現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

27話 仲直り

 太陽が真上へと上り、眩しい日差しが大地へと降り注いでる中、ソラは土下座をしながらイヴに本気で謝罪をしていた。

「ふんっ」
「あ、あのイヴさん.......今回は俺が全面的に悪かったです。ごめんなさい」

 そんな謝罪を受けてもイヴは腕を組みながら、ソラとは反対の方向へと向けている。
 イヴは『邪龍』だが見た目と中身は普通の女の子と何にも変わらない。
 だから、怒るのも当然と言える。
 しかも、俺が気絶している時、介抱してくれていたのに、あんな事を言われたら尚更だろう。
 昔から知らないうちに相手を怒らせたり、無意識のうちに悪口を言ってしまうことが、よくあったのだ。
 はぁ.......ほんと俺って成長しないな。

「絶対に許さぬ」

 いつもの巫山戯た態度とは真逆だ。
 絶対に許さないという意思が伝わってくる。
 しかし、こんな時は素直に自分の思ったことを言えば、しっかりと相手に伝わると母から教わったのだ。
 だから、恥ずかしいが素直に自分が思ったことを言うことにした。

「本当にごめん.......目が覚めたとき目の前にあったイヴが綺麗だったから見蕩れてた。だから恥ずかしくて、あんな事を言ってしまった。本当にごめん」

 自分の謝罪の気持ちを伝えるために2度、謝罪の言葉を言って反省の態度を示した。
 その気持ちが伝わったのか、イヴは「はぁ」と溜め息を吐いて、やっと振り向いてくれた。

「もう言わんか?」
「うん。絶対に言わないよ」
「なら良し。我だけでなく他の女子おなごにも言うでないぞ」

 その言葉に俺は慌てて返事をする。
 許してくれるようだ。

「も、もちろん!」
「ま、まぁ我もやり過ぎたのでな。こちらこそすまん」

 イヴは照れながら頬をかいて謝罪した。

「いや、俺の方が悪い。本当ごめん」
「いや、我の方が色々とやりすぎたのでな。悪かった.......本当にすまぬ」
「女の子にあんなことを言ったんだ。そっちが謝る必要なねぇよ」
「いや、我もソラの事を考えておらんかった。すまぬな」
「.......」
「.......」

 互いに謝りあってキリがないと思ったのか、2人とも黙ってしまった。
 そして、なにが可笑しいのか急に2人は「ぷっ」吹き出した。

「いつまで経っても終わらなそうだし、この話は止めるか」
「くくく、そうだな。それじゃあ仲直りの印として修行続きこいこうか」
「はえ?」

 イヴの言ったことに驚き、俺は思わず間抜けな声を出してしまった。

「安心しろ。9階層を突破するために少し強めのモンスターを狩るだけだ」
「あ、そうなんだ.......それなら大丈夫かも」

 イヴの"ちょっと"は俺の場合"ちょっと"どころでは済まない。
 しかし、現在の世界に馴染んできたお陰なのか、ちょっと命懸けなくらいではビビらなくなった。
 この変化が良いか悪いかは分からないが、生き残るためにも強くなる手段を選んでいられるほど贅沢は出来ないただろう。

「この周りには研究所がある。どうやら、その施設内にオーガ達がいるようなのだ」
「つまり、そいつらを倒してレベルを上げろって事か?」
「うむ。普通のオーガでもステータスが程よく高い。今のソラには丁度いい相手だ」

 イヴは「特に腕力が高いな」と最後に付け足しながら、オーガの特徴を教えてくれた。

「オーガは皮膚が硬く弱点と言えるものは少ない。大きさは約2から3メートル程で上位種となると更に大きい場合もある」

 確かに弱点らしいものは無いが、俺には【暴食の右腕】があるので何とかなるだろう。
 しかも、この腕にはスライムの体質も受け継いでいるようで、触れたものを酸で溶かすことが出来る。
 その力を上手く使えばオーガの硬い皮膚も突破できるはずだ。

「そして、オーガは必ず【威圧】のスキルを持っている。まぁ、これも特に問題は無いな」

 【威圧】は強力なスキルだが、自分より格下でなければ効かない。
 そして、相手が【威圧】を使うのなら、こちらも【威圧】を使って相殺すれば良いだけだ。

「一番厄介なのは集団戦だ。通常のオーガの攻撃速度は大した事ないが、複数で来られると.......」
「攻撃速度が遅いというオーガの唯一の弱点と言えるものが埋められてしまうってことか」
「うむ」

 数は力なり、とかよく言うしな。
 どんな生き物だろうと複数で仕掛けられたら厄介だ。
 さらに、腕力が高いオーガが集団で来られると、余計厄介という事だろう。

「そんじゃあ、早速オーガたちを狩りに行こうぜ」
「うむ。多少は苦戦するかもしれぬが頑張るが良い」
「おう」

 イヴが応援してくれたので、短く返事をした。
 昨日までのイヴだったら、こんな事は言わなかっただろうが、先程の出来事で何かしらの心境の変化があったのだろう。

「イヴが応援してくれんのなら頑張れるわ」
「う、うるさい!そんな小っ恥ずかしい事を言う暇があるなら対策でも頭の中で考えておくのだ!」
「へいへい」

 イヴは顔を真っ赤にさせながら大声を上げた。
 さっきまでの俺なら、こんな恥ずかしいことは言えなかったが、イヴの慌てる顔を見れんなら、いくらでも言えるな。




パーティーメンバー

・佐藤 空

・イヴィル

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