現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

45話 家族の行方2

「んじゃ、父さんたちを探しに行くか!」

 俺は両頬を強めに叩き、気合いを入れ直した。
 焦りを隠すためでもある。

「まぁ待て。闇雲に探しても見つからんぞ」
「じゃあ、どうすれば良いんだよ。なんの手がかりも無いんだぞ」

 周りにあるのは崩壊した学校と魔物の死骸だけだ。
 一人でも人がいれば何があったのか聞けるのだが.......。

「むむぅ」

 イヴは顎に手を当てて難しそうな顔をしていた。
 俺の両親の捜索方法を真剣に考えてくれているようだ。

「.......今日は帰るしかない。我の力をではソラの両親を探すことが出来ん」

 確かに手がかりが無ければ、何もすることが出来ない。
 今は帰るしかないだろう。

「.......分かったよ」
「うむ」

 そしてイヴは龍の姿に戻り、俺は背中へ飛び乗った。
 俺が背中に乗ったことを確認すると、イヴは言う。

「ソラよ。これだけは覚えておくのだ.......力なき弱者は強者から大切な物を奪われるだけだ。だから強くなれ。誰よりもな」

 悲しげな瞳をしながら、いつになく真剣な声で助言してきた。
 その姿を見ていると何も言い返すことが出来ず、ただ頷くことしか出来なかった。

 この世界にモンスターが溢れてから、物事の価値観が変わってしまった。
 前までは学業に専念し、いい大学に入って有名な会社や公務員になることが理想だったのだが、今では弱者に生きることさえ許されない残酷な世界になった。

「結局.......力が無きゃ何も出来ないのかよ.......クソっ」

 今の俺では悔しさで顔を歪め、力を求めることしか出来ない。
 それでも、イヴが居れば.......いつかは家族に再会できるかもしれない.......そう思っている。

「イヴ.......これからもよろしくな」
「うむ。これからも我がビシバシ鍛えてやろうぞ!」
「お、おう!頼むぜ!」

 俺は特訓の厳しさを思い出し、頬を引きつらせながら、大声で返事をした。
 .......死なない程度に手加減してくれよ。

 10分ほど、イヴの背中に乗って空の旅を楽しんでいると、研究所に到着した。
 武田さんのところに顔を出しに行こうと思ったが、【暴食の右腕】を暴走させた影響なのか、歩くのも面倒になるほど体が重いので、そのまま拠点へ帰ることにしたのだ。

 ソフィアが待つ拠点に戻ると、聞き覚えのある高笑いが聞こえてきた。

「ふはははは!シュナイザー!ハウザー!我に仇なす悪鬼どもを駆逐するのだ!」

 どこからともなく、そんな言葉が聞こえてくると、周囲から激しい爆音と共にオーガたちの叫び声が響いてきた。
 何かが暴れているのだろう。
 まぁ、予想は着いているが。

「.......ソフィアだな」
「うむ.......ソフィアが何かやっておるのだろう」

 そんなことを話していると、研究施設の外壁が破られ、2体のゴーレムと金色の髪を靡かせながら高笑いしている美少女が現れた。

「はははは!もっと殺ってしまえぇぇ!.......おや?ソラとイヴではないか。今帰ってきたのか」

 俺達がいない間に何があった.......お前とゴーレム、血塗れじゃねぇかよ。
 血に濡れたソフィアは色っぽい雰囲気を纏っており、ゴーレムはその巨体も相まってオーガよりも威圧的だ。

「我が子達に見惚れてしまったのか?ふふふ。それも仕方の無いことだ。見よ!この美しいフォルムを!」

 我が子達とはゴーレムのことを言っているのだろうか、ソフィアはゴーレムに頬ずりしながら頬を赤く染めていた。
 傍から見ると危ない人である。

「シュナイザーはゴブリンジェネラルの魔石が動力源となっとおり、我が叡智によって半永久的に動くことが可能となったのだ!」

 その後もベラベラと長ったらしい説明が続いた。
 難しいことはよく分からんが、何か待機中の魔力を吸収して自動的にエネルギーチャージされるから、充電や新しい魔石の確保は必要ないらしい。

「そしてハウザーにはオーガの魔石が使われているのだが、これも我が叡智によって本来のポテンシャルを超えた性能を発揮させることに成功したのだ!.......まぁ、思い付きで作っただけなんだけどね」

 曰く、体内の魔石を魔法陣のように配置し、その効果で本来持つ性能を大きく上回らせる事に成功したようである。
 そのアホみたいな言動と子供っぽい見た目のせいで忘れていたが、こいつソフィアは天才なのだ。
 これくらい出来て当然なのだろう。

「くっくっくっ.......この子達のお陰で我が城に巣食う悪鬼共は駆逐できたぞ!まだ奥の方には残っているだろうが、我々が使っている部屋の周囲には1匹もいないはずだ」

 褒めて欲しいのか、控えめな胸を大きく張っていた。
 そんな事されると.......褒めたく無くなるじゃないか。

「そっか。そりゃあご苦労だったね。んじゃ、中に入ろうか」
「なぬ!?僕に何か言うことがあるんじゃないのかな?ほらほら、こんなに強いゴーレムを作ったんだよ!」

 しつこく付き纏って、ソフィアは褒めるよう促してきた。
 しかし、俺は疲れたから中に入って寝たいので、そのまま壊れた壁を潜る。

 そんな時、イヴがソフィアの肩を掴んだ。

「どうしたんだい?あ、僕のゴーレムを褒めてくれるの?」
「まぁ、確かにゴーレムも凄いが.......ちょっと耳を貸せ」

 ソフィアは屈んで耳を傾け、イヴから話を聞く。
 すると、ソフィアは大きく目を開いて後悔したような気まずい表情を浮かべたのだった。

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