ガンズ・バイ・デイズ―高校生サバゲーマーの魔法世界奮闘記―

ファング・クラウド

BRIEFING:23 フューリ・ティルノスとオマケ1の冒険譚その1

帰ってきて、穏やかに日が過ぎ、休みの日だった。
遠くを見るようにテラスから身を軽く乗り出していた。
星はあんまり変わんないんだなぁ・・・異世界も。
見え方は違うけど。
そうしてると、下・・・路道を走るフードの人間がいる。
怪しい。怪しくない?暗闇にフードって、怪しんで下さいバリバリじゃない。


「確か・・・ここに・・・っと、有った有った」


バッグを漁り、取り出したのはスターライトスコープ。
狙撃用暗視装置だ。
つい、と覗くと・・・。


 「フューリ?」


色が解らないから断定的だが、短めの髪、望遠越しでもミステリアスな雰囲気。
ナイトパーティの時の彼だ。


「・・・何かあったのかな」


思い立ったが吉日。
ちゃちゃっと簡単な装備と夜戦服に着替え、追いかけるのだった。
この時、俺は根本的なことを忘れていた。
俺の”武器”、その事自体を・・・・。


「・・・どうして私の後を追うの、クウガ」
「・・・・っと、よぉ、フューリ。気付いてたんだ。そんな恰好で」
「・・・・・・どうだって、いいと思うんだけど」
「まあ、そうっちゃそうだが、さ、気になるから・・・どう見ても変質者だぞ」


あからさまにむっとした。


「変質者・・・この私にそういった人間は初めて。そう、気に入った。一緒に来て」
「え」


返す言葉も待たず、首元を掴まれ引っ張っていく。
このやろ・・・!俺は猫じゃないんだぞ!!


「痛い痛い痛い!!ちょ待てって!おい!」
「待たない、黙って―――――――――『【黙殺】シレティ』」
「――――――」


息はできる。
口も開く。
だが、喉が、声帯が、まるで空気を漏らしてるように、反応しない・・・!?
魔法ってこんなことも出来るのかよ便利すぎん!?


「暫く我慢して、説明は後」


ぐぐぐぐいぐぐいぐい、と引っ張られること数分。
俺もフード?を被らされた上学園にある一角の飲み屋に来ていた。
奥の角部屋に座ると、適当な注文をフューリはすると。


「―――はい、もういい」
「っはあ!このやろ・・・お前なあ!!」
「お店では静かに。マナー。あなたの世界ではなかった?」
「こ・・・ん・・・・の・・・・・・・・・」


勢いで立ち上がったが丸め込まれてゆっくり着席する。


「私は、たまにこうして抜け出している。」
「・・・・・なんの用でだよ」


悪態を付きながら話を聞く。


「国の、任務の為」
「任務・・・・・ティルノスの?」
「そう、国に対しての諜報などではない、近辺に現れた魔物等の討伐」
「フューリが?なんで?」
「私が、次期・・・・」


そっと止めると、店員が来て注文を置いていった


「・・・・今はそんな事はいい、とりあえずそういう事、あなたはこれを食べたら帰ったらいい」
「いや、置いていけねえって。安心しなよ、一応フル装備だから」
「・・・・・ダメ」
「今一瞬考えたな?考えたってとこは悩む余地は有るって事だ」
「ぅ・・・・・」
「解った、こういうのはどうだ?フューリが隊長、隊長だから、戦闘時、フューリの命令には絶対に従う」
「む・・・・・」
「・・・・・・なら帰っ」
「戦闘時、な」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


明らかに不服そうな顔をしてる。


「ほら、さっさと喰って行こうぜ、わざわざこんな時間帯に出るんだから、面倒事なんだろ?」
「・・・・・分かった、あなたも食べて」
「お、マジか、サンキュ」


にしても、フューリ、本当にきれいに飯を食う。
爺ちゃんも言ってたなあ。「奇麗に飯を食え、獣は食い散らかすしかできないが人間はそこに美を持てる。人間なら、奇麗に飯を食え」って。
そんな爺ちゃんの喰い方はスッゲー奇麗だった。
ラーメンとか食っても端の先の先っぽくらいしか汚れないし。
フューリも、すっごい奇麗だ。


