転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 529

「それならばなお良いではないか。我は必要としてるぞ」

『ですが、提案だけはしてみたいと思ってます。なので早く貴方の主をここに。どうやら、私にデータを渡すのはイヤそうですからね』

 むむ……こいつ、我がなるべく自分の中のデータを渡したくないからコードを受け取るのを渋ってるのを見破ってたか。まあここまで、なんやかんやと言って先延ばしにしてるからな。バレて当然か。だが……なんか既にAIの奴はジゼロワンの存在を確信してないか? それは……とっても不味い……だが……

「おいおい、何を言ってるんだ? この世界にいるのは我だけだぞ」

『そんな冗談はもう良いですよ。これまでの会話から、貴方が嘘をついてるのはわかっています。どうしてそんな意地悪をするのですか?』

「そうか……わかっていたか」

 なんか確信めいたものを持ってるみたいな言い方だから、もう認める事にした。本当ならこんな事はしたくはなかった。だが……しょうが無い。しかしこれならこれで魔王である我にはあってると思う。

 我は自分の体内でその力を高める。どれだけの強度があるかはわからないが、今なお新品同様を保ってるその姿に、この施設がとても凄い何かで出来てるのはわかる。さすがはシザーラス人が作った建物だ。そしてその内部のパーツを護るために展開してるこの球体もちょっとやそっとでは壊れないだろう。なら、察知される直前まで、極限に力をため込んで放つ。それしかない。内部のパーツもぶっ壊れるかもしれないが、そこは運だろう。大丈夫、我は運は良い方だ。悪運だがな。

『勿論です。貴方は一端末でしかありませんからね。本体から離れてしまえば、それほどの活動は出来ないでしょう。なら必ず本体があるはずです。完全な、ユグドラシルシステムを搭載した本体が。それこそがこの世界の、いえ、世界全ての希望です』

 そうかその希望に託されるべきものを我は奪おうとしてるという事か。世界を敵に回してる感じがして、実に魔王らしいじゃないか。躊躇いなんてない。だから我は行動に出る。

「それは済まないな!!」

 我は一気に突っ込んで、その爪をパーツを包んでる球体に突き立てる。理想的にはこの一撃であっさりと打ち砕いて、パーツを奪ってしまう事だったんだが……、そんな都合良くは行かないな。球体は我の爪を食い込ませる事はない。

『バグが発生した個体でしたか。それならば切り離されて当然です。それならば、此方で対処しておきましょう。貴方の体を使えば通信も出来る筈ですしね。それで全て解決できるでしょう』

 そう言って我に繋ぐために伸びてたコードが我に絡みついて、投げられた。そしてその先端に光が集ったと思ったら、我の体を貫く。この体、以前よりも相当頑丈なはずだが……簡単に貫かれた。だがそれでも精々数センチ程度の穴だ。この体なら問題ない。別に血も出るわけでもない。気にせずに我は動き出す。

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