ガンズ・バイ・デイズ―高校生サバゲーマーの魔法世界奮闘記―

ファング・クラウド

BRIEFING:01 ようこそ非日常!おいでませ非現実!

「うああああああああ!!!?!?」


どさっ!!っと、鈍い痛み、鋭い衝撃が体を襲う。


「っ~~・・・・な、なんなんだぁ・・・・?」


オレ、天城 空牙はミリタリーオタクなサバイバルゲーマーだ。
ある日、俺は仲間の武装と自分の装備を持って山を登っていた。
山頂が自分達のベースであり、そこにジャンケンで負けた俺がくっそ重い荷物全部全部担いで登ってっいたんだが、足を踏み外して崖下へ墜ちてしまった。
そして、目を瞑り、開いた瞬間。
そこは鬱蒼とした崖下ではなく、開けた原っぱ。
そこにある程度の高さから強かに落下したようだ。


「え、なに?あの山ってこんなだっけ?」


困惑気味に振り返ってもそこにあるのは同じ原っぱ。
ただただ広い草原が、ただただずうっと広がっていた。
痛む頭をさすりながら、立ち上がる。
ただただ、ずーっとした平原で、時折気持ちの良い風が吹くだけだった。


すると、足元に微かな振動を感じた。
振り向けば、何やら土煙が上がっている
よく見ればトカゲ?いや、竜に乗って人が向かってくる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


甲冑を着用し、ロングソードっていうのかな?それを持って突撃する様は正しく中世の騎士のそれだった、が
事件は「その事」ではなかった。
その手に持った剣で突き刺そうとしてくる?!


「覚悟おおおおおッッッ!!」


慌てたオレはつい叫んでしまった。
咄嗟にチェストホルスターからSOCOM Mk-23を、「銃」を手にし。


「と、止まれ!!それ以上近づけば発砲する!!」
「!?」


驚いた様相で、刃を向けていた青年が騎馬・・・・騎竜?を止める。
周りの仲間を集め、刃だけはこちらに向けたまま、警戒・・・されているのか?


「おい、お前は何故こんなところにいるんだ」
「そんなのは俺が聞きたいよ!!一体なんだってんだ?ドッキリにしては規模デカ過ぎんぞ!」
「ドッキリ?」


とりあえず、Mk-23をホルスターに戻し、思いのたけをぶちまける。
刃を向けてきた彼の仲間達も一応に首を捻っている。
その内、その中の一人が不意に声を上げる。


「お前、もしやドロテオ皇国の回し者か?」


瞬間、皆顔を険しくし、一斉に殺気立つ。
どうやらこの若くして騎兵やってるこいつはその国と戦ってるのか。
・・・・ん?


「え?ここ日本じゃないの?」
「ニホン?なんだそれは」
「・・・・・・・・・・・・」


正直に言おう、ここでオレは深呼吸をしたんだ。
もちろん、聡明な奴なら誰でもわかるだろう。
皆さんご唱和ください!
さん、ハイ!


「ラノベかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッ!!!!!!」
「っ~~~~!五月蝿い!!蛮族かお前は!!」
「ちげーよ!?ええ、と、なんと言うか・・・」


耳を押さえ吼える彼に答えるオレ
やっば、焦って言葉が出てこない。
何で俺こんなラノベ世界?What's!?


「そ、そう、時の迷い子、かな・・・・」
「な、な・・・・馬鹿にしてるのか!?」


戦慄き、怒る彼
ですよね!?オレもそう思う!!
どうしてこういう時に厨二しちゃうんだよ!?
おかしいだろ!!


「やはり貴様、ドロテオの回し者か!!」
「それは違うんだって!!!」


必死に語りかけるも、状況はオレに不利。圧倒的に。
オレだって逆の立場ならそうする。
その時、隣の奴が、彼に耳打ちで話しかける
それに、耳を向けた彼が怪訝な顔でこちらを見ると、その隣に居た偉そうな奴がオレの方に刃を向け、首に刃を当て


「ふん、ならば今ここで、お前の手で、向かってきているドロテオの騎竜隊をなんとかして見せろ。別にどんな手を使っても構わんが、逃げよう物なら、そのそっ首縊り落とす。」


そう告げてくる。
だが、こういう時、何故かオレの頭はというと




「(そう、そう言えば、こういう恐竜って確かラプターだよな。)」


そんなことを考えながら、オレは言われた通りの方向を見る。
確かに土煙を上げる何かが迫ってきているのが解る。




――――昔から、妙に達観してると言われていた。
祖父の影響だと、両親はよく言う。
オレの祖父は旧日本陸軍の兵隊として、戦争を渡り歩いたらしい。
幼心ながらに、そんな祖父を尊敬していたし、憧れもした。
だが、幼い心にそれだけの経験を談すれば、価値観がズレていくのだった。
幼稚園児の時も地震が起きた際に全く慌てず、隣の幼馴染を勇気付けていたりと、とにかく生命的危機な状況では全く動じないのだ。






