転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 561

「いや、我は貴様のように戦闘中に放屁なんてしないがな」

「バレバレですからね。私がそれを見逃すことはありません」

 うん、そういう事じゃないと思うんだよねアイ。そういう事を言ってるんじゃないよ。やっぱりなんかアイの奴面白いな。こんな面白い奴だったとは……私は一人コクピット内でお腹を押さえてるよ。

 確かに魔王はがさつで粗雑なやつではある。けどそんな魔王でさえ、戦闘中に屁をして相手をおとしめようとはしてない。何か教示があるのか、ただたんにそんな間抜けなことは出来ないだけか。いや、追い詰められれば魔王はためらいなくやりそうだけど……でも一定の教示がありそうな魔王は流石に屁なんてのを戦術には組み込まないんだろう。

「ふん、貴様みたいな奴も勝利に執着するんだな」

 動かない体なのに、魔王は余裕を崩さない。それとも……

「おしゃべりですね。貴方は喋るよりも殴る方が好みだと思ってました。それとも、それは時間稼ぎですか?」

 ――私も思ったことをアイが言った。流石に違和感あるもんね。アイが放屁して放出した例のナノマイクロデバイス。それの情報を私は開示する。なにせ私が作った体にある装備である。履歴を出せば、あの体に使ったパーツを検索することは出来る。ナノマイクロデバイスというキーワードで検索すると、うん……けっこう一杯ある。

 今まで気にしてなかった備考欄に色々となんか説明が書かれてるんだよね。これが全てのパーツにあるってなると……実際全て把握して上手い具合に相性の良いパーツを組み合わせてG-01をアップグレードしていくと言うことが出来るかどうか……自信が持てないね。こう言うのはアイの奴に任せてたし。そのアイは既に自立してる。もう一度戻すことも可能ではあるけど……うーん、あいつ小煩いからね。

 私に優しくて、私に都合の良いアイを……いいやAIを生み出したいところだ。

(まあそれはおいおいだね)

 今はアイと魔王の戦いだ。それを止めるためにも、ちゃんとアイの体を把握してないとね。いや一応少しは私が産みだしたから理解はしてる。理解はしてたつもりだけど……まさかナノマイクロデバイスなんてのは今知った。そこまで読んでないもん。

 本当にG-01……というか、これを作った者達の技術力が凄まじくて、いくら脳を拡張したとしても追いつけないような気がするよ。他にもなにか隠し要素を詰めこんで私に作らせた可能性はとても高い。

 でも……状況は私がいちいち説明文を読むのを待ってくれないんだよね。

「時間稼ぎだと? この程度……毒みたいな物だろう? 効かぬわ!!」

 そう言って魔王は力強く立ち上がった。流石魔王、力は腹の底から湧き出るらしい。

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