この世界で魔法が生まれた日
「謎のメッセージ」
「ところで、一条は、いつも何読んでるんだ?」
タニシは、僕が両手に持っている本を見ながら、言った。
「ファンタジーだよ。勇者が魔王を倒す典型的な物語。好きなんだ、昔からこういった類の話が」
僕は、小説の表紙に再び目を移した。片手に剣を持ち魔王に立ち向かおうとするところを描いたイラストが描かれている。
「一条のことだから、もっと小難しい本でも読んでいるのかと思ったぜ。好きだぜ。俺も。ファンタジー小説。現実離れしていて」
  タニシは、笑いながら、僕の右肩に手をおいた。僕は、タニシの方を見るでもなく、ただ、本の表紙を眺める。
「現実離れか......確かにそうかもな」
僕がそういった直後、学校のチャイムが鳴り響き、教室で立って話していた同級生たちは、一斉に自分の席に戻り始めた。タニシも、周りの様子を見て、急いで自分の席に戻っていった。
教室の扉が開き、国語担当の教師が入ってくると教壇に上がり、テキストを片手に、黒板に文字を書きながら、授業を始めた。いつもと変わらない光景だ。何の代わり映えのない日常の一場面だ。
僕は、机の上に右肘をおき、頬杖をつきながら、窓の外を見た。すると、数キロ前方にある山の手前の建物から、黒い煙が天高くまで、空に線を描いたように伸びているのが見えた。
火事でもあったのだろうか。それとも、ただ単に落ち葉でも燃やしてるだけかもしれない。きっと、これもごく平凡な出来事に過ぎない。
****
放課後のベルが鳴り、すっかり周囲が暗くなり、街灯でほんのり照らされた通学路を一人、考え事をしながら歩いていた。
僕は、高校三年生だ。もうすぐ、高校を卒業して、大学に入学する予定なんだ。いつまでも、子供のままではいられない。
現実を見なきゃいけないんだ。しっかり、勉強して、いい大学に入って、いい就職先を見つけて、安定した生活を送ればいいだけの話だろ。やらないといけないことなんて分かってるじゃないか。
なのに、どうして、こうも満たされない気持ちに時々襲われるのか、僕にはよく分からない。自分のことだというのに。
「それは、もっと、刺激的な生活をもとめているからだよ」
突然、まるで、僕の心の中を見透かさして答えたような声が、どこからか聞こえてきた。
「誰だ!!僕に話しかけるのは」
 周囲を慌てて見渡すが、見る限り、通学路を歩いているのは、僕一人だけのようだ。
さっきの声は空耳かなにかだろうか。にしては、やたらとはっきり聞こえていたように思う。
それにおかしい。いつもなら、この通学路では、車が行き交い、生徒たちの話し声が聞こえてくるのに全くの無音だ。まるで時間の静止した空間にいるかのようだ。
異様な雰囲気に怖くなって、早足で帰ろうとした時だ。また、先ほどの声が聞こえてきた。
「君は退屈な生活から抜け出したくはないかい?」
二度目で分かった。この声は、どこからか聞こえてくる声ではない。自分の頭の中に、直接、話しかけてくる声だ。そう、これはテレパシーではないだろうか。
ズボンのポケットに入っているスマホが、振動した。画面が、怪しげに光っている。恐る恐る、スマホをポケットから取り出し、画面を見る。
MRSをインストールしますか?
ーはい/いいえ
画面には、なぜかこんな文字が表示されていた。何だかのアプリをインストールする画面のようだが、全く覚えがない。
「なんだよ。これ。MRSってなんだ」
タニシは、僕が両手に持っている本を見ながら、言った。
「ファンタジーだよ。勇者が魔王を倒す典型的な物語。好きなんだ、昔からこういった類の話が」
僕は、小説の表紙に再び目を移した。片手に剣を持ち魔王に立ち向かおうとするところを描いたイラストが描かれている。
「一条のことだから、もっと小難しい本でも読んでいるのかと思ったぜ。好きだぜ。俺も。ファンタジー小説。現実離れしていて」
  タニシは、笑いながら、僕の右肩に手をおいた。僕は、タニシの方を見るでもなく、ただ、本の表紙を眺める。
「現実離れか......確かにそうかもな」
僕がそういった直後、学校のチャイムが鳴り響き、教室で立って話していた同級生たちは、一斉に自分の席に戻り始めた。タニシも、周りの様子を見て、急いで自分の席に戻っていった。
教室の扉が開き、国語担当の教師が入ってくると教壇に上がり、テキストを片手に、黒板に文字を書きながら、授業を始めた。いつもと変わらない光景だ。何の代わり映えのない日常の一場面だ。
僕は、机の上に右肘をおき、頬杖をつきながら、窓の外を見た。すると、数キロ前方にある山の手前の建物から、黒い煙が天高くまで、空に線を描いたように伸びているのが見えた。
火事でもあったのだろうか。それとも、ただ単に落ち葉でも燃やしてるだけかもしれない。きっと、これもごく平凡な出来事に過ぎない。
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放課後のベルが鳴り、すっかり周囲が暗くなり、街灯でほんのり照らされた通学路を一人、考え事をしながら歩いていた。
僕は、高校三年生だ。もうすぐ、高校を卒業して、大学に入学する予定なんだ。いつまでも、子供のままではいられない。
現実を見なきゃいけないんだ。しっかり、勉強して、いい大学に入って、いい就職先を見つけて、安定した生活を送ればいいだけの話だろ。やらないといけないことなんて分かってるじゃないか。
なのに、どうして、こうも満たされない気持ちに時々襲われるのか、僕にはよく分からない。自分のことだというのに。
「それは、もっと、刺激的な生活をもとめているからだよ」
突然、まるで、僕の心の中を見透かさして答えたような声が、どこからか聞こえてきた。
「誰だ!!僕に話しかけるのは」
 周囲を慌てて見渡すが、見る限り、通学路を歩いているのは、僕一人だけのようだ。
さっきの声は空耳かなにかだろうか。にしては、やたらとはっきり聞こえていたように思う。
それにおかしい。いつもなら、この通学路では、車が行き交い、生徒たちの話し声が聞こえてくるのに全くの無音だ。まるで時間の静止した空間にいるかのようだ。
異様な雰囲気に怖くなって、早足で帰ろうとした時だ。また、先ほどの声が聞こえてきた。
「君は退屈な生活から抜け出したくはないかい?」
二度目で分かった。この声は、どこからか聞こえてくる声ではない。自分の頭の中に、直接、話しかけてくる声だ。そう、これはテレパシーではないだろうか。
ズボンのポケットに入っているスマホが、振動した。画面が、怪しげに光っている。恐る恐る、スマホをポケットから取り出し、画面を見る。
MRSをインストールしますか?
ーはい/いいえ
画面には、なぜかこんな文字が表示されていた。何だかのアプリをインストールする画面のようだが、全く覚えがない。
「なんだよ。これ。MRSってなんだ」
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