裏切り者の国

おかゆ

《一手目》

 愛煙家達の蔓延る場所は大抵治安が悪い。
そして、ここはそもそも人間としての質が低い者ばかりが集結していた。
 殺し屋に盗人、情報屋に詐欺師。
 見渡す限り、この世の悪の根幹を司るものしか居ない。
 そんな場所で行われる娯楽といえば勿論『ギャンブル』だ。
「ヒット」
そんな悪の概念が服を来て歩いている様な者達の中、慣れた手つきでトランプを触っているのは毛も生えていない様な少年だった。
此処で行われているのは『ブラックジャック』合計した数字がより21に近い方が勝利となるなんとも簡単なゲームだ。だが、ディーラーから配られる唯の紙切れで何十万という金と知識が動く、そんなゲームでもある。
それは少年も例外では無かった。
「あ、あとダブルダウンで」
 悪者というのは殊、他人を欺くことに関しては逸脱して秀でている。ただでさえ疑り深い人間という動物を剰え『騙す』のだ。虚、容易では無いことは周知の事実だ。そんな嘘の上に嘘を重ねて生きていた者達が行うゲーム。
 ——無論、純粋な運だけで進んでいるわけは無い。
そんな——凡ゆる『イカサマ』を使っている者達の眼が凝視するのは隣に居る詐欺師では無く———少年の手だ。
 ディーラーが恐る恐る引いた手から少年に渡されたカードの数字は『6』。
少年の手は『8』に『7』。
「ごめん皆んな。また俺が勝っちまった」
そう——騙し合いのエキスパートが本気で騙し合っているゲーム。
本来——『勝つ事が不可能』なゲームで少年は十回中十回全てのゲームに置いて勝ち、全員を手玉に取っていた。
「まじで何が起きてるか解らん......」
「おめぇさてはパールとグルだろ?」
パールとは今ディーラーをやっている男の名だ。
「あんた、さっきからそれで三人もディーラー変えてるじゃない」
「そこの三人全員とグルだったんだよ!!なぁ!?そうだろ!?!?そうじゃねーと説明つかねぇーよ!!!」
さっきから負け込んでいるブラークは眼を赤くして吠えた。それとは対照的に少年はにへらと笑って首を横に振った。
「いや、違う。その三人とはグルじゃないし、そもそも他人と手を組んだら自分の持ち分が減るじゃん」
そう...当たりだと言わんばかりに少年は勝ち分のコインを手の上で転がした。

 ︎ ︎ ︎

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く