現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

30話 黄金の錬金術師現る!〜その2〜

 俺は目の前の少女が厨二病だと分かった瞬間、緊張が解けた。
 初めて出会った時は、その凛々しくも可愛らしい姿に見惚れてしまったが、今では全く凛々しさの欠片も無い。
 めちゃくちゃ可愛いけど、残念な子くらいにしか見えないのだ。

 いや、別に厨二病への差別感情があるとかじゃないぞ?俺はライトノベルとか好きだし、厨二チックなセリフをカッコイイと思う時だってある。
 これはあれだ.......自分と同じ趣味を持っていると分かると、親近感が湧いたりするだろ?それだ。
 あとは、まぁ.......若干、面倒くさそうな人だなぁ、とは思ったりしてるかも。

 しかし、相手だけに自己紹介させて、自分が名乗らないのは失礼なので、こちらも自己紹介する。

「えっと.......俺は」

 俺が自己紹介を始めようとした瞬間、いつの間にか起きたイヴが俺の前に出る。

「クックックッ.......我が名は邪龍イヴィル!世界を恐怖のドン底へと沈める最凶の存在にして、この魔人の師である!因みに年齢は永遠の17歳だ!」
「おぉ!その名乗りカッコイイね!」

 イヴの変なスイッチが入ってしまったのか、ノリノリで自己紹介を始めた。
 おぉ.......なんかイヴがやると様になるな。
 てか、17歳は俺だし、お前の見た目は小学生だろ.......それと俺が自己紹介しようとしたのに邪魔すんな。アホ駄龍。
 でも、これで自己紹介できるな。

「えっと.......俺は」
「ふっ.......自己紹介は必要ないぞ少年。何故なら、君のステータスを覗いたからね!」

 おい、人の着替えを覗いたみたいに言うな。
 なんか恥ずかしくなってくるわ。

「ん?俺のステータスを見たんですか?」
「そうさ!僕はスキル【鑑定】を持ってるからね。それなりに高レベルなスキルだから、君のステータスを覗くのは容易だったよ」

 この可憐な厨二病美少女は、俺よりもレベルが高いのか.......命懸けでレベル上げをしたのに、なんかショックだわ。

「それと敬語は要らない。僕の方が年上だと思うけど、勝手にステータス覗いたし敬語を使われるのは慣れていないんだ。あとはソフィアで構わないよ」
「えっと.......うん。分かった。ソフィアさん」

 敬語を使わなくて良いと言われて少し戸惑ったが、言われた通り敬語を使わずに会話をすることにした。
 しかし、いきなり下の名前を呼び捨てにするのは、俺にとってハードルが高すぎるので、"さん"付けで呼ぶことにする。

「"さん"は付けなくて良いんだけどなぁ.......まぁ、良いや.......それで、君は僕のステータスを見なかったの?【鑑定】持ちでしょ?」

 自分のステータスを覗かれていたことに、実は少し冷や汗をかいていた。
 しかし、驚いたのを表情に出さないよう苦笑いしながら答える。

「そうなんだけど、ソフィアさんの登場と戦闘に驚いて忘れてた」
「ふふふ.......そうなんだね。まぁ、僕は俗に言う厨二病というやつだから仕方の無いことだと思うよ」

 あ、厨二病の自覚はあったのね。

「それにしても邪龍さんの弟子だったとは驚きだよ。すごいね君」
「ん?.......まさかイヴのことを知ってたのか?」
「んー.......知ってたというより"スキルで知った"という方が正しいかな?」

 ソフィアの言っている事が理解できず、俺は首を傾げる。
 つまり、広範囲の索敵とか周囲の状況を把握できるスキルを持ってるってことか?まぁ、考えても無意味か。

「取り敢えず移動しないかい?ここは危ないからさ」
「確かに.......またオーガたちが来たら面倒だもんな」
「うむ。オーガ共もいなくなったから、修行は終わりにしよう」

 そして、俺とイヴはソフィアの後を付いて行った。



 研究施設内を歩くこと約5分。
 ソフィアに案内されて着いた場所は、様々な機械が床に散っており奥には人型のロボット?らしき物が置いてある部屋だった。
 周りに人の気配は無い。
 恐らく、ソフィア以外の人間はオーガに殺されてしまったのだろう。

「僕の研究室へようこそ!散らばってるけど好きなところに座って寛いでて良いからね!」

 ソフィアは、満面の笑みで歓迎の言葉を言う。

「うむ。歓迎してくれたこと礼を言う。ありがとう」
「マジで助かったよ。ソフィアさんが来てくれなかったら結構キツかった」
「イヴさんが居たから、僕が助ける必要は無かったと思うよ?」

 俺が言ったことに違和感を覚えたのか、首を傾げながら質問した。

「いや、コイツは俺が死にかけても、ケツを掻きながら寝そべってるだけからな。頼りにならん」
「何を言っておるのだ?我が手を貸したら修行の意味が無くなるであろう。それと、我がケツを掻くはずなかろう!」
「ケツはどうでもいいわ。そんなことより何度、俺が死ぬ思いしたと思ってんだよ」
「ふんっ.......だが、今も生きているではないか」
「ぐぬぬ.......」

 イヴは、俺が死にかけても絶対に助けてくれない。
 しかも、初めてイヴ自身が相手をした時は、今までとは比べ物にならない程、身の危険を感じた。
 あれでも、本気の1割も出していないらしい。
 本気出したら、息を吹きかけるだけで高層ビルとか吹き飛ばせるんじゃね?

「ふふ.......君たちって仲が良いんだね」

 このアホ駄龍と仲が良いとは心外だ。
 だから、俺は言う。

「「良くない!」」

 そしてハモった俺たちを、ソフィアはニヤニヤしながら見つめるのだった




パーティーメンバー

・佐藤 空

・イヴィル

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