転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 414

「とりあえず、殴りやすいところから殴ってこ――せや!」

 私は軽く腕を振るった。デカいサソリ型の砂獣だが、十分通用する大きさだ。まだ……ね。これが一つの大陸ほどにデカいとか成ると、流石にG-01でも無理になってきそうな気はする。
 そのときはG-01を大きくするしかないだろう。出来なくはなさそうだよね。まあけど今はそれを考える必要ない。だって遠くから殴っても、えぐれるようにサソリ型の砂獣にダメージが入るからね。

 けど長くデカい体の一部がえぐれたところでこの砂獣は止まりそうもないね。私は砂を蹴ってG-01を空中にやった。そして両手を合わせて、頭上に上げた腕を下に下ろす。すると広範囲に空気の壁が落ちた。
 そしてそれに潰されるようにサソリ型の砂獣が砂へと埋まる。

「うん、これで狙いやすいね」

 砂の上にその長い体を横たえたサソリ型の砂獣は陸の上に上がった魚のように、びだびだとしてる。既に私が放った空気の圧力? 的な物はないと思うんだけど……まあいっか。陸の上の魚、まな板の上の鯉――よろしく、私は今度は両腕を解放して、交互に左右の拳を振るって前から後ろまでを丁寧に爆散させてあげた。
 さて、まずは一体。勇者の方を見ると、勇者はサソリ型の砂獣を輪切りにしてた。どうやら周囲に漂ってる聖剣は大きさを自由自在に変えられるらしく、それを大きくして、自身の周囲で回転させてスパスパと切ってるようだ。

「向こうの方が格好良くない?」
『それは気にする事ですか?』
「気にするよ!」

 AIの奴が淡泊な反応しか返さないから、私は感情をまっすぐに出してそう言った。だって私は勇者よりも上の存在なんだよ? その私が小手で殴る……という事しかしてないってどうよ? しかもさ……この小手便利だし、威力だって申し分ないほどにあるけどさ……いかんせん地味である。

 普通には為から見てたら、G-01が拳を振るって砂獣達をなぎ倒してるとしか見て取れないと思う

『大切なのは確実にそして安全に敵を倒せる事では?』
「それはそうだけど、そうじゃないんだよね。AIは浪漫って奴をわかってないよ」

 私はグチグチとそう言ってやる。確かにこの小手の選択は効率的なAIらしい、正しい選択って奴なんだろう。でも勇者のあれに効率ある? 勇者的には効率的なやり方なのかもしれないが、あの輝く空中に浮かぶ剣とか格好良いじゃん! 勇者が綺麗で装飾された鎧に伝説の剣を装備して戦ってるとしたら、G-01はほぼ裸にグローブをつけて戦ってるボクサーみたいな物だからね!? 

 どっちに周囲は惹かれますかって事だよ。

『全く私に頼んでおいて文句ばかり、それなら自分で選べば良かったでしょう』

 私のネチネチとした文句にイラッときたのか、AIがそんな事をいってくる。全くの正論だね。言い返す隙間さえない。なので私は無視してもう一体のサソリ型の砂獣をぶっ飛ばした。
 まあこの小手には剣にはない爽快感はあるけどね!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品