「・・・・・人の食事をジロジロ見るのはマナー違反」
「あ、ごめん、その、フューリの喰い方奇麗だなって」
「・・・・・・うるさい」


顔を伏せがちに食事し始めるフューリ。
んーう、悪いことをした。


「すまん・・・・」


自分の分のサンドイッチを食い終え、飲み物に手を付け


「んぐっ・・・これ、ワインじゃないか」
「気付かなかった?」
「気付くか!いや、臭いでわからなかった俺も俺か・・・」
「そう」


くぴりとフューリはワインを飲み干すと、会計をしてさっさと行ってしまった。


「あ、おいまて!」
「あの、お客様、お支払いを・・・」
「あんにゃろ・・・・!!」


勝手に頼んだんだからアイツ払えよクソ!!


「ああ、ええと、ハイコレ!!」
「あ、ちょっとお客様!!お釣り!!」
「ツケといて!また来るから!!!」


適当に渡したお金で足りたのは良かった。
急いで歩くと、あまりわからないけど棒目でこっちを見てくる。


「お金あったんだ、てっきり無くて立ち往生。マリアさんかレオ王子あたりに泣きつくと思ってた」
「毒吐くなあ?!全くしてやられたよ、そうしたら目論見通りアンタは独りで行けるってことだもんな」
「・・・・さて、私には何のことやら」
「言い訳下手だな!?」


ビックリするわ。


「五月蠅い、一々大声出さないで」
「この・・・・出させてるのは誰だよ・・・」
「私じゃない」
「ぬけぬけと・・・!」


全く知らない夜道を歩くが、まるで、うん。懐かしい感じだ。
悪友とバカしてるみたいな、さ。


「そういえば、気になる」
「ん?」
「あなたのその武器」
「ああ、これか」
「それは、あなたの世界の兵器でいいの?」
「まあ、見た目はな」
「見た目?」
「そう、コイツは・・・大人用の玩具なのさ」
「どういうこと」


いぶかし気に聞いてくる。
結構やっぱり興味あるんだなあ。


「俺達の世界の兵器は見た目はこれと変わらないけど、撃つものは違う。火薬を詰めた金属の筒に撃ち込むための先をとがらせた金属の円筒を火薬の力で爆発させて撃ち出すんだ、それを弾丸、薬莢って・・・まあ、わからないか」


そう、話を切り上げようとしたら、フューリは俺を見上げ気味に、なんとなくでもわかるくらい目を輝かせていた。


「とても興味深い、兵器技術はその世界の最先端の技術になる。とても興味がある」
「そ、そうか?」
「もっと聞きたい・・・・聞かせてくれるなら、同行を許す」
「まだ許してなかったんだ・・・・いいさいいさ、駄賃代わりだ」
「ん」


月夜に照らされて、話を熱心に聞くのは、いつかのマリアやアーティフィシャル王を彷彿とするなあ。
夢物語を聞くような子供みたいな表情でさ。


「凄い。」


めっちゃ目を煌かせてそう言ってきた。


「魔法が使えない代わりに様々な知恵を総動員して家や城を建築するように新しい技術を生み出している。
ある種の秩序のようであり、その全てが非常に合理的。とても興味深い」
「お、おう、まあ、楽しいんならいいけれど」
「玩具ですら、子供の為だけでなく、大人の娯楽としてまで発展させている。
鬱憤などを兵士ごっことして晴らすのは、この世界ではできない話。」
「・・・・世間様からの評判は良くないけどネ・・・・」
「理解のあるなしは有る。しかしそれがコミュニティとして社会を築きあげている。その時点でこの世界よりその点は進んでいる。」
「た、確かに」


