現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

56話 ゴブリンキング戦3

「まずは目の前の雑魚共からだな!」

 俺の刀を見たゴブリン達は、イヴの存在を微かに感じ取り、気圧されていた。
 しかし知性よりも本能が勝っているモンスターが、相手の力量を判断することなど不可能なので、殺意の赴くままに向かってくる。

「闇よ纏え」

 イメージしやすいように呪文を唱え、漆黒の刀に闇の魔力を纏わせた。
 そう、【闇魔法】である。

 魔法は殆ど練習していなかったのだが、『魔人』という種族の特性で簡単に扱うことが出来た。
 詠唱などしなくとも魔法は扱えるのだが、した方が威力が上がってコントロールが効くのだ。

 他にも、モンスターのように回復能力が高かったり、魔力感知に優れていたりなどもするが、イヴ曰く"本来の魔人はこんなものでは無い"らしい。

「はぁっ!」

 刀を横に一閃し、闇の斬撃を放って飛びかかってくるゴブリンを真っ二つに斬り裂いた。

『ゴブリンの討伐を確認』
『ゴブリンの討伐を確認』
『ボブゴブリンの討伐を確認』
『ゴブリンの討伐を確認』
 .......
 .......

 討伐完了のファンファーレが頭の中で鳴り続けるが、俺は目の前の敵に集中し、一心不乱に刀を振るった。

「喰らえ」

 もちろん倒したゴブリンの"後処理"も忘れない。
 ゴブリンの死体は【暴食の右腕】で全て喰らい尽くし、スキル【吸血】で経験値に変えた。

『一定の熟練度まで達しました』
『スキル【吸血】のレベルが3から4に上がりました』

 十数匹、ゴブリンを倒した程度じゃ、レベルは上がんないか.......何体かホブも混ざってたけど、あんまり変わんねぇな。
 余裕もあるし、ジェネラル行ってみよう。
 一応、スキルレベルは上がったから良しとしよう。

 俺は雄叫びを上げながら接近してくるゴブリンジェネラルに視線を固定し、【暴食の右腕】をいつでも発動させられるように準備する。

「鉄塊放出!」

 【暴食の右腕】から吐き出す物をイメージしやすくする為に、言葉に出して宣言した。
 すると、俺の右腕が流動体へと変化し、渦を巻いて鉄の塊を勢いよく放った。

「ガァァァァ!!」

 しかし、ゴブリンジェネラルは拳ひとつで後方へ弾き飛ばし、そのままの勢いで突進してきた。

『ゴブリンの討伐を確認』
『ボブゴブリンの討伐を確認』
『ボブゴブリンの討伐を確認』
 .......
 .......

 牽制のつもりで放ったんだけど、経験値もおまけとして手に入ったな。
 ラッキー。

 どうやら、後方で控えていたゴブリンに鉄塊が被弾し、圧殺されてしまったようだ。

「まずは1匹目だ」

 俺はスキル【超加速】を使って、一気にゴブリンジェネラルの懐へ潜った。
 そして刀を横に一閃。

「グォォ!?」

 身長差のせいで胴体を斬る事は出来なかったが、代わりに両足を奪えた。
 これで相手の機動力は失われる。

「喰らえ!」

 もはや両足を失ったゴブリンジェネラルには抵抗など不可能。
 そのまま【暴食の右腕】の餌食となり、経験値へと変換された。

『ゴブリンジェネラルの討伐を確認』
『レベルが42から43に上がりました』

 よしっ!
 1つだけどレベルが上がった。

 一瞬で倒せる相手ではあるけど、装備がいいから楽なだけであって、ステータス面では少し劣っている。
 だから、それなりの経験値を得ることが出来るのだ。

「次は.......っ!?」

 次の獲物を見定めるために周囲を見渡すと、頭上から大量の火球や水球など、様々な属性の魔法攻撃が放たれてきた。

「んなもんっ!」

 イヴ直々のスパーリングと比べれば温い。

「温すぎて.......っ!?欠伸が出そうっ.......だ!」

 .......本当は、そんな余裕ないけど。
 一度言ってみたかったセリフなんだよね。
 攻撃を避けながらだとセリフが途切れ途切れになるな。

 俺は縦横無尽に駆け回り、かわせない魔法は刀で斬り払う。
 ゴブリン魔法使いの魔法に当たらないように、他のゴブリン達は巻き込まれない程度の距離を取って離れている。

「闇よ.......纏え」

 闇魔法を刀に纏い、最初に放ったとき以上の飛ぶ斬撃を放った。

「ギャッッ!?」

 ゴブリン魔法使いは、突然現れた漆黒の飛ぶ斬撃を見て驚きの声を上げる。
 ゴブリン魔法使い達は急いで魔力障壁を張り、防御をしようとするが呆気なく破られた。

 1発目の2倍くらい魔力を込めたから、ゴブリン程度じゃ止められねぇよ。
 それに相手を見れば、大体の魔力量を図ることは出来る。
 何故か分からないけど気付いたら出来るようになってた。

「次は.......近くにいるやつから斬るか」

 真っ二つに斬られたゴブリン魔法使いを確認した後、次の獲物を狙いに行った。

『ゴブリンメイジの討伐を確認』
『ゴブリンメイジの討伐を確認』
『ゴブリンメイジの討伐を確認』
『ゴブリンメイジの討伐を確認』
 .......

 まじでうるせぇな.......この声ってオフに出来ないの?

『レベルが43から44に上がりました』

 あ、レベル上がった。
 あのゴブリンメイジって奴らは意外に経験値が多いのかもな。
 魔法使いだからなのか防御も低いみたいし、1発殴れば倒せる気がするけど。
 まぁ.......そう簡単に近づかせてくれねぇよな。
 クソめんどくせぇ。

 心の中で悪態をつきながらも、視線は敵へと固定させていた。

「.......前に出すぎたっぽいな。強そうなのが出てきたし」

 周囲には通常のゴブリンとは、比べ物にならないくらい程の強靭な肉体を持っているゴブリン達がいた。
 どのゴブリンも凶悪な顔をしており、気色悪い笑みを浮かべている。
 しかもボディービルダー顔負けの肉体だ。

「そんで、お前がゴブリンキングか?」

 他のゴブリンとは比べ物にならない程の圧を放っている巨大なゴブリンがいた。
 そのゴブリンに人の言葉を話せるだけの知能があるのは思っていないが、何となく聞いてみた。
 すると、予想外な反応が帰ってくる。

『然り。余こそがゴブリンの王。ゴブリンキングである』

 岩の玉座に座っている巨人のようなゴブリンは、俺を見据えて質問の答えを返したのだった。

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