転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 500

 とりあえずうるさくなくなったとは言え、女性だし白目むいて泡吹いてるのは流石に痛々しいというか……まあなんというかなので、眠らせることにした。直すことは多分出来ると思うが、その後また五月蠅くされても困るからな。淡い光を飛ばすと、それに包まれてペニーニャイアンは静かに整った息をし出す。

「ほうほう……なるほどのう……無詠唱をこうも簡単に使うのかの」

 なんかとても感心された。蜘蛛人間は魔法を扱うからこそ、無詠唱で魔法発動できることの凄さって奴に気づいたらしい。この世界の人達は大体魔法なんて使えないからな。魔法を使っても「へぇーすげー」とか「おー便利だなー」くらいの反応しかなかった。でも蜘蛛人間は違う。
 食い入るように見てる……いや目は閉じられてるから観られてるわけじゃない。物理的にはな。けどそれが分かるんだ。観られてる感覚がある。まあこういう目を閉じてるはずなのに観られてる感覚だけがあるってのもこいつが不気味がられてるところだと思う。
 自分ならそれが魔法的何かの作用とは分かるが、この世界の人達にとってはただ不気味としか感じられないだろうし。

「それで、貴方は教会でもかなり上の方に位置するお方……と言うことで良いのかな?」
「左様だ。儂こそが教会を統べとる賢人の一人じゃよ」
「賢人? ですか? 教会の人達は上の人達を老子とか読んでたはずですけど?」
「あやつ等はまだまだひよっこよ。それに儂は老人ではないわい」

 そうか? まあ不気味さと言葉遣いだけの印象というか……確かにこの人の人間の顔の部分をちゃんと観ると、若いような気もする。老人的な皺はあんまりない。てかなんか丸み帯びててふっくらしてるというか……赤ちゃんみたいな顔をしてる気はする。でも発する声は老人だが……ぎっゃぷが凄いな。しかも色々と顔につけまくってから、これでちゃんと顔を把握しろって言う方が無理なんだよ。それに体は蜘蛛じゃん……はっきり言って若いのか老いてるのか分からない。いや、若いわけはないと想うけど……

「賢人とはなんですか? 後他にもいるんですか?」
「儂以外にもあと二人はおるの。まあ儂ももう一人も実質中央にはおらぬじゃ。一人が教会をしきっておる」
「中央にいない?」

 どういうことだ? 教会の連中って皆贅沢や権力が欲しくて中央で色々とあくどいことをやってるイメージしかないんだが? この人……うん? 人? でいいのかわかんないがとりあえず名前を聞くか。

「貴方の名前は?」
「まだな乗っ取らんかったか。儂はこの世界を託された賢人の一人『ヌポポ』じゃ」
「ヌポポ……それは仮の名前とかですか?」
「鋭いの」

 いえ、ただあまりにも間抜けな名前だったからついつい口を突いて出ただけです――とは言えない。

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