転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 584

「異議あり」

「はい、アイさんどうぞ」

 静かに意義を表明したアイに向かって、勇者が指名して発言を許した。そしてそれによってコホンと咳払いをしつつアイが口を開く。

「私は無茶な要求はしていません。彼らの体をみてください」

 そう言ってここに逃げてきた……というか訴えるためにやってきたジャルバジャルの面々に手を向ける。ふむ……相変わらず肌も黒くて暑苦しい濃い顔をしてらっしゃる……とか思うけど? この世界の人達は平坦な顔では無くて、堀も深く、鼻筋も高いようなそんな濃いめの顔なんだよね。それに基本なにもしなくても筋肉質らしい。

 多分この世界が過酷だからそういう風になってるんだろう。

「彼らの体がどうしたと?」

「彼らは健康そのものです。私が管理をする前は、アルコール中毒手前の者もいました。それに臓器にダメージを負ってるもの。強靱な体をこの世界の人達は持ってますが、それでも悪いところはあったのではないですか?」

「それは……」「まあ……」

 アイの言うことに思い返して同意するジャルバジャルの人々。街を一つ復興させる……なんてのは大変だろうからね。体が痛くなるのも仕方ない。実際そう言うのはジャルバジャルへ来てから……というよりもこの世界で生きてきて体が悲鳴を上げてるんだと思うけどね。

 ジャルバジャルに来たことが原因な訳ではないと思う。いくら強靱な体を持ってると行っても、人間の範囲に収まってるからね。アイが改革をやって効果が出てるのなんて、精々調子が良くなった……くらいじゃない? 確かに酒を止めさせたから内臓的には助かってそうだけど……そんな早く効果出るのかな? って思うし。だってまだアイがジャルバジャルにいって四日だよ? 

「今どこが痛いとか有りますか? 私が皆さんの体を毎日調整してますよね?」

「それは俺たちをこき使うために!!」「そうだ! 俺たちに死ぬまで働かせるために!」

 おいおい――だよ。アイはどんだけ恐れられてるんだよ。この四日でどれだけ高圧的に接してきたの? 確かに普段のアイはちょっと冷たい感じはある。てか美人が笑わないとクールなイメージ付くよね。

 別にアイは冷たい奴じゃ無いが、感情を発露する奴でも無いからね。きっと冷たい奴……みたいなイメージが付いて、逆らったら○○される……みたいなイメージが? それこそ飛躍しすぎのような気もするけどね。

「私はきちんと休憩はあたえてたはずです。それに食事の質も改善しました。バランスがとれてたでしょう」

「あんなんじゃ全然足りねーよ!」「濃い味のものが食べたいんだ!!」『肉肉!」

 どうやらアイは労働者達の食事とかにも手を出してたみたいだね。たしかにそんなの魔王は気にしないだろう。けどアイは全てに手を加えてるみたいだね。勿論それはよかれとおもってだし、実際ジャルバジャルの人達は健康になってるんだろう。でも幸福指数はきっと下がってるんだろうね。だからこうやって直談判に来てる。

 なかなかに難しい問題だね。アイも別に間違ってはないし、けど生きるには幸福って奴が人には必要なのだ。

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