転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 267

 老子バンドゥンの汚い絶叫が夜空へと響く。ついでにノアが封じられてたシンボルも壊しておいた。あれはノアと親和性高そうだからな。残して置いたら、再びノアがあの中に戻りかねない。
 今のノアが自主的にあの中に戻る……なんてことはありえないと思ってるが、魔法的な強制性がないとは言い切れない。俺はノアの憎しみや怨嗟を浄化したが、こいつの存在を変えたわけではない。
 ならあのシンボルはたぶんノアとの繋がりがなんらかの形で残ったままだった可能性は高いんだ。だから後顧の憂いをなくすためにも、吹き飛ばした腕ごと、シンボルも破壊した。

「きさまぁ~」

 顔は見えないが、たぶん老子バンドゥンは血走った眼で俺を睨んでるに違いない。そのくらいはわかる。

「老子! おさがりください!!」

 たぶんこの場で老子バンドゥンの次に偉いであろう協会の奴が近づいて老子バンドゥンを支えた。老子はなくなった腕を押さえつけてるが、老人の力で抑える程度では血は止まらないだろう。事実、ローブを伝って血は地面に流れてた。

「老子! おさがりを!」
「このままでさがれるかああ! 奴は我等を、いや協会に楯突いておる! それは天罰を与えなけばならない大罪じゃ!! そうだのう……貴様の腕を儂によこせ」
「へ?」

 そういった老子は傷口を支えてくれてる協会の奴に押し当てる。そしてこういった。

「変換じゃああああああああああ!」
「あがっ!? 老子! 何をおおおお!?」

 押し当ててる傷口が怪しく光ってる。どいつもこいつも協会の奴らはローブをまとってるから中身がどうなってるかわからないが、その力の流れは俺には見える。急激に支えてる奴から老子バンドゥンへと力が流れていっている。そして……

「ふむ、少し絞りすぎたようじゃな。だがこれも世界の為よ。おぬしの仇は儂がとってやろう」

 そういって、力強くこちらを向く老子バンドゥン。そこにはなくなったはずの腕がある。なんてことを……あの腕を回復するために、奴は仲間の命を吸い取ったみたいだ。
 そしてなぜか俺のせいになってるし。そんな責任転嫁はやめてほしい。彼を殺したのは俺ではなく老子バンドゥン自身だろう。

「もう油断はせぬ。我に調印を集めよ!!」
「「「はっ!!!」」」

 調印? なんだかわからないが、自分たちの仲間が理不尽に殺されたというのに、協会の奴等には動揺はないみたいだ。あんな奴よりも老子バンドゥンの存在の方が重要なのだろう。
 周囲に展開してる信者達は何やら詠唱をして、そのローブを輝かせてる。そしてひときわ大きく輝くとそのローブに何やら模様のような物が浮かんで、するとそれに向かって老子バンドゥンが手を伸ばす。もちろん物理的には届かない位置に彼らはいる。
 でもよく見ると、老子バンドゥンの手にも何やら模様があった。そして老子バンドゥンがつかんで引き抜くような動作をすると、輝きを失った信者たちはどんどんと下に落ちていった。この広場の所に落ちた奴はまだ助かる見込みはあるが、地面まで落ちていった奴らはさすがにその時点でもう……

 つまりは彼らは老子バンドゥンへと命を投げ出してるということか?

「ローワイヤさん、調印とは?」
「ごめんなさい、私にはわかりません」

 本当に協会は秘密しかないな。ある程度内部にいたであろうローワイヤさんにも知らないことがいっぱいだ。多分だけど、ペニーニャイアンなら知ってそうだが……彼女はまだ起こすことはできない。

「しょうがない」

 俺は周囲の信者たちを見る。すでに十人を切る数しか残ってないがあまり目の前で人が死ぬのは気持ちいい物じゃない。それに調印を集めるごとに老子バンドゥンの力は確かに高まってるしな。このまま見守ってる理由もない。

 なにせこの調印を壌土してる奴等は無防備にもほどがある。俺は残った奴らを数秒で昏倒させることにした。

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