「アレを止めればいいのか?そうしたら、オレはあんた達に命を取られないですむのか?」
「ああそうだ、出来るものならやって見せろ」


訝しげな目でこちらを嘗め回しながら、そう告げる偉そうな奴。


「解った、ちょっと良いか」


そっと、首から刃を外し、彼の跨るラプターに手を伸ばし、そっと肌を撫ぜる。
硬く、ごつっとしており、例えるならワニの表皮を硬くしたような物だった。
目元に手を向けると嫌がるように顔を背ける。
どうやら、それほど好戦的な竜ではないらしい。


「貴様!一体何の真似だ!!」


激怒したように偉そうな男がこちらに剣を向けようとする。
ソレを静かに押さえ謝罪する。


「ああ、すまんすまん、ちょっとした確認だ。」
「なんだと?」
「だってオレ、竜なんて見るの初めてだからさ」
「は?なんだと?」
「・・・・!」


不意に顔を土煙の舞う方へ向ける。
何か、言葉に出来ない感じが身体を巡った。
これはオレはよくあることだ。タイミングみたいな、そんな「雰囲気」が体の中を駆け巡るのだ。


「おい、どうした」
「シッ――――」


人差し指を立て、彼らに「静かに」のハンドサインを送る。
――――風の向きが変わったのだ。
今まで向かい風気味の横凪ぎだった風は追い風になった、射距離も伸びる。後は狙って撃てば良い。
条件は整ったとばかりに自分のケースを探し出す。
そしてそのケースから我が愛銃、Hヘックラー&・ウントK・コッホ  Präzisioプレズィnsschüジオンシュッtzengeツンゼンゲーwehr-1  アインス。一号精密狙撃銃と日訳されるその銃、通称コールネーム「PSG-1」を手に屈射姿勢に入る。
距離はおよそ70、少々遠いが、風があるから大丈夫だろう。
ゆっくり引き絞り、発射する。
シリンダーが後退し、肩に衝撃が来る、バレル内を凄まじい速さでプラスチックの弾丸が通り抜け、発射されると同時にソレを発射させたと圧縮されたエアが抜ける音が「バシュン!!」と野原に響いた。


次の瞬間には、狙った通り向かって来るラプターの目に直撃する。
スコープ越しに、急に悶え、あたりのラプターを巻き込み倒れる様が解る。
続けて2発、3発と引き金を絞る。
同じように肩に衝撃が走り、エアが抜ける音が「バシュン!!」と野原に響く。
同じようにラプターの目に当たり、暴れだしたラプターは乗っている騎兵も対応できず、周囲を混乱させながらコカしていく。
そういて、10発狙撃する頃には、進む影は無く、謎の現象に竜が、人が怯え切っているのがスコープ越しに解った。
そこにあるのは、恐らく地上を闊歩し、速度で蹂躙する騎兵ではなく
夜中に怖い話を聞き、震えて母親に甘える幼子だった。




――――――――じいちゃんの言っていた通りだ。
そう思い、祖父のありがたい言葉を思い出す。


「いいか、空牙。生物には鍛えられず、致命傷になる部位が3つある。この場所はな、生きている奴なら皆必ず持ってる。そして脆いんだ、退化していても「なくなりはしない」からな。1つは目、1つは生殖器だ。」


思い出すようにその言葉を回想する。
先ほど、ラプターの身体を触った際、やはり目は庇った。
そこからきっと生物としての強度は多分変わらないと解ったのだ。
だから目を狙撃できれば恐らく行動不能に出来る。
そう確信めいたものがオレの心で確固たる物として出来上がっていた。


「でも、竜にも通用するなんてな・・・流石じいちゃんだ。」


そう呟き


「これで良いだろう?」


スコープから視線を外し、立ち上がる。
すると俺の前に広がっていたのは唖然とし、目を白黒させ騒然としていた彼らだった。


「え・・・あ・・・え?嘘・・・・だろ」
「いやいや現実見ろよ、ちゃんと何とかしたぞ」


苦虫を潰した表情ってこういう感じなんだろうってくらい微妙な表情で俺が言うと、相手も相手で何とも面食らった表情になり、どよめきが走る。
怯えて敗走する敵に追撃もせず、ただただ騒然と喧騒が戦場を支配する。


「これで、オレの命は保障してくれるな?なんせお前達の願いを叶えたんだ、ギブアンドテイク、今度はお前たちがオレの願いを叶えてくれ。」
「え、あ、え・・・・あ・・・・・」
「だって、お前達が突きつけた条件だろう?まさか反故になんてしないよなぁ?
「あ、当たり前だ!俺は嘘つきではないぞ!!