現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

35話 9階層モンスター〜その3〜

「ちっ.......イヴの言う通り再生するみたいだな」

 イヴによれば、ある程度の強さを持ったモンスターは、スキルには無いが再生能力が高いらしい。
 所謂、スキル外の力らしい。
 治癒能力が少し上がっただけの俺からすると、かなり羨ましい力だ。

「せっかく、鉄の槍に『鋭利』と『貫通』を付与したのに.......」

 ソフィアが持っている固有スキル【錬金術】は、『分解』『再構築』『効果付与』この3つの性質を兼ね備えている能力なのだ。
 そして、ソフィアは鉄の槍に『鋭利』と『貫通』を付与したのだ。
 因みに、オーガ達を分解させた方法は、『分解』の性質を使ったのである。

「.......でも、かなりダメージを与えられたみたいだし、接近戦しても大丈夫かな?」
「その接近戦をするのは俺なんだけど」
「追い詰めてるのは、今のところは僕たちだから大丈夫さ。もちろん僕もサポートするからね」
「そりゃあ頼もしいぜ」

 俺は鞘から刀を抜いて正面に構えた。
 そして、ソフィアは後ろから、いつでもサポート出来るよう右手に黄金の魔力を纏っている。

「グルゥオオ!」

 ゴブリンジェネラルは耳が痛くなる程の声で雄叫びを上げ、体を大きく揺らしながら突進してきた。
 武器は落とし穴で落としたのか、何も持っていない。
 血が出るほど強く、拳を握りながら向かってきている。

「まずは俺からだな」
「任せた」

 ゴブリンジェネラルは、最初に俺を狙ってきた。
 落とし穴まで誘導された事を根に持っているのかもしれない。

「ふぅ.......」

 深呼吸をして集中力を上げる。

 速度は、さっきと比べ物にならんほど落ちてる.......これなら普通に何とかなるな。

 冷静に敵を観察して自分の力で、どれだけ戦えるのか分析した。
 俺とソフィアさんの2人なら勝てる.......と思い、こちらも相手に突っ込んだ。

 敵の目の前まで接近した瞬間、ゴブリンジェネラルは腕を大きく振り上げて、俺の顔面目掛けて殴りかかってくる。
 そんな遅い攻撃は当たらない。
 しかし、俺の顔面がペシャンコになるのは御免なので.......

「ふっ!」

 俺は相手の攻撃をギリギリで躱し、そのままの速度で相手の膝を斬り、ゴブリンジェネラルの体勢を崩した後、背中を取った。
 そして、ゴブリンジェネラルは後ろへ振り向き、斬られた足など気にせずに殴り掛かる。

「グォォオオ!」
「俺のとこばっかに来てくれるなんて嬉しいねぇ.......だけど、こっちに注目してたら後ろがガラ空きになるぜ?」

 俺はニヤリと笑みを浮かべる。
 何故なら、ソフィアが地面に両手を付けて、何かしようとしているのが見えたからだ。

「『変質』『流動』『硬化』『自動修復』」

 そう呟いた瞬間、ソフィアの手元から地面が飛び出し、ベビのようにうねりながら、ゴブリンジェネラルの両腕を捕らえに向かい、ゴブリンジェネラルの両腕を縛った。
 それを見たソフィアは、冷たい笑みを浮かべてゴブリンジェネラルに言い放つ。

「悪いけど、君には手も足も出させないよ」

 そう言った後、その細い指を指揮者のように動かし、丸い模様を空中に創り出した。
 その光景を見て何か感じたようで、イヴは関心の声を上げる。

「ほう.......あれは魔術か」

 という声が、俺の耳に少し届いた。
 イヴが興味を持つくらいだから、凄い能力なのかもしれない。

 ソフィアは口を開く。

「魔法陣展開!一斉射撃!」

 ソフィアの頭上から5つの魔法陣が現れ、高速回転を始める。
 そして、高速回転している魔法陣から、細くて丸い鉄の塊が発射された。
 銃弾である。

 ソフィアの魔法陣から放たれた銃弾の雨は、ゴブリンジェネラルの体中を貫いた。
 これを受けたら、普通は即死だろう。
 しかし.......

「グルォォオオ!!」

 最初は簡単に倒せる弱い人間だと思っていた.......しかし、この2人の.......いや、自身の能力を巧みに扱い、相手を思い通りにさせない戦い方をしている女は厄介だ.......ゴブリンジェネラルは言葉に出来ないが、心の中でそう思っていた。
 そう思ってしまったのだ.......本来、自我を持たぬモンスターであるのに、自我を持ち始めてしまった。
 そして、ゴブリンジェネラルは変化を始める。
 肉体は今まで以上に強靭となり、人間と同じように考え、感情が現れたのだ。

「.......!?拙い!早くトドメを刺して!」

 それを見たソフィアは、ソラに急いでトドメを刺すように促した。

「了解!」

 俺も何か嫌な予感がしたので、急いでトドメを刺しに行く。

「グォォオオ!」

 ゴブリンジェネラルは腕を縛られて尚、必死に動いて抵抗しているが、拘束を破ることが出来ずにいた。
 拘束に亀裂が出来たところで、自動的に修復されてしまうのだ。

「んじゃ.......これで終わりにしようじゃねぇか!」

 俺は【斬撃】を使用しながら刀を横に一閃し、ゴブリンジェネラルの首をはねた。

 普通の鉄の剣だったら斬るのに手こずっていただろうが、ソフィアさんが造った刀は斬れ味が良い。
 だから、なんの抵抗も出来ない相手なら、簡単に斬ることが出来る。

「.......思ってたよりも楽だったかな」
「戦う前に準備をしたからだね.......真正面から挑んだら確実に負けてたよ」

 そんな答えに、俺は少し顔を暗くさせながら返事をした。

「そうだね」

 純粋な戦闘能力では完全に、こちらが負けていた。
 だから、作戦を考えてから戦いを挑んだのだ。
 しかし、ソフィアさんの能力ばかりに頼っていた。
 仮に俺一人で挑んでいたら、手も足も出せずに殺されていただろう。
 それに、早くトドメを刺していなかったら、あのまま拘束を破って、逆に俺たちがやられていたかもしれない。
 最後の方は、どこか変化が起き始めていた気がする。

 そんな感じで、俺は考え事をしている時、イヴが話しかけてきた。

「ふむ。ソフィアの能力頼りで勝ったのだ。あまり褒められたもんではないな」
「うっせ.......分かってるよ」

 イヴも、あまり納得いく勝ち方ではないようだ。
 ゴブリンジェネラルと同等のモンスターを一人で倒せるくらい強くなろう.......俺は密かに心に誓って、強くなろうと思うのだった。




パーティーメンバー

・佐藤 空

・イヴィル

・明智 ソフィア

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