現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

33話 9階層モンスター〜その1〜

 9階層のモンスターの正体が分かった後、出来る限りの準備をした。

 ソフィアさんが作成した武器や防具を身に付け、俺が丹精込めて作った料理を皆で食べたのだ。

「んん!ソラ君って料理できる系男子だったんだね!きみ将来有望だよ!」
「有望ってなんのだよ.......」
「もちろん、お婿さんさ!」

 今回、俺が作った料理は肉を軽く焼いて、醤油をかけただけの簡単なものである。
 俺が作った料理を食べてから、何故かソフィアさんは終始ご機嫌だ。
 一応、ソフィアさんも料理を作れるのだが、今日までは研究室に篭ってたり、オーガを倒して魔石採取のついでにレベル上げをしていたらしい。

 そして、イヴは.......

「うむ。なかなかの美味であったぞ」
「はいはい。そう言ってくれると作ったかいがあるよ」

 数秒で食べ終わってしまったのだ。
 そして、その後は何度も俺に料理を作らせた。
 ひと皿だけでは足りなかったらしい。

 ロリババア、最凶の邪龍、残念美少女、めんどくさがり屋、大食いっ子.......これ以上、属性を増やさないで欲しいぜ。
 因みに、食料はイヴのアイテムボックス(仮)から取り出して作った。

「これでステータスの底上げは出来ただろ」
「うむ。確かに上がっておるな」
「僕もステータス補正かかってるよ」

 もちろん、ただ料理を作ってみんなに食べさせたわけではない。
 俺のスキル【家事】の検証を行なったのだ。

 スキル【家事】は、【料理】【掃除】【洗濯】この3つのスキルを兼ね備えた効果を持っているのだ。
 今回、使ったのは【料理】である。

 効果は、スキル所持者が作った料理を食べた者には、全ステータス(補正がかかるのだ。
 イヴ曰く、Lvが上がるごとに効果時間が1時間増えて、上昇率が10増すらしい。
 かなり強いスキルである。

「俺の【家事】のレベルは2だから、効果は2時間、全ステータスプラス20補正がかかるな」
「僕も持ってるけどレベル1だからなぁ。後でレベル上げよっかな」
「うむ。それが良いだろう。効果を重ねることは出来んしな」

 俺とソフィアさんの料理を両方とも食べて、ステータスの底上げをしようと思ったのだが、どうやら効果は重複しないようなのだ。
 これは、ソフィアさんから聞いたことである。

「ほんとソフィアさんの【叡智】ってチートだよなぁ」
「でしょ!このスキルが無かったら今頃どうなってたか分からないよ」

 ソフィアさんが持ってる固有スキル【叡智】は、全ての世界の知識が詰まった能力だったのだ。
 だから、イヴの姿を見て驚きもしたし、俺の種族を知っても平然としていた。

「なんて言うか万能な能力だな」
「んー、そんな事は無いかなぁ.......」
「なんか弱点的なもんでもあるの?」
「ふふ.......それは、もっと仲良くなったら教えてあげる」

 さすがに、自分の固有スキルの弱点を軽々しく教えることは出来ないよな。

「あ、でも【魔力操作】は凄く便利だよ。自分の体内にある魔力を操ることができるからね!」
「確かに.......それは羨ましいな」

 これも先ほど聞いたばかりの話なのだが、自分の体内にある魔力を操作できるようになれば、身体能力を強化したりする事が出来るらしい。
 イヴの言っていた魔力の使い道とは、この事だったのだろう。

「魔力の操作はスキルが無くとも練習次第で出来るようになる。だから、もう少し魔力が増えたら我が扱い方を教えてやろう」
「おう。その時は任せたぜ」

 今のところ魔力の使い道が全く無い。
 だから、イヴから魔力の扱い方を教えてくれるようになるまで、俺は更に頑張って強くなる。
 死にたくないしな。

「やれることは全部やったし魔石採取へレッツゴー!」

 そして、ソフィアさんの掛け声とともに、俺たちはダンジョンの9階層へと向かった。
 因みに、歩いて行くと時間がかかるので、イヴの空間転移的な能力で向かいました。



「うわぁ.......なんかダンジョンって感じがするね」

 普段は声が大きくて空気を読まない人なのだが、いま大声を出すとモンスターが寄るので、それを察したのか声を抑えながら、初ダンジョンの感想を言っていた。

「そう言えば、ソフィアさんはダンジョン初めてだったね」

 ソフィアさんは研究施設から全くと外に出ていなかったので、ダンジョンに入ることも無ければ外の状況すらも知らない。

「.......あそこにいるぞ」

 イヴは俺たちに静かにするよう促し、目線でゴブリンジェネラルの位置を教えた。

「あれはヤバそうだね.......腕力と防御は4桁いってるよ?」

 ゴブリンジェネラルのステータスを見て、ソフィアさんは頬を引き攣らせた。

「やれることは全部やったから、あとは俺たち次第だ」

 と言って、俺は自分のステータスを確認し、腰にかけているソフィアさんが作成した刀に軽く触れる。

佐藤さとう そら
レベル14
職業ジョブ:『剣士』
種族:『魔人』
魔力:463(443+20)
腕力:229(159+50+20)
防御:229(159+50+20)
俊敏:229(159+50+20)
《固有スキル》
【暴食の右腕】
《スキル》
【武術Lv5】【狙撃Lv2】【身体強化Lv5】【集中Lv5】【冷静Lv5】【家事Lv2】【思考速度上昇Lv5】【観察Lv5】【威圧Lv4】【回避Lv6】【斬撃Lv2】【鑑定Lv3】

 スキル【家事】でステータスの底上げし、ソフィアさんが造った武器と防具も身に付けた。
 これでも勝てなかったら、すぐに逃げよう。
 そう心に誓いステータスを閉じる。

 俺が身に付けている防具は、モンスターの革で造られた胸当てに、同じ素材で造られた手甲と膝から下を守るためのブーツだけてある。
 あのゴブリンジェネラルには、全身を鎧で固める事など無意味と思い、急所だけに革防具を付けることにしたのだ。
 見た目的には、とてもダサいのだが機能性はバッチリなので文句はない。
 しかし、今の生活に余裕が出来たら、見た目も機能性も良い防具を造ってもらう予定だ。

「ふぅ.......」

 俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた後、ソフィアさんに目配せする。
 視線を感じたソフィアさんは、力強く頷いた。
 イヴは、もちろん戦闘に参加しない。

「んじゃ.......殺るか」

 そして、殺意を瞳に宿し、俺たちはゴブリンジェネラルへと向かうのだった。




パーティーメンバー

・佐藤 空

・イヴィル

・明智 ソフィア

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