転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 514

「我は旅に出る」

 なんかそんな通信が魔王から入った。何かな? 青春かな? それとも自分探しにでも行こうと思ったのかな? 理由を聞いたらこう帰ってきた。

「我はこのままでは駄目だ。勇者の奴が新たな力を得た。なら我も力を……いや、それ以上の力を得ないと駄目だ!! だからしばし旅に出る」

 要は勇者が私からの供給なしにこの世界の力そのものを自身へと還元できるようになったのが悔しい――そういう事だろう。わかりやすい奴である。まあけど……ジャルバジャルの守りの要なんですけど? そこはどうするつもりなのか。それを聞いたら――

「心配はいらん。随分と鍛えたからな」

 ――ということらしい。ええーでもそれってこの世界の兵士達を鍛えただけだよね? それでどうにかなるかなぁ? 疑問なんだけど。確かに普段攻めてくる砂獣程度なら……どうにかなると思う。けどさ、今は敵は砂獣だけではない。協会の方が主だった敵だ。そうなると……ね。魔法が使えるようになったわけでもないだろうし、こっちは不利なんだよ。

 アズバインバカラには私か勇者、どちらかが常にいるから良いけどさ、ジャルバジャルには魔王しかいないんだよ? ポニ子をジャルバジャルへと行かせても良いけど、あいつは戦力にはならないからね。そもそもがネナンちゃんが常に連れ回してるし、私はそれでいいと思ってる。防御自体はなかなかの性能してるんだよね。あいつぷにぷにしてるから、結構弾いてくれる。
 存在的に魔法耐性も高いし……協会もポニ子にネナンちゃんを護られたらそれはそれは嫌だろう。ネナンちゃんはきっとこの世界の鍵になると思ってるからね。あの子を中心にきっと世界は動くだろう。そのためにも守りは固めておきたいじゃん。どんな手段を教会が持ってるのか全部把握してるわけじゃないし……蜘蛛人間ヌポポの時のようにいきなり消えていなくなるってのがネナンちゃんにも起きないとは言えない。

 まあ十中八九起きないとは思う。

「けどまあ、絶対はないからね」

 それだね。これまでできなかったからこれからもできないなんてことはない。私は常に日々進歩してるわけだし、ほかの奴らがいつまでも停滞してると思うのは慢心が過ぎるというものだ。

『そんなに向上心ありましたっけ?』

 AIのやつがなんか言ってきてるがそれは無視だ。私は日々頑張ってるの。今だってこうやって皆さんの信仰心をちゃんと受け止めつつ、私は新たに有用なものがないか、G-01のマニュアルを読み込んでる。
 まあこのさい、魔王には各地の町を巡ってもらって、現状を見てもらうのも悪くはないかもしれない。ジャルバジャルはG-01なら数時間でいけるしね。監視の目を多めにしとけば問題ないでしょう。

『新たに大きくなったあなたを期待してます』

 私はとりあえずそんなお世辞を言って送り出してあげた。

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