現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

74話 避難所 防衛戦10

「ウォォォッ!!」

 一振で何体ものアンデットを薙ぎ払い、原型を留めない程までに敵をミンチにしている男がいた。
 それは……

「オラァァァッ!!この程度か!?あぁ!?」

 大剣を肩に担ぎ、手招きてしている真情だ。
 余裕そうな表情を浮かべているだけあって、危なげなくアンデットを処理していた。

 戦いは荒々しく、洗礼された戦闘スタイルとは言い難いが、無駄な動きは少ない。

「チッ……雑魚しかいねぇじゃねぇかよ」

 ステータス1000越えも居るって聞いてたが、今回は来てねぇのか。
 まぁ、部下たちの危険が少なくなるのはいい事だけどな。

 しばらく、高笑いしながら敵を倒していると、背筋が凍るような感覚に襲われた。

「……お?いるじゃねぇか。強そうなやつ」

 【鑑定】は持ってねぇから細けぇ能力値は分かんらんが、俺の勘が言ってやがる。
 あいつは強ぇ!

「ガハハハ!少しは骨のあるやつだと嬉しいぜ!楽しませろよ?」

 それは、漆黒の鎧に覆われたモンスターだった。

 予め、敵の情報を調べていたから正体は分かっている。
 名はリビングメイルというアンデットモンスター。
 このモンスターは、装備する鎧によって強さが変わる珍しい特性を持ったモンスターだ。

 鎧の隙間からは、禍々しい魔力が溢れ出しており、周囲の雑草を枯らしていることから、近づくだけで危険な存在であることが察せるだろう。

「行くぜ!」

 地面が没落するほど強く蹴り、一気に距離を縮めた。

 敵の武器も大剣。
 同じ武器相手なら、俄然やる気が出る。

「オラァァァ!!」

 今回の相手は、他の奴らと格が違う。
 初っ端から全力で行くぜ!

 両手で大剣を握りしめ、地面を叩き割る勢いで振り下ろした。
 このまま直撃すれば、一撃で倒せるかもしれない。

 戦闘狂である俺にとっては嬉しくないがな。

「ゴォォォ」

 リビングメイルは大剣を横に構え、真正面から受け止めた。

 パワー面では、こちらが劣っている。
 力比べでは勝てねぇな。

「……これなら」

 腰にかけておいた手榴弾を取り、バックステップで距離を取りながら、リビングメイルに投げた。

「……無傷ではすまねぇよなぁ?」

 手榴弾がリビングメイルに当たった瞬間、大きな音を立てながら爆発した。
 爆発の風圧だけで、こちらが吹き飛ばされそうである。

 これは、ただの手榴弾ではない。
 ソフィアが作成した手榴弾なのだ。
 通常のものとは桁違いの威力を持っている。
 本人はやりすぎたと反省中。(嘘)

「オラァァァアア!!」

 再び距離を縮め、大剣を横薙ぎに振った。
 反撃の隙を与えないためだ。

「ゴォォォオオ!!」

 リビングメイルも負けじと、素手で抵抗を試みた。
 爆発の衝撃で武器を手放してしまったのだろう。

「無駄だァァ!!」

 しかし、そんなことは関係ない。
 ただ圧倒的な力で捻り潰すのみ。

 横薙ぎに振った大剣は、リビングメイルを真っ二つに叩き斬り、一撃で屠ることに成功したのだった。

『リビングメイルの討伐を確認』
『レベルが46から47に上がりました』

「おっし!上がった」

 ソラは確かレベル50越えだったよな。
 あと少しで追いつけそうだぜ。

「あとは適当に、敵の数を減らすか」

 少しでも敵を減らして、部下たちの負担を軽くすっか。

 自他ともに認める戦闘狂ではあるが、しっかり仕事はする。
 それが俺、武田 真情だ。



「三郎……強すぎるお」

 思わず、そんな呟きをしてしまった。
 圧倒的な力を見せつけられたからだ。

 得物は叩けば折れそうなほど薄い刀。
 頼りなさそうな見た目はしているが、三郎の戦闘を見れば、そうも言ってられない。
 それほど強かった。

 持ち前の素早さで敵の懐へ入り込み、瞬きしている間に数体のモンスターを斬り伏せてしまっていたのだ。
 一体目が倒れたと思ったら、二体目も倒されていた。
 そんな光景が永遠と繰り返された。

「足りない……足りないでござる」
「恥ずかしいから止めるお。ソフィアさんみたいにさんみたいに厨二病になったらダメだお」

 思わず、ツッコミを入れてしまったお。
 いつもなら、僕はボケ役に回るはずだったのに……三郎のせいだお。

「この新しい愛刀……霧雨……!ソフィア嬢に作って貰った武器は最高でござるぅ。一生戦っていたいほど病みつきになる斬れ味でござるぞ!」
「……それはそれで使いたくないお」
「兄者に使わせるわけなかろう。触ったら斬るでござる」
「物騒だお!?」

 兄に対して、なんてことを言うんだお。
 しかも、マジな顔して言うなんて……少しチビったお。

「む?あれは……兄者、【超鑑定】でござる」
「……分かったお」

 三郎が見つけたのは、巨大な人型スケルトンだった。
 歩く度に地面を揺らし、仲間でさえも踏み潰してしまっている。

「【超鑑定】だお」

名前なし
種族:『ジャイアント・スケルトン』
魔力:1200
腕力:1700
防御:1700
俊敏:900
《スキル》
【剛腕Lv8】【鉄壁Lv8】【威圧Lv10】

 ……僕は逃げるお。

「三郎、あいつはステータス1000越えの化け物だお。だから、任せたお」
「うむ。拙者が斬り捨てるでござる」

 三郎は腰を深く下ろし、抜刀の構えを取った。
 目の前の敵に、全ての集中力を割いているような表情だ。

「カタッ……カタカタカタ!!」

 ジャイアント・スケルトンは、三郎の存在に気づくと、大きな音を立てながら、その巨大な拳を振り下ろした。

「斬り捨て御免!」

 三郎は、いつ武士になったお?

 そんな疑問を抱いている間に、ジャイアント・スケルトンは真っ二つに斬り裂かれたのだった。

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