにするよ。けど、昏睡させる薬はあっても、傷を治すような薬はドローンは持ち合わせてない。このままじゃ、流石にアズバインバカラへと運ぶのに耐えられるとは思えない。

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