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想像力で空を飛ぶ

ふじゆう

復讐の時。取り戻した青春。

 夏休みも早くも一週間が経過したころ、僕は偶然ある人物達に遭遇した。不愉快であったが、違和感を覚え後をつけることにした。僕を貶めている五人組の内の二人だ。電車で五つの駅を超えた隣町の更に奥だ。違和感の正体は、すぐに理解できた。馬鹿二号と四号が、手をつないで歩いていたのだ。確か四号は、一号と付き合っているはずではなかったか。二人は、そのまま何の躊躇いもなく、ラブホテルへと入っていった。僕は二人のすぐ後ろをついていき、ことの一部始終を観察した。初めて見る光景に、背筋と下半身がゾクゾクした。何度か行為を繰り返し、二人は部屋を出た。部屋を出る直後の二人の会話を聞いて、僕はある考えが浮かんだ。
「絶対に内緒だからね。あいつにばれたら殺されるよ」
「言う訳ねえじゃん。だから、またここに来ようぜ」
 その後、四号について回り、次の機会を伺った。その日は、意外にもすぐやってきた。当日、僕は生身の体のまま少し早くに隣町のラブホテルへ到着し、入り口が見える木陰に身を潜めた。何も知らずにやってきた二人が、ラブホテルに入る姿をスマホの動画機能で撮影した。念の為出てくる姿も押さえた。手を口に当てて、必死で笑いを我慢する。僕の情けない姿を動画で、撮影されていた。その意趣返しだ。僕は奴等の弱みを握ることに、残りの夏休みを全て費やした。この能力があると、人の弱みを握ることが、あまりにも容易くて少し拍子抜けした。弱みのない人間など存在しないとさえ思えてくる。当然だが、一人でいる人間は、あまりにも無防備だと痛感した。特に弱みになる部分は、性的な行動と性癖だということが分かった。多くの人間が、陰でコソコソと、悪さをしている現実を思い知った。
「ただいま」
 僕が情報収集を終え帰宅すると、パタパタとスリッパを鳴らし、母親が満面の笑みで出迎えた。
「おかえりなさい! 今日はあなたの好きなトンカツよ」
「はあ? 一昨日もそうだったよね?」
「ご、ごめんなさい。今すぐ作り直すわね。何が食べたいの?」
 母親は、動揺を隠そうともせず、僕のご機嫌を伺った。僕はわざとらしく大きく溜息を吐き、『別にトンカツでいい』と、告げた。狼狽える母親に、笑いが込み上げてきた。僕はそんな母親を残し、自室へと向かった。母親の変貌ぶりに、枕に顔を埋めて爆笑した。
 母親は、父親ではない男と不倫をしていた。その証拠を母親に突きつけると、顔面蒼白で崩れ落ちた。泣きながら土下座をし、父親には黙っていて欲しいと懇願した。母親が言うには、専業主婦の母親は、父親に捨てられると生きていけないそうだ。今まで、僕を虐げてきた母親が、あまりにも小さく惨めに見えた。そこから、僕には一切逆らうことをせず、僕の一挙手一投足に怯えて暮らしている。
 効果は敵面だ。夏休みが終わるのが、楽しみで仕方がない。この夏休み中に、三号以外と担任の弱みを握った。一号は、学校以外の悪い連中とつるみ、法に触れる行動のオンパレードだ。この事実を突きつければ、退学では済まない。間違いなく少年院行きだ。五号と担任は、援助交際をしていた。この二人が行ってくれていれば、手間が省けたのに、面倒な奴らだ。三号の弱みは、掴んでいない。弱みがなかった訳ではないだろう。必要ないと判断したのだ。三号以外の人間が、僕から手を引けば、自ずと離れるからだ。フンは金魚にくっついていく。
 待ちに待った二学期の初日、想像通り一号が怒り心頭で、僕の元へとやってきた。夏休み中、彼からの連絡を全て無視していたからだ。休み時間になり、僕の首根っこを掴んだ一号に、トイレへと引きずられた。そこで、鬱憤を爆発させるべく、僕の体を痛めつけた。二号と三号が加わり、二人の女は笑っていた。しばらく、僕を痛めつけて奴らは満足気に、トイレから出て行った。僕は血を拭いながら、笑みを浮かべた。ここから、作戦開始だ。まずは、一号にラインを送った。昼休みにタイマンを張ることを告げる。その後、仲間がいないと何もできないのか? と、煽り文を送付。僕を侮り見下している一号は、必ず一人でくると確信していた。
 案の定、一号は怒気を孕んだ顔で、一人でやってきた。一号は、僕が話すのをまたず、いきなり殴りかかってきた。左頬に激痛が走った。そして、僕の胸倉を掴み上げ、睨んできた。僕はすかさず、一号の悪事を話し、証拠の写真を見せつけた。ついでに、このスマホを破壊してもデータは別の場所に保存していることも告げた。これは、一種の賭けだった。後先考える知性を持ち合わせていない一号が、逆上して僕に襲い掛かってくるかもしれない。だが、その考えは徒労に終わった。一号は、あっさりと、怖気づいたのだ。僕への無関心無干渉を絶対条件にし、秘密は黙っておく約束をした。これは、あくまでも口約束だが、一号は従いざるを得ない。本当は奪われた金品の回収も行いたかったが、この辺が落としどころだ。
 その後、二号・四号・五号への脅迫は、簡単であった。理由は言わなかったまでも、一号が僕から手を引いたのは、知っていたからだ。僕への暴力を止めて、はいお終いでは、僕の気が済まなかった。奴等にも怯えてもらわなければ。何よりも、女子二人には、別の目的もあった。女子に証拠を見せると、顔面蒼白になり、『何でもするから、内緒にして下さい』と、訴えてきた。それは、願ったり叶ったりであった。なにせ僕は、彼女達の行為を間近で、見ていたのだから。そして、最後に担任を強請った。彼は逮捕され職を失うのだから、口止め料は弾んでもらうことにした。止めておいた金品回収を担任に背負ってもらう。監督不行き届きというものだ。
 僕を苦しめた連中への制裁が完了した。そして、僕は支配者となったのだ。
 残り僅かな中学生活を満喫したい。あんなにも苦しい思いをしたのだから、これくらいのことは許されるだろう。自分の身を自分の能力で守ったに過ぎない。誰も助けてくれなかったのだから。
 二学期から成績も爆発的に上がった。テストの点数は、常に上位だ。理由は簡単だ。勉強をする必要もない。担任からの内申書も申し分ないだろう。希望校への進学は、手堅いはずだ。。
 秋風が吹き、冬の足音が近づいてきた今日この頃。中学三年の前半の暗黒期。その鬱憤を晴らすべく、青春を取り戻すべく、後半戦は好き放題に過ごした。全ての欲求を、欲望を、身勝手に自由気ままに解消した。この世界の支配者であり、王様であり、神様にでもなった気になっていた。振る舞いは、まさにそれだ。
 この生活が、生涯続くであろう。なんて、幸せな人生なのだ。

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