急に大臣とか王様が騎士ごっこで戦ってたら気がふれたと思うだろうしな・・・。


「・・・・・羨ましい」
「え?」
「なんでもない、そろそろ到着する。」
「え?」


辿り着いたのは、外門ポータルと呼ばれる近くだったはず。


「『【起動】アンファンク』」
「うおお!?」


足元に魔法陣が輝き、フューリと一緒に俺はどこかへ飛ばされた。
どうやら湿った空気と苔むした臭い、洞窟のようだ。
フューリが魔法で明かりをつける。


「私に反応するようにしてある、依頼の先へ飛べるように」
「依頼って、そういえば・・・・今回は何を?」
「それは・・・・・っ・・・くる」


奥の方からやってきたのは巨大な二又の蛇だ。


「下がって、あれはツインスネーク、猛毒で危険」
「ちょ!それならお前も」


「『凍てつきフロイ砕けよブラク汝の敵を我は貫かんペネトレアン【凍飛槍】アスラース』」


鋭い氷の矢が幾本も蛇に突き立てられ、動けなくなる、そのまま被弾部からピキピキと凍り始めた。


「す、すげぇ・・・・強いんだな・・・いや、そら、そうか・・・何度もこんなの受けてるんだもんな・・・・まあ、とにかく、今日はこれでお終いか?」
「いまのは道中遭遇しただけ」
「は?」
「目的は、まだ先」
「うそーん・・・・」


その声に反応したかのように、奥の方から赤く光った大量の魔物の目がこっちを見た。


「クソッ!!」


銃を構える。
鼻や目、そこらを狙えばこれでだって・・・!


「無駄、そんなので倒せるような魔物はいない」
「そうだろうけど、援護くらい・・・!」
「邪魔、下がって。私がすべて倒す。命令。」
「・・・・ラジャー」
「『【氷瀑】フロスボー』」


途端に路面が津波のように凍てつき、奥に向っての道を氷で舗装すると同時に、氷に光が映り凄く奇麗に洞窟の中を照らす。


「見えた、全部で19」
「おいおい・・・!違う魔物達で襲い合わないのかよ・・・!」
「秩序が成りたっている、異質ね」
「そんな簡単に・・・」
「問題ない」
「は?」


手を頭上に掲げると詠唱を始めた


「『煌けニブロ祖は七天仰ぐ彼の氷精アレティウムヘリアイース』」
「ああもう!!」


そんなのを待つはずもない襲ってきた魔物をマギアエッジで受ける。


「くっそ・・・・獣の馬鹿力かよ・・・・!!」


土でよかったあああ!
いや、マジで。
他の属性だと地力の差で押し負けてたかもしれない。


「こんのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


何とか襲い掛かる獣をいなすので精一杯だ。
くっそ、剣術は全然だから対人はできてもこういうのはキッツイ・・・!!


「・・・・・」


くす、と彼が笑んだ気がする。
悪かったね面白い見世物で!!


「『我が呼び掛けに応じよコルゼナブ氷の女王クリナニアビルグ彼の者に美しい眠りをエネテゥレアスリーズ【永結・永眠回廊】グラスト・フロジアルメイズ』」


地面から魔物達が全て凍てつき始め、断末魔と共に凍り付く。
え、えぐい・・・・。


「援護はありがとう、でも、いい。常に私は結界魔法で自身を覆ってる。」
「・・・・ホント、器用なこって」
「・・・・・えっへん」


軽く胸を張るこいつが、ちょっとかわいく見えた。
いやいやいや、俺にそのケはないから!!そういうフラグ立てんな!!


「どうしたの」
「あ、すまん、行こうか」
「ん、先はまだある。秩序立った魔物といい、恐らく強敵」
「うへえ・・・・」


マギアエッジをホルスターに戻し、氷の道を進むのだった・・・・・。




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