転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 344

「くははは! 貴様、俺様の言葉を聞いてたか? それともそれは世界を差し出すから自分を救ってほしいとかそういうことか?」
「それは違います」

 キッパリと、ヘメ・レペスと呼ばれてたその人はそういった。迷いも何もない即答と言うよりも、そう言うしかないような早さの返事。実際、その言葉が嘘とは思えない。
 何せ自分たちがどれだけひどい目に遭ったとしても、協会を裏切ろうとしない奴らだからね。そんなこのひとたちが自分のためだけにそんなことを望むなんて事は思えない。
 まあ実際、他のヘメ・レペスとか知らないから、実はこの人がとても特殊な人……という線もあり得なくはない。

「人のくせに欲という物がない奴だ」
「そんな物、我らには贅沢すぎる物なので」
「貴様ら……ヘメ・レペスとは誰もがそうなのか? 人は欲深い生物だ。世界が変わってもそれは変わらんと思ってたが?」
「我らはそれで身を滅ぼした……いや、欲で世界を滅ぼしましたから」
「その罪のせいで貴様らはそういう考えと言うことか」
「はい」
「本心でこの世界を俺様に差し出すと」
「ええ、ですが邪悪な方をですが」
「清い力と悪の力があるとでも? 俺様にとっては力にそれほどの違いはないがな。要は使う側の問題だ。力はただ、純粋に力なだけだ」
「そうかもしれません。ですが世界がこうなってしまったのは……我らがあのとき、力の源泉に欲望という蜜を混ぜたせいなのですよ」

ヘメ・レペスと呼ばれてるその人ははっきりとそういう。実際私からしたら世界の力には違いはある。まあその世界しか知らない人たちには善の力と悪の力なんていう違いがないというのは正しいんだけどね。でも世界によって確かに力の質というのは違うのだ。
 それによって生物にも特徴が出来る――みたいなことがG-01の資料にはあったし。まあ野暮なことは言うまい。てかそれは魔王だってわかってるはずだ。だって魔王だってこの世界の力の質が違うせいで、この世界の力を直接取り込むことが出来ないんだから。
 まあ勇者はそれを自力で解決したみたいだけど。魔王は多分まだのはず。

「この世界はかつては緑と自然が豊かな美しい世界でした。そんな世界で太陽の恩恵を受けつつ、人は発展し、そしてついには世界を埋め尽くすほどだったのです」
「ふむ、そうなれば領土問題とかがでてくるだろう。あれか、戦いの果てにこの世界はこうなったと。欲望とはそういうことだろう?」

 あり得そうだね――と思った。まあありがちだけど、魔王の読みはあながち待ち間違ってはないと思う。

「いいえ、我らは互いに争うことはしませんでした。よく理解してたのです。互いにとっての戦争がとても無益なことを。そして発展し尽くした我らでは一度始まってしまっては、世界を燃やし尽くすとわかっていたのです。それだけ強力な兵器を各国が持っていたので」
「力がありすぎて平和になったと。つまらん世界だな」

 魔王はそう断じたが。私はある意味良い世界では? と思った。けど結局はこうなってるからね。でも争って世界と文明が崩壊したってわけじゃないなら、彼ら……ヘメ・レペスの罪とは一体? 私は密かに彼の言葉に耳を傾ける。
 ぐぐっと興味を増してたね。

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