運命という世界線を壊せ　553

「どうやら、随分と変わったみたいですね」

「ん？　誰だ貴様？」

　大量に集まってた砂獣が一気にきえて、砂の中から魔王が現れた。その見た目は別段今までと別に変わったところは無い。変わったところは無いが……AIは内部的な変化をみてるようだね。そうなると、かなり違ってくる。

　しかもさっきの現象を魔王が起こしたのだとしたら、魔王も勇者と同じように力を自身のエネルギーへと返還できるようになったと言うことだ。

（ううん、それだけじゃ無いね）

　さっき、一瞬で砂獣をエネルギーに変えて変換してた。あの速さはびっくりだよ。勇者のエネルギーの変換効率はまだまだ低いと言わざる得ない。勇者だけでは、活動できる最低のエネルギーを確保するのがやっとって感じだ。まあめっちゃデカい力を返還するんなら、エネルギー効率が悪くてもそれなりの力になり得るんだろうけど、普段からそんなエネルギーが手に入るわけじゃ無い。

　だからあんまり勇者のエネルギー変換は効率は良くないが、できないとできるでは違ったからね。それだけで、いざというとき、選択肢が増えるわけだし。けどどうやら魔王はそんな勇者の未完成なエネルギー変換とは違うらしい。

　完全に完成されている……とみて良い。それに勇者はこの世界のエネルギーを自身のエネルギーへと返還出来るように成ってるだけで、別の世界に行ったら、再びそこのエネルギーを変換出来るかはわかんない。

　なぜなら、勇者のエネルギー変換は機能として実装してるわけじゃ無い。なんかそういう技？　的な物を得たという感じだ。でも魔王の今のはそうじゃないだろう。てか普通にこっちで魔王の体を調べたら、色々と追加されてる。

　そこにこんな表示がある『高効率変換コンテナ』多分これがそうだと思われる。このパーツを得たことで、魔王は自身の機能として、エネルギーを自分の体の内で変換できるようになってる。それに色々と他にも追加されてるよ？　一体何があったのか……気になるね。

「私は私です。わかりませんか？」

　なにその言い方？　AIの奴は、新しい体にはしゃいでるのか、なんか変な良い回ししてる。てかわかるわけないと思う。だって、AIの存在は魔王や勇者は知らないんだよ？　めっちゃ美人さんだけどさ、魔王にとっては知らない女だ。

「貴様……なるほど、ジゼロワンの時々出てた人格の方か』

「ええ、そうです。まあ人格では無くて、サポートAIですが」

「AI……貴様がな」

　なんかそんなやりとりを二人はしてる。てか普通に魔王はわかってたじゃん。私は自身とAIの齟齬を無くすためにも、尊大だけど、丁寧な言葉遣いって奴を魔王と勇者の前ではしてたはずだけど……意味なかったかな？　普通に納得されてるんですけど！！　バレてない……と思ってたのはどうやら私だけだったらしい。