運命という世界線を壊せ　214

　つつがなく始まった食事。最初はみんな緊張とかがあって、味を楽しむ余裕なんてなかったと思う。でもそれも最初だけだったみたいだ。ペニーニャイアンがマナーとか気にしなくていいとか言ってくれたのも大きかったと思う。
　だって荒くれ者達の賞金稼ぎの奴らがマナーなんて物を知ってるわけないからな。

　いくら目の前に超絶うまそうな飯があったとしても、それに集中できないのなら、美味しさを味わうことなんて出来ない。なんとか最初は自分の席に最初から用意されてた沢山の器具を使いこなそうとしてたが、はっきり言って見るに耐えないものだった。
　だって食事は落とすし、カンカンとぶつかり合って音はなるし……実際ペニーニャイアンはかなり頬をピクピクさせてた。ピローネはただ「おもしろーい」って言ってただけだったけどな。

　そして字ズン達のその行いが、不味いもので有るってみんなわかってたからこそ、更に緊張してしまって同じことをやってしまう……しまいには手に持ってた道具を落とすとか破ってしまったり……そうなると、もうパニックだ。だって自分から、言い出すなんてハードル高い。
　そもそもがそんな事自体が失礼だと思ってたみたいだし……脅かしすぎたか……とか思った。散々敵で、容赦なさそうなことをいってたからな。それに皆があのこの街の地上での事を見てるからな。
　そしてその黒幕がペニーニャイアン……目の間の女だとわかってるからなおさらだ。怒りを買うと、自分たちもあんな風にされる可能性を考えてしまうんだろう。

　そもそ    もがペニーニャイアンはこっちが何もしなくても、多分やれるだけの権力者だ。神託の巫女……しかもその中でも上位の権限を持ってるやつみたいだしな。

　きっとペニーニャイアンが黒と言えば、白だって黒に出来る程の権力をもってるんだと思う。この世界で生きてきた彼らにとっては、多分天上人の様な存在だろうし、緊張するなと言うほうが無理だったんだろう。
　俺がいくらいっても相手はどう受け取るかなんてわからないからな。俺に取っては所詮は、ここは別の世界だけど、彼らにとってはここは故郷の世界だし、行きられなくなるのは不味いんだろう。

「ふふ、ようやく緊張がとれてきたようですね」

　そういって、ペニーニャイアンは笑ってる。けど、その口元はセンスで隠してるし、さっきから彼女自身は何も手を付けてない。この食事会の前に、ローワイヤさんと会ったときは、お茶とかお菓子を頬張ってたと思うが……今は目の前に有るのに、一切手をつけてない。

　ちなみに今、目の前に有るのは魔法で創られた料理ではない。本物だ。魔法で作ったものなら、別段食べなくても無駄になんかならないだろう。消して、また出せばいいだけだ。でも、これはちゃんとした素材を使った料理なんだ。
　つまりはこのまま手をつけなかったら、あれは無駄になる。まあそんなのを気にするやつとは思ってないが……それよりもペニーニャイアンはかなりイライラしてそうだ。確かに目だけ見ればわらってる。
　でも、絶対に俺達と同じ場所で食事なんてしないというこっちに下りて来る気はないと……その態度が物語ってるんだ。