転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 341

「かつてこの世界には緑があふれ、海があり、そして太陽は二つあったのです」
「貴様、それは――すびません」

 協会の奴らが、彼の話を遮ろうとしてきた。けど魔王のにらみ一発で協会の奴らはおとなしくなった。情けない奴ら……とは思わないさ。何せ本当に魔王のにらみは凶悪だからね。
 まあ凶悪というか、迫力が凄いって言うか。だからあんな胆力なさそうな連中では震え上がってしまうのはしょうがないことだ。

 それよりも一つ私的に気になることがある。この世界が砂漠化したのって、ここ数十年……とかじゃないよね? だってそれなら海とか小さくなってもまだありそうだし、砂漠だってこの世界全部をそう変えるなんて……

(まさか一夜にして……とか?)

 こんな世界だし、あり得ないなんて事は無いかも? でもそれよりもっと現実的――といっていいのかわかんないけど、一つの仮説がある。それを魔王に聞いてもらった。

「待て、貴様は一体いくつだ? ただの人ではないのか?」

 この世界では砂獣と人、後はいくつかの動物くらいしか生物は見たことない。魔王のいた世界みたいな、様々な種族がいる――って事は無いみたいだ。

 ということは、寿命とかも、そう変わりなんて無いはずで……いや、協会の奴らなら、権力にかじりつくために寿命を延ばす――なんてことをやってないとは限らない。てかやってそう。一応この人も協会の奴ではある。
 ローブを着てるが、ましな考えしてるようだけど……でも忘れちゃいけない。この人も、協会の奴らのくくりに入ると言うことを。これまで協会でくそじゃなかった奴がいるだろうか?
 いやいない! いやね、普通に町にいる協会の人たちは本当に信仰をけなげに信じて、誰かの助けに……心を少しでも信仰で軽くしたいって人たちがいるのを私は知ってる。
 でもあまねく偉い奴らはくそなんだよ。そんなクソな中央の協会関係者なら、魔法で生きながられるって事までやってそう。

「ご明察の通り、私は悠久の時を生きてきました。いえ、呪われたこの身は朽ちることがないのです」

 そう言って彼は見えてる手の部分。それを眼前に持ってくると、その手袋を取る。そこには、しおしおの皮膚とともに、何やら緑がかった斑点模様のようなものが見えた。

『長く……とても長く生きてきました。いえ、ただ死ねぬこの体は限界を迎えてこのような醜い事になってるのです。になってるのです。けど……それでも我らは太陽に迎えられることはない。大罪人ですので」
「本当にそうなのか? 俺様が魂まで粉々にしてやろうか?」

 彼の言葉を聞いた魔王が、なにげにそう言って手の骨をパキパキと鳴らしてる。冗談……とでも彼は思ったのだろう。少し乾いた笑いを発してこういった。

「はは……それが出来れば楽になれるかもしれませんね。でも……私だけが逝くわけにはいかない。たとえ救いの冗談だったとしてもその気遣いに感謝します」
「冗談とかではないぞ。この俺様に出来ぬ事など無い」

 そう言ってその手のひらに闇を顕現させる魔王。まるで小さなブラックホールのようなそれは小さな丸い点なのにとてつもないを感じる代物だった。

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