ガンズ・バイ・デイズ―高校生サバゲーマーの魔法世界奮闘記―

ファング・クラウド

BRIEFING:15 胎動

少女かと思ったその顔は端正な顔立ちだったからで、少年のようだった。
綺麗なタキシード姿だった。
宵闇に溶け込む様な黒いタキシードに、結い上げた青い髪が似合って悔しい事に男相手に見惚れる様なミステリアスな魅力が有った。
オレにもそんな魅力があればなぁ・・・。




「・・・・・・大丈夫?」
「え?あ、ああ、大丈夫大丈夫」


いけない、ボーッとしてたようだ。


「私はフューリ・ティルノス」
「オレは天城 空牙、よろしくな」
「知ってる、話は聞いてるから」


そっけない・・・いや、興味なさそうにそう呟く


「今このベランダは部屋の温度より-2度を保つように魔法がかけられているわ」
「随分便利だな魔法」


本当、額に雷の傷が有る少年とかの世界観だよなぁ・・・


「・・・ねぇ、何故貴方は闘うの」
「へ?」
「闘わなくたって、いいのに」
「だって


ふと問い掛けられる。


「んー・・・考えたこともなかったなぁ」
「え・・・?」


ありのまま答えたら信じられなかった、なんで?


「逆に聞くけど、理由が無かったら戦ったらいけないのか?」
「・・・それは不自然」
「じゃあフューリは何だ?」
「・・・私は私の国を護る為にその時が着たら杖を執る」
「私の国・・・?」


ああ、なるほど、軍人希望とかってやつかな?


「オレは・・・あれだ、恩返し、うん・・・助けてもらってさ、助けてもらった相手が泣いてるならぶん殴る、それだけさ」
「・・・」


それまで感情の色が見えなかったその瞳に、興味が宿ったような気がした。


「・・・そう、邪魔した、ね」


そう言って立ち去るフューリ。


なんだったんだ?


「・・・不思議な奴だったなぁ」
「こんなとこに居たのかクウガ」
「レオ?」
「パーティは終わったぞ」
「マジか、すまん、呼びにわざわざ来てくれたんだろ?ありがとな」
「いや、構わないが・・・フューリと何を話していた?」
「え?」


唐突に切り出され、若干困惑する。
一体なんだってんだ?


「ティルノスに勧誘されたのか?」
「まさか・・・ん?ティルノスって」


フューリの名字だよな?
何でここで出てくるんだ?


「・・・ああ、言ってなかったな。
ティルノスは北方に有る国だ」
「じゃあフューリは王子様!?」
「そういう事だ」


酔いが一気に飛んだわ!?
なんだよそれは!


「とりあえず、帰るぞクウガ」
「あ、うん、ホントレオはマイペースね」


詳しい話を聞きながら帰路につく。


フューリ・ティルノス。
ティルノスの代表王子として、既に国王相当の権力を有している。
プライベートでは滅多に喋らず、その詳しい出自すら謎だとか。


「ほへー・・・正に謎のプリンス、か」
「ティルノス自体が外交をあまり持とうとしない上、彼等は秘密主義者達だからな」
「・・・成る程、な」


何と無く、それを聞いて「可哀相」と思ってしまった。
ただでさえ王子として束縛されて、国の方針で自分を知ってもらう事すら出来ない。
――――――――――――孤独。
それは、途轍もなく辛いと思う。


「・・・よし!」
「どうした、クウガ」
「レオ、オレさ、フューリ王子と友達になるわ」
「・・・っ」


驚いた様に目を見開き、直ぐにフッと軽く笑い


「・・・ああ、クウガになら出来るさ」
「ありがと、レオ」


お互いに笑みあい、互いの部屋に入る。


明日から魔法学校生徒、かあ・・・
ただのサバイバルゲームが好きな高校生が思いもよらずファンタジーの仲間入りか。
ラノベでも
ゲームでも
なんでもない、そこで暮らし、働き、営み、栄え、そして死んでいく。
紛れもない「現実」リアルとして。


ベッドに横たわり、夜はふけていった。


―――――――――――


「計画は順調か」
「ああ、問題ない、サギ」
「ならば良い、イカル」
「カナリアの様子はどうだ」
「エナガとガンにせっつかれながら急いでるわぁ」
「セキレイにも伝えろ、間も無く時が来る、と」
「じゃあいよいよ」
「ああ、必要な条件が整う」
「きゃー♪あぁ、楽しみぃ♪」
「ヒガラ、気を引き締めろ」
「なぁんでよぉ」
「遊びではない、これは全てを覆す為の戦いなのだ」
「我等の悲願である大陸統一、その為の聖戦、その為に我々は何度も器を用意し世界を渡り続けた。
そして、裏から操作し続けて来たのだ」
「そうだ、これだけの膨大な時、お前に用意出来るのか」
「なによぉ・・・辛気臭いのぉ・・・」
「ハッハッハッ!ヒガラ!全部が終わればお前の望むままなのだ!腐るな腐るな!」
「ズク・・・あんたってただの暑苦しい奴だと思ってたけど、違ったのね、面倒な暑苦しい奴ね」
「全く・・・では月が輪環を成す時に始める、用意を怠るな」
「「全ては我等の予言の通りに」」




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