転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 585

「アイさん、人は非効率だけど、幸福を感じる方に流れるものなんですよ」

「知ってます。だからこそ、誰かがそれを正してやらねばならないのでは? 幸福を感じる方に流れるのはそれこそ幸せでしょう。ですが、その時が来たときに後悔するのは自分自身です。私はたとえ恨まれようとも、そんなことをさせるつもりはありません。

 私の管理下にあるのなら尚更です」

 勇者の言葉にそう返すアイ。別にこいつは意地悪で皆さんを管理しまくってその自由を奪ってきたわけじゃ無い。それがここに来てようやくジャルバジャルの皆さんには伝わったかもしれない。だって、今の言葉を聞いて、ジャルバジャルから訴えに来た人達はばつが悪そうにしてる。

「あんた……そこまで俺たちの事……」

「ちゃんと色々と考えてくれてたんだな……」

「顔は良いけど、冷たい人間なのかと思ってたよ。偉い奴等ってなんかいけすかないし」

 きっとアイの奴はジャルバジャルに行ってから今日まで、ちゃんと現場の人達と話し合ってなかったんでは無いだろうか? いや、アイ的には十分な会話をしてたと思ってるかもしれない。ただ自分のやるべき事を伝えて、そして彼らのためのメニューにジャルバジャル復興のための過程。勿論これまでの現状をアイならすぐに把握できるだろう。そういう諸々を把握してどうすればいいか……何処に誰を配置するのが効率良いかとか、きっとアイならすぐにわかるだろう。

 肉体的な情報なら観ただけでそれなりに私達はわかる。筋肉がどれだけ発達してるかとか、どこに持病をもってるかとか、ちょっとスキャンしたらわかるからね。それによって色々と配置換えとかしてたのかもしれないけど、それが正しいことだとしても、伝わらなかったら行き成り来た奴が強権を発動してる――と捉えられる。

「もしかして、あんたがやってきてその日にやった沢山の無茶苦茶なことも……理由があったのか?」

「?? 初めに言ったはずですが?」

 アイは首をコテンと傾ける。その仕草は無表情なアイだけどなんかかわいい。まあ内心、何も理解してないジャルバジャルの人達を馬鹿にしてると思うけどね。でも人間はAIとは違うのだ。それをもっとわかって欲しいよね。

「初めにあんたが言ったのは、全員のやることを決めて、各々やってたのを止めさせたんじゃ無いか。それに……俺のダチはアンタにお払い箱にされたんだぞ!」

「お払い箱というのはジャルバジャルから追い出したと言うことですか? そんなことは一人もしてません。そもそもがジャルバジャルはまだまだ人が足り無いのです。一人でも損耗させるわけには生きません」

 淡々とそう告げるアイ。こうやってぶつかってでも良いから、ちゃんと言葉を交わす事が大事だよね。けどなんか、今のアイの言葉……死ぬまでこき使う――とか言ってるようにも聞えるけど、別にそういうつもりじゃ無いよね?

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品