転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 538

 我はどうなった? 

 神の力と我という存在。それを混ぜ合わせて、そしてそれでも我が勝つと賭に出たわけだが……これは勝ったと思って良いのだろうか? なにせ我は……まだ我だ。 ちゃんと記憶もある。だが不思議な感覚ではある。なにか水の上に浮かんでるような……そんな感覚だ。それに意識もあるにはあるが、どこかこう……靄がかかってるような気がする。

 

「お前は死ぬんだ……」

 いきなりそんな事を言われた。その声のする方に視線を向けると、靄がかかった誰かがいる。それは一体誰なのか……わからない。いや、予感はある。あれは我自身か?

「我は死なん。こんな所で死んでたまるか」

 そう言って我は拳を作ってあげようとするが……からだが上手く言うことを聞かない。掲げようとした腕は酷くゆっくりとしか上がらなかった。これでは殴る事はできないな……そんな事を思ってると、別の方向からまた別の声が聞えてくる。

「そんなに戦ってなんになる? その先に何がある。貴様のその破壊衝動はお前の本当にやりたいことか?」

 煩わしい声だ。何を言い出すかと思えばなんになる? とはな。そんなの元の世界で散々言われた事だ。だから言ってやろう。そんな言葉に今更惑わされる我ではない。「なんで戦うのか」そんなのは決まってる。

「我が戦いたいからだ。其れ以外に理由なんてないな。それがたとえ魔王としての衝動だとしても、我は戦う事が好きなのは確かだ」

「それこそが仕組まれたことだとしてもか?」

「そんなのしらんな。ただ我は戦いの中でしか生を実感できないからな。それが魔王としてのあり方でしかなかったとしても、別に良い。それで後悔した事なんかない」

 言い切ってやった。何をこいつらはしたいのか……我が惑う事で我の意識を鎮めたいのだろうか? 我……という中核を惑わせれば、この場所でなら我という存在を崩壊させる事ができるのかもしれない。なにせきっと……ここは精神の世界とかだろう。

 あの状況的にそうだと思う。ようはきっとここは最後の砦なのだろう。なのでこの話しかけて来る奴らは我……と言う自我を最後に刈り取ろうとしてる奴等……つまりは敵である。面白い。精神での戦いなんてのは早々味わえるものではないからな。

 こいつらの薄っぺらい言葉にこの魔王がみじんも揺らぐなんて事はない――と教えてやろう!!

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