現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

46話 レッドオーガ1

 翌朝、俺はイヴに鍛えてもらっていた。
 【暴食の右腕】が暴走した影響で右腕の粘液体が右胸から顎下辺りまで侵食し、全ステータスが100も上昇した。
 だから、次の戦闘に備えての調整も含まれた訓練なのだ。

「.......やっぱり、お前ってバケモンだわ」
「よし、もう一度殺るか」

 聞こえないように言ったつもりだったが、普通に聞こえていたようだ。
 つか、なんか言い方が物騒な気がするのだが.......ただの訓練だよな?

 これ以上やったら死ぬ。
 ここで生き残るために俺がやるべきことは一つだ。

「すんませんでしたぁぁ!なんでも言うことを聞くので許してください!」

 土下座がオリンピック競技にあったら、間違いなく俺が優勝だろう。
 それ程、優雅かつ美しい土下座をした自信がある。

「くっくっく.......今、何でもと言ったな?」
「は、はい」

 どんな恐ろしい命令をされるか身構えながらブルブルと震える。

「ふむ.......あれを狩ってきてもらおうか。心して聞け」
「お、おう!何でも来いや!男に二言はない!」

 少し.......いや、かなりビビっているが、イヴは危険な頼みはしないはずだ。
 そう信じている。

「この研究施設の奥にはオーガの上位種がウヨウヨしておる」
「うん。そうだね」

 俺達が寝室兼研究室として使っている場所は出口から近い場所にある。
 奥に進めば進むほどオーガ達が強くなり、数が多くなるのだ。
 だから、オーガは殆どいないし、今の俺にとっては大して強くない。
 今の俺なら三匹くらいなら同時に相手できる。

「その奥少し手前には血のように真っ赤なオーガがいるはずだ。それを倒してこい」
「まぁ、それは良いんだけどさ.......今まで出会ったオーガは全部赤いよ?」
「バカもん!普通のオーガと一緒にするでない!」

 俺はイヴの馬鹿力で頭を叩かれ、地面に頭を埋め込んだ。
 前々から思っていなのだが、力加減が出来ないのではなかろうか?

「我が言っているのはレッドオーガだ!」
「そうなんすか.......そんで何が違うの?」

 俺は地面から頭を引き抜き、普通のオーガとの違いを聞いた。
 もはや叩き付けられるくらいでは動じない。
 さっきの訓練で四肢を引きちぎられたばかりだしな。
 それに、ステータスが上がったお陰で更に強くなった。
 今ならソフィアといい勝負が出来るんじゃないだろうか。

「よくぞ聞いてくれた!」
「あ、聞いて欲しかったのね」
「レッドオーガは我が認めるほど美味なのだ!」

 曰く、全身筋肉で出来たような生き物だから肉は硬くて食えたものではないそうだが、頭蓋骨を割り中に酒を注いで食べるのが美味しいらしい。
 カニ味噌みたいだな.......いや、オーガの脳みそと一緒にしたら失礼か。

「.......そんで、取り敢えずレッドオーガとやらを倒して持って変えればいいんだな?」
「うむ。かなり苦戦するだろうがレッドオーガの頭蓋骨を確保するまで帰ってくるなよ」
「え?」

 なんと.......俺は頭蓋骨を確保するまで帰らせないと言われた直後、イヴに部屋から締め出されてしまった。
 イヴが苦戦すると宣言するくらいだがら、相当な化け物だろうな。

「もう.......ちょっといきなり過ぎない?」
「ソフィアさん.......!」

 扉の向こうからソフィアの声が聞こえたあと、中から顔を出してきた。
 いつもアホ発言ばかりする自称天才科学者が女神様に見える。

「ついでに僕が遊び半分で作った兵器も持って来て!」
「.......おいコラ。そんくらいテメェが自分で持ってこいや」

 ムカついて思わず、ソフィアの胸ぐらを掴んで外に投げ飛ばしてしまったじゃないか。
 一つ言っておくが謝らないからな。
 絶対に謝らないぞ。

「痛てぇ.......もう!いきなり何をするのさ!」
「あ"ぁ?人任せにしてんじゃねぇよ。お前が美少女だからって何でも言う事を聞くと思ったら大間違いだからな!」
「あ!僕を美少女と認めたね!ふふん!」

 ソフィアはポジティブな性格をしていると思っていたが、ここまでだったとは予想外だ。
 こんなアホみたいな性格した奴が天才的な頭脳を持っているのだから、世の中ってのは本当に理不尽だよな。

「じゃあ二人で行ってこい。もちろんレッドオーガの頭蓋骨を確保するまで帰らせんからな」

 イヴは一言残して扉を閉めてしまう。
 いざと言う時は無理やりこじ開けようと思っていたが、扉から禍々しい煙が溢れ出していて近づけない。

 つか、さりげなくソフィアも巻き込みやがった。

「.......ソラ君、頼んだよ!」

 巻き込まれたのに気がついたソフィアは、戦闘を俺に任せてきた。
 俺よりも強いんだから人任せにすんじゃねぇ。

「いや、ソフィアさんも手伝ってよ!」
「僕の服装を見なさい。どう見ても戦う時の服じゃないよね?」

 ソフィアはクルリと回って、真っ白な白衣を見せびらかしていた。
 あと少しでパンツが見えそうだったのは黙っておこう。
 もしかしたら、これから見えてしまうラッキースケベなイベントが起こるかもしれない。

「はぁ.......じゃあ、レッドオーガの特徴くらいは教えて。さすがに何の情報も無いまま戦うのは怖いからさ」

 俺が戦ってやるから、ラッキースケベなイベントを期待してるぜ!

「りょーかい!お姉さんに任せなさい!」
「.......ぶふっ」

 ソフィアが自分のことを"お姉さん"と言ったので、思わず吹いてしまった。
 こんな頼りにならない"お姉さん"は中々いないだろう。

「今、笑ったよね?」
「.......笑ってないよ」
「いや、絶対に笑ったね。ちゃんと聞いてたもん!」
「だから気の所為だっつぅの」

 そんなくだらない事を言い合いながら、俺とソフィアは研究所の奥へと進んでいくのだった。

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