転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 157

 なんとかあの協会の女の人をやり過ごして、最後の部屋に来た。それは昨日の夜に戻って来たジゼロワン殿が連れてきた人が寝てる部屋だ。どうやら既に目は覚めてるらしい。ここの警備してる兵士が教えてくれた。まあ彼女はどうしてここに居るかもきっとわかってない。だからこそ不安だろう。目が覚めたら、こんな高級そうな場所にいる。それにジゼロワン殿から聞いた所、彼女は絶望って奴を味わった筈だ。早く、安心させてあげよう。
 俺はまずはノックをした。でも返事は帰ってこない。その代わりに、何かがドカッと落ちたような音がした。そしてガチャガチャという音が、ドアに耳をつけると聞こえてくる。多分逃げようとしてる。窓を開けてる音だろう。彼女の心理的にはその行動も理解できる。理解できるが、逃げられたらたまらない。まあここは一応三階……とか言いたいが、実は一階だ。なにせ上には地位的に高い人じゃないと部屋として与えられないのだ。だからここは一階で、窓の外に出ることは容易だ。

「入ります!」

 そう言って俺は扉を勢いよく開けた。そして飛び込んで来た部屋の中で、今まさに彼女は部屋からの脱出を試みてた。彼女はこっちを見て慌てたのか、窓の縁に支えとして乗っけてた手を滑らせた。このままだとどこかを強打してしまう。俺は脚に力を込めて、危ない彼女の体を一瞬で近付いて支えた。

「は? え?」

 部屋の前に居た兵士が自分の居る場所と、今正に一瞬で移動した俺の居場所を確認して目を点にしてる。まあそれはそうだろうな。流石に一瞬で移動出来る距離じゃない。この部屋は宮殿の中でもかなり狭い部類だが、それでも一般的なこの世界の家族で住んでる様な場所よりも広い。なにせ驚く事にこの世界の家族の部屋って驚く程に狭い。家族三人が横になれる……それが普通で普通に三人以上家族が居るのが普通でもある。
 なにせこの過酷な世界だ。人は生存本能が刺激されれば、沢山の子供を産む物だ。まあどんな生物にも言えることだと思うが……だからはっきり言ってこの世界の家族は窮屈な建物に詰め込まれてるのが普通だ。それにこの世界は住める範囲も狭い……こんな広々とした場所なんて普通に考えて偉い人の場所だと思うだろう。彼女が怯えて思わず逃げ出すのもわかる。けどまだ無茶するのはダメだし、それに外に出たらもっと混乱することになるだろう。
 なにせジゼロワン殿の話しによれば彼女は『ズンジャイサンバ』の街の者だ。俺は行ったことないからわからないが、きっとその違いには直ぐに気付く……のではないだろうか? そうなったらますます混乱する気は必死。なので行かせる訳にはいかない。せめて話を聞いて貰わないと。

「ごめん、でも君に危害を加えるつもりはないんだ。だから、話を聞いてくれないか? 君の為に」

 俺は彼女をグッと近づけてそういった。すると彼女はとても顔を赤くして小さく「…………はい」と言ってくれた。それにさっきまで逃げようとしてたとか信じられない位に大人しくなってくれた。よかった、物わかりの良い人で。流石に力を行使したくなんか無いからね。

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