転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

輪廻の輪の外へ 35

『覗くな……』
「え?」

 いきなり辺りが真っ暗になる。巻き戻しの映像のように線が走るとかなるかと思ったが、そんなことすっ飛ばして、過去視自体が止まったみたいに周囲が真っ暗になった。それに聞こえた声はいくつもの声が重なったように聞こえてた。

 なに? 怖いんですけど? いきなりのホラー展開か? 

(落ち着け私、私はアビスの力に合わせられてる。だから今のは私にいったんじゃきっとない。そう、これは過去視なんだから今のはきっと過去の魔王にいったはずだ。誰もが自分に興味津々なんて、そんなの自意識過剰ってものだよ)
『覗くな……覗くな……覗くな!!』
「きゃ!? な……に?」

 てかこれってやっぱり私にいってない? そんなことある? だって……これは魔王の過去の筈じゃないの? それなのに……なんか私に向かって生ぬるい風が吹いている。それはどんどん強くなって、踏ん張ってないと、飛ばされそうだ。てか停止したよね? 巻き戻ししたよね? なんで私に向かって風が吹いてくるのよ! 

「そんなにみせたくないっての!? それなら意地でも見てやるわよ!」

 私の意地にも火がついちゃったよ。こんな事するから、きっと相当な秘密があるんでしょう。その魔王の秘密、私が暴いてやる! 

「づう……ううう」

 私は一生懸命踏ん張る。けど……どうやら私の体は相当に貧弱みたいだ。まあもやしの様に細いしね。病的……というまでじゃないと思うが、私の線は相当細い。

「うう……このままじゃ飛ばされる」

 きっと魔王はこの過去視の中から私は追い出そうとしてるんだろう。石になってるのに、そこまでしてってなると気になってしょうがないじゃん。でもこのままじゃ、強風に飛ばされてしまう。

「なんで……こんな場所で風なんて……ん? 場所……そう……だ」

 私はここが現実でない事を思い出した。つまりこれ幻覚みたいな物じゃないの? 本当に風が吹いてる訳じゃなく、私にそういう風に認識させてるに過ぎない代物だ。それを私が風が吹いてるって認めてしまってるから、風が吹いてるって事が成立してしまってる……んだと思う。

「つまり……本当は風なんて起きてない!!」

 私は力一杯そう宣言した。

「ふぎゃああああああああああ!?」

 更に一層強まった風に遂に私はゴロゴロと転がるしかなくなった。一体何故に!? 私の推論は正しい筈なのに!! 目を回してると、どんどんと声は小さくなっていく。そしていつの間にか私は現実へと戻っていた。

「うう~、頭がグワングワンする……」

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