現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

79話 不死者の王と配下3

「大丈夫だからな!すぐに医者の所へ連れてってやる!」

 真情は人一人を背負いながら、戦場を駆け抜けた。
 ここら辺のモンスターは、自分より強い化け物が跋扈しており、戦闘になれば一溜りもない。

 だから、とある人に手伝ってもらっている。

「声がデカいです……てか、あんまり揺らさないでください」
「わりぃ!」
「だから、デカいですって……」

 俺だ。
 心臓を貫かれて尚、生きている自分に対して心底不思議に思うが、この生命力の高さは『魔人』特有のものだと納得して、思考を停止させた。

 だって、こんな死にそうな時に余計なこと考えるのはしんどいし。
 それに、生きてるんだから気にするほどの事じゃないだろ。

「『黒沼』」

 無意味なことに思考を回しながらも、しっかり仕事はする。
 向かってきたモンスターの足元に、闇の沼地を作り出し、足止めに使う。
 この魔法は格上相手には、そこそこ有効だ。
 だから、今では重宝している。

 最初は、【暴食の右腕】で喰っちまおうか迷ったが、今の出力では無理だろう。
 もう少しレベルが上がったら出来るはずだ。
 なんとなく分かる。

 タンタロス並の化け物はいないみたいだし、今のうちに職業を選んじまうか。
 いつ襲われるか分からないからな。
 

職業ジョブの選択をしてください
 選択可能な派生職業
 ・最終派生職業ラスト・ジョブ『妖刀士』
 以上が選択可能な職業ジョブです』

 ……は?
 なんで、最終派生職業ラスト・ジョブが出てんだ。
 これって、最低レベルが100だったろ。
 ソフィアさんが言ってたぞ。
 てか、さっき表示されてた画面と違うし……。

 ……まぁ、いっか。

 胸の痛みで頭が回らず、『妖刀士』の項目をタッチした。

最終派生職業ラスト・ジョブ『妖刀士』を取得しました』
『スキル【刀術】を取得しました』
『【刀術】は既存の同一スキルに統合されます』

『スキル【抜刀術】を取得しました』
『【抜刀術】は既存の同一スキルに統合されます』
『スキル【抜刀術】のレベルが5から6に上がりました』

『スキル【斬撃】を取得しました』
『【斬撃】は既存の同一スキルに統合されます』

『スキル【超加速】を取得しました』
『【超加速】は既存の同一スキルに統合されます』
『スキル【超加速】のレベルが5から6に上がりました』

『スキル【身体超強化】を取得しました』
『スキル【身体超強化】は既存の同一スキルに統合されます』
『スキル【身体超強化】のレベルが6から7に上がりました』

『スキル【俊敏超強化】を取得しました』
『スキル【俊敏超強化】は既存の同一スキルに統合されます』
『スキル【俊敏超強化】のレベルが6から7に上がりました』

『スキル【幻影歩法】を取得しました』

『固有スキル【妖刀召喚】を取得しました』

『残りの経験値を獲得します』
『レベルが60から63に上がりました』

 職業変更とレベルアップの処理が終わると、少しばかり身体が軽くなった。
 さらに、新しい固有スキルを取得した。
 しかし、それ以外に変わったところは無い。

 最終派生職業ラスト・ジョブなんて大層なものを手に入れても、自分自身が変わったりすることは無いということだろう。

 暫く、真情の背に揺られながら、モンスターを足止めしていると、タンタロス並……いや、それに近しい強力な気配を感じた。

「……止まってください」
「あぁ?なんでだ?」

 真情は、突然の発言に戸惑う。
 しかし、そんなことなどお構い無しに、俺は言った。

「いいから止まって下さい!」
「だから何でだ!?」

 説明してる暇なんてないんだよ……!

 そんなことを思いながら、真情の背中で暴れ出す。

「おっ!?ちょ!暴れんじゃねぇ!」
「だから、止まってくださいって!せめて、俺を下ろしっ……」

 ……来たか。

「ひひひっ……2人とも楽しそうだなぁ?俺も混ぜてくれや」

 音一つなく現れたのは、骨のように痩せ細った男だった。
 髪はボサボサしており、両目のクマが酷い。

 しかし、そんな見た目に反して、右手には血のように赤い槍を持っており、身体から溢れ出る魔力は、人のものではなかった。

「そいじゃ、暴食の小僧はいただくぜ」
「テメェ……なにもんだ?」
「ひひひっ……そんな怖い顔すんじゃねぇよ」

 気づいたら、男が真横に移動していた。
 今の俺ですら、全く気配を感じないのは予想外だ。

「真情さん……下ろしてください」
「……分かった」

 逃げることは不可能だと判断し、真情は俺を地面に下ろした。

「わざわざ待っててくれたのか?優しいじゃねぇの」

 やせ細った男の顔を見上げて聞く。
 すると、大きな充血した瞳だけを向け、邪悪な笑みを浮かべながら言った。

「俺はなぁ……お前みたいなガキを真正面から、死ぬ寸前まで甚振るのが好きなんだよ。だから、すぐにくたばんじゃねぇぞ」
「……やれるもんならやってみろ」



「がはっ!?」

 なっ……何が起こった!?

 魔力を練った瞬間、気づけば壁にめり込んでいた。
 少しも動きの気配を捉えることができず、反撃の余地すらなかった。

 真情は、さらに酷い。
 左腕が吹き飛んでいき、右腕は今すぐにでも千切れそうだった。
 さらに、顔面の右半分は潰れてしまっている。

「ひひひっ……テメェの意識が飛ぶまで遊んでやる……俺を楽しませろよな!?」

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