転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 499

「アンタ何なの!? 私を助けに来たんじゃないの? そうなんでしょ?」

 蜘蛛人間へと牢から放されたペニーニャイアンが声を張り上げてそう言ってる。実際、答えは中央で出てたような気もするが……

「大切な話し合いの最中です。大人しくしていてください」
「五月蠅いわよ。誰に向かって口をきいてるの」

 キッとペニーニャイアンは声を掛けた人に睨みをきかせる。ペニーニャイアンはなんだかんだ言って美人だからな。美人に睨まれると思わずたじろいてしまう。下手に顔が整ってるから冷たい表情もズガンと来るんだよな。折角勇気を振る絞って注意をしてくれたのに……なんか申し訳なくなる。ペニーニャイアンはもっと捕虜的な自覚を持って欲しい。まあ既に大半の人が諦めてるが……

「ふぇふぇふぇ、なんじゃ誰じゃ貴様? 何者なんじゃ?」

 何か馬鹿にしたように蜘蛛人間がそんなことを言った。知らない? いや、ペニーニャイアンは教会ではそれなりの位置だったはずだと思う。実際巫女の価値がどの程度なのか……それを自分的には測りかねてるんだけど、一般大衆的には巫女なんてのは雲の上の人だ。でも教会の方では案外あっさりとペニーニャイアンを見捨てたようにも思う。そこがいまいちよく分からない。
 蜘蛛人間は自分達の見立てではかなり教会では位が高いはずだ。その言葉……いや蜘蛛人間がどの位置にいるかも分からないからな。

「やっぱりただの砂獣のなれの果てね。聞きなさい。私はペニーニャイアン。神託の巫女の一人よ」
「ふぇふぇふぇ、神託の巫女のう。今この場に居ると言うことは、貴様などは予備であろう。本物ではない」
「なっ!? なんですかそれは!! 私は――」
「本物のは巫女は上位三人だけじゃよ。ナンバーを与えられたと言って、修行もおろそかにしていかんのう」
「なんで……アンタのような化け物がそれを……」

 なんか色々と情報が出てきたな。教会的には巫女は上位の奴らだけいれば良いらしい。そしてそれは三位以内らしい……なるほどね。他は全て予備なのか。そして巫女の修行……たしかにそれはペニーニャイアンがやってたとは思えない。何せあいつは贅沢すること……そして自分の美を磨くことしか興味なかったみたいだからな。あ、後は他者で遊ぶことか……そう考えると本当にろくでもない奴だよなペニーニャイアンって。その最たる犠牲者がピローネだし。

「恐れ多いんじゃよ。貴様のようなひよっこの巫女が会話をできるような存在ではないわ。おぬし等巫女は、儂の食事じゃぞ。食ってやろうか?」

 なんだ? 何か今一瞬何か力を感じた気がする。するとペニーニャイアンが震えるようにして膝を床についてそのまま倒れた。そして過呼吸のように危ない息をしてる。いやお前、そんな殊勝なやつじゃないよな?

「何をした?」
「何もしとらんよ。ただちょっと五月蠅かったのでな。そうではないのかの?」

 ちょっとだけ、正直同意しかけた。

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