現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

7話 体育館への道

 ゴブリンとの初戦闘を終えた後、どこに向かうか悩み、恐らく学校内で一番安全であろう体育館へ向かうことにした。

 一番、体育館が安全である理由は、この学校の体育館は災害が起きたあとの避難所としての機能を期待して設計されたからだ。

 その事を知っている理由は、この学校の教師から災害が起きた時は必ず体育館に避難するよう言われており、災害後のことを想定して作られた事を教えられたからだ。
 しかし問題もあった。

「やっぱり学校内にもモンスターが侵入しているか.......」

 予想はしていたが、実際に見ると現在の状況が最悪だと、改めて理解してしまう。

 今は、ゴブリン共の死角に隠れているから、何とかバレずに済んでいるが、少しでも物音を立てたら見つかるだろう。

 視界に入っているゴブリンの数は3体。
 しかし、先ほど戦ったゴブリンとの違いは、持っている武器がナイフでなく棍棒だというところだ。

 持っている武器が刃物じゃないなら3体同時に相手しても問題は無いか?
 .......しかし、油断は死に繋がるから出来るだけ戦闘は避けたい。

 仮に、ここを引き下がって別の道から体育館に向かっても回り道になるし、他の場所には、もっと強力なモンスターがいるかもしれない。

「一人だときついな.......」

 無い物ねだりをしても仕方ない。
 今は生き残る為にすべき事だけを考えよう。

 ここで俺は、学校の内部構造を頭の中に思い浮かべた。
 現在いる場所は、保健室の目の前にあるトイレの入口。

 そして保健室から体育館への道は一直線だがゴブリンが3体いる。
 そこを通ったら戦闘は必須.......保健室は体育の授業で怪我した時の為に、校庭と体育館の近くに置いてある。

 いや、そもそも体育館に行く必要があるのか?ここでトイレゴブリンが居なくなるまで隠れていた方がいいような気がする。

「ん?待てよ.......」

 俺は顎に手を当てて考えた。
 俺には、さっきステータスやスキルなんていう訳の分からない物が現れた。

 しかし、スキルや先ほどアナウンスで言っていた"職業の選択"についての情報を何も持っていない。

 情報を持っていないなら集めればいい。
 なら、その情報が集まる場所はどこか.......それは、人がたくさん集まっているかもしれない体育館だ。

 しかも今日は、"体育館の放課後解放日"だ。
 "体育館の放課後解放日"とは、月に一度だけ放課後に体育館を解放し、自由に使えるという制度だ。

 体育館の放課後解放日は、たくさんの人が体育館を利用するから、人は集まっているはずだ。

「.......よし、行くか」

 俺は体育館へ向かうことに決めた。

 でも、その前にゴブリン共を殺さないとな。
 素手でゴブリンを倒すのは無理なので、保健室で倒したゴブリンのナイフを持った。
 刃が欠けているが、ハサミよりもリーチが長いし無いよりはマシだろう。

 俺は、ゴブリンを誘き寄せるためにポケットに入っていたコインを、ゴブリンから出来るだけ遠くに投げた。
 しかし、遠すぎても意味が無いので、出来るだけ自分から遠く、尚且つ音に反応して気を逸らせる程の距離が好ましい。

 コインが廊下に落ちた瞬間、ゴブリンたちは音がした方へ振り向き、何の警戒もせずに音がした場所へ向かった。
 そして俺は、ゴブリンにバレないよう息を殺して、身を低くしながら隠れた。

 ゴブリンが全員、トイレの前を通り過ぎたのを確認した後、ナイフを構えてダッシュで走った。

 まずは一番近くにいたゴブリンを狙った。
 出来るだけ素早く殺したいので首にナイフを突き刺した。

 一匹目を仕留めた後は、右斜め前にいたゴブリンの首筋にナイフを投げて突き刺し、三匹目には威圧を放って動きを鈍らせて接近した。

 まずは人差し指と中指を立てて目潰しだ。
 目を潰した後は、喉元に正拳突きをして呼吸を止めた後、ゴブリンの股間を蹴りあげた。
 もしメスだったら効かないが、布越しからでも分かるほど、ゴブリンの股間の部分が"ブラブラ"と揺れていたので、この鬼畜作戦を使うことが出来た。
 股間は全てのオスに効く最強の攻撃手段である。

 そして、ゴブリンが自分の股間を抑えている間にナイフを回収し、痛みで悶えているゴブリンの首筋に突き刺す。
 ゴブリンの死亡を確認した後、俺は気が抜けてしまい、床に腰を下ろした。

「ふぅ.......短時間とはいえ戦闘は肉体的にも精神的にも疲れるな.......」

 しかし、いつまでも気を抜いていられないので、すぐに立ち上がって周りを警戒しながら体育館に向かって走る。
 ここから体育館までの距離は20メートルも無いくらいなので、すぐに入口まで辿り着いた。

「空けるか.......」

 この扉の先は、人がモンスターに蹂躙されている悪夢のような場所かもしれないが、取り敢えず中は安全な場所だと信じよう。
 さぁ.......扉を開けようか。




パーティメンバー

・佐藤 空

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