転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

輪廻の輪の外へ 55

 結論から言うと、翻訳機能は意味を成さなかった。どうやら奴らのポニポニ語はサンプルが少なすぎて翻訳なんて出来ないみたいだ。まあそれはしょうが無い。なにせ未知の言語だしね。異世界に行っても言葉がすんなり理解できる……なんてのは都合の良い物語だけだ。

(まあけど、私って魔王と勇者の言葉はちゃんとわかるんだよね)

 つまりは理解してるっことである。ごめんね、都合良くて。けど都合だけじゃないのかもしれない。なにせ私はいつからあそこに居たのかわからないである。考えて見ると、私もG-01もあの場に降って沸いた訳じゃない。私達は岩? みたいな中から出てきたのだ。

 まあ、岩と言うか像だったらしいけどね。魔王に聞いたら、知ってる限り遙か昔からあの像はあったらしい。その中にずっとG-01と私が居たとすると……その年月分の蓄積で、二人の世界の言語をマスターしてたのかもしれない。年齢……それは乙女には聞いちゃいけないことだよ。

 けど翻訳が出来なかった事は仕方ないにしても、ここにきた緑色のそいつが来た時のAIの反応はちょっと意外だった。

『排除します』

 だったからね。そしてどこからともなく、何やら機械のアームがガチャガチャと動いて赤い照準をその存在に向けてたんだ。あれにはビックリだよ。てかそんな機能あったんだねって感じ。私は慌てて止めたよ。

「ちょちょ! なんでそうなるわけ? 敵意は……わかんないけどさ。ヤバいでしょ」

 こいつを攻撃したら、絶対に他の奴ら黙ってないよ。それがわからないAIではないはずだ。けどAIは厳しい声でこう言った。

『それでもここには何人も入れない筈です。なのに奴は来た。危険です』
「それって私の為って事?」
『貴女は自身の体の事を何もわかってませんから。貴女を世界に汚染させる訳にはいきません』

 汚染? この世界はかなり綺麗だと思うけど……確かに深淵は汚そうだったが、地上は緑溢れる場所だ。確かに生物は居ないみたいだけどね。そう考えると確かに汚染されててもおかしくはないかもしれない。普通緑があれば、生き物くらいいるでしょ。

 まあそれも別の世界の常識だからね。当てにはできないけど。こういう世界……だと言われればそれまでだ。この世界はこの緑色の仮面の楽園なのかもしれない。

「でも止めて。攻撃はダメ」
『ですが』
「やめて」

 私は強い意志でそう言うとAIは引いてくれた。私の事を思ってのことだって事はよくわかった。けど、攻撃させる訳にはいかない。

「ぽにー」

 そう言って顔を……というかこの存在は動と頭の境目があまりわからない。寸胴してるからね。取り合えず顔を傾けてそう言ってるそいつにどう返せば良いか考える。

(いや、もうゴチャゴチャ考えるのは止めよう)

 私はそう結論づけた。こっちは奴らの言葉は理解できない。けど、もしかしたら向こうはこっちの言葉を理解してるかもしれないからね。

「私達は敵じゃないよ。あなたたちに、この世界に危害を加える事はしない」

 私は目の前のそいつにそう訴えかけた。
 

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