転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 339

「おい、貴様」
「何か?」

 警戒しつつ魔王の高圧的な態度にも動じないその人。ヘメ・レペスでいいのかな? てか、それって名前なの? 

「なぜお前はあんな奴らに付き従ってる? くだらないと思わないのか?」
「くだらないなど、私に選択肢などありません」
「どういうことだ? 貴様は生きてるだろうが。ならどこかに縛られる必要なんて無い。自分のしたいようにすればいい」

 なんとも魔王らしいことを魔王が言ってる。けどね魔王。案外誰でも縛られてるものだよ。私だってとてつもない力を持ってるというか操れる訳だけど、実はこのG-01というロボットに縛られてるからね。
 私はこのG-01の外に出ることができない。これを縛られてないっていえないよね。だってせっかく世界を渡ってるのに、私はその空気を吸うこともできなければ、現地の食事とかにもありつけない。
 はっきり言って旅行してるのにその現地を味わうことができないことと同義だよ。しかも同行してる奴らはそこを堪能してるって言うね。これがうらやましくないといえるだろうか? いやいえない。私だって異世界を味わいたいよ。
 でもどうしようも無いんだよね。

「したいようにすれば……ですか。そんな選択肢は私にはないのですよ」
「それは貴様が決めたことか?」
「どういうことですか?」
「それは貴様の意思で、魂で決めたことかと問うてるのだ」

 魔王は自分の胸をたたいてそう言ってる。てかもっと彼から情報を引き出してほしいんだが? ヘメ・レペスが何かとかね。本人なんだしそこら辺の情報持ってるじゃん。なんで精神論あいつは語ってるんだよ。
 いや、口は挟まないけどね。

「そうですね。それは私の意思で魂に刻まれたものですよ」
「根っからの奴隷と言うことか」
「そうです。私は世界の奴隷なのです」
「つまらんな」
「そう思いますか?」

 今度はなんかヘメ・レペスであるそいつが魔王に聞いてきた。案外普通に喋ってるね。魔王の力はわかってるだろうに怖くないのか? 魔王がやり合う気が無いのをわかってるのかもしれない。戦闘狂の奴らってそこら辺わかるみたいだしね。
 私は戦闘狂じゃないけど、G-01のスキャン機能で敵対心があるかどうかとか、体の状態とかが戦闘状態に移行したりしたらわかる。力が高まったりするからね。

 その観点で言えば、ヘメ・レペスの彼ももう戦う気は無いようだ。まあ魔王に勝てるわけもないしな。魔王も、もうやり合う気は無くなってるし、変に挑発したらここにいる全員がやばいってのはその通りだからね。

「思うな。俺様は誰かの奴隷になどならん。運命などと言うやつがあるのなら、砕き割る。そうやってきた」
「それは大罪ですね」

 そう震える声で彼は言った気がした。

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