転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 60

「これが都市核か」
「そうです、何かわかりますかの?」

 老人の姿に戻ったジャル爺さんがそんな事を言っている。あの後大変だった。限界を超えた力を出した軍と賞金稼ぎの面々は一斉に倒れたのだ。都市核があると言っても、それの使い方なんて分からないから、このジャルバジャルを復活……なんて出来ないし、しょうがないから夜に作った小さな城を作り出してそこに皆を運んだ。看病はどら息子が連れてきてた女性達に手伝って貰う。彼女達は案外役にたった。ただ体を提供するだけの女性達ではないようだ。それともこんな過酷な世界だからなのだろうか? 皆さんテキパキと看病してた。

「俺を非難するか勇者」
「それを言うなら、僕がお前に言うことだろう。お前は魔王で僕が勇者なんだ」

 そんな話しをしてる俺達の側には二つの死体がある。この戦いで犠牲になった二人だ。あの時、助けようと思えば俺達二人は助けられた。でもそれをしなかったんだ。だからこうやって犠牲が出た。俺が……勇者である自分が見捨てる事を選んだんだ。「すまない」ととしか言えない。助ける事が出来たのに……助けなかった。その後味の悪さは格別だ。でもまさか、魔王の奴も責任感じてるとは思わなかった。こいつのことだから「弱い奴が悪い」くらいだろうと勝手に思ってたよ。

「貴様はこの地の奴らに託してるんだろう? 我はそうじゃない。自分でやれるのならそれでいい」
「でも、今回は譲ったじゃないか」
「ふん、気まぐれだ。あのジジイを立ててやったに過ぎん」

 そんな事をいって、皆が砂獣を倒した時には喜んでたくせに。それに回復だって俺と共に施してた。魔王のくせに……認めた奴には甘いんだよね。

「どうするつもりだ? 我よりも貴様の方が回復系は得意だろう。神聖魔法を使うか?」
「それはもう使えない。それに元から死者を復活させるなんて出来ないしな」

 元の世界には魔法の体系がいくつかあった。その中の神聖魔法は勇者だけに与えられた特別な魔法だった。実際、この体になるまでは使えたんだが……この体になってからはなんかウンともスンとも言わなくなった。もしかしたら、俺は既に勇者の括りから外れてしまったのかも知れない。そもそもが勇者って何を持って勇者と行ってたのか……自分の場合は神託があったから元の世界では勇者と称えられてた。そして神聖魔法。
 これが発現してからはまさに真の勇者って事になった。実を言うと、勇者候補……ってのは幾人かいたんだ。でも神聖魔法が発現したのは自分だけ。そして聖剣だ。聖剣が認めたのも俺だけだった。でももしかしたら既に俺は勇者ではないのかも知れない。でも神聖魔法は使えなくなっても、実は聖剣は使えてる。基準が分からない。でも今はそんなことではない。この二人の事だ。

「このままにしとくなんて出来ないだろう。遺品を回収して埋めとくか……」
「動きだすんじゃないか?」
「燃やした方が良い?」

 俺達の世界では死者がアンデッド化するって現象は確かにあった。でもここでもそうなのかは知らない。そういえば、この前アズバインバカラで砂獣が暴れたときは死体は焼いてたような……

「いや、勝手にやるのはまずいか。保存して皆の判断に任せよう」
「そうだな」

 俺達は死体に魔法を掛けておくことにした。とりあえず戦いは終わって都市核も得た。焦る必要なんて無いんだ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品