転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 315

「本当に協会は正しくないのだろうか?」

 アヴァーチェにとっては妹、プライムにとっては姉である最後の子供の所に向かう途中でぼそっとアヴァーチェがそういった。目の当たりにしたはずだが、これまでの教育の成果か、まだ協会を信じたいようだ。

(いや、いきなり全部ひっくり返すなんて無理だよな)

 寧ろそんな簡単に心変わりるする方が怖いっていうか……そもそもが俺たちがアヴァーチェに打ち込んだのはちょっとの疑惑だ。完全完璧に正しいと教えられてたアヴァーチェに「本当にそうだろうか?」と思わせるきっかけを与えただけ。

 だから協会を信じたい気持ちがあるのは仕方ない。

「正しくない……ことはないと思いますよ兄上」

 そうプライムが言った。それにちょっと驚くアヴァーチェ。なにせさっきまでプライムは協会を否定してた側だからな……そんなプライムからそんな言葉が聞けるなんて思ってなかったんだろう。

「お前……どっちなんだ? 協会を否定したいんじゃないの?」
「兄上、勘違いしないでください。私は協会の全てを否定してるわけではないですよ。実際、今日まで協会は民衆の心の支えであった事は事実ですしね。
 でもどんな物にもいい面と悪い面があるという事です。そしていい面だけを取り繕ってみようとしないのは、自分自身の目を曇らせることになるということです。誰かに言われたから……ではなく私は、自分で考えて自分で決めたいと思ってます」

 お前はいったい何歳だ? と言いたい。プライムの奴が立派すぎて怖い。いや今までも何回も思ったけどさ……どう考えても三歳児の思考してないぞ。
 だって何か劇的な事があったわけでもないよな? だって生まれてすぐに協会に連れてかれてる筈だし……何か協会にされたのか? はっきり言って、それしか考えられないが……元からこうだとしたら、前世の記憶でもあるのか? と思うくらいだ。

「確かに……自分で決めて……その責任は自分で追わないといけないな。それが王族というものだ」
「いいえ兄上。それは一人一人そうでなければいけないと思いませんか?」
「はは、確かに」

 なんか兄弟がいい感じになってる。どこらへんで出ていこうかと思ったが、この雰囲気ならいけるだろう。まあ実はずっと後ろをついていってたんだけど……二人は運よく協会の人たちに見つかってないと思ってそうだが、実は俺が不可視の魔法を使ってるからだ。
 ここらでちゃんと合流しとかないと、もう一人の子の所で合流することになってしまう。

 ちょっと先回りして――

「よう、上手くいったようだな」

 ――壁に背を預けて余裕綽々の態度で二人を待ってた演出と共に、俺は現れた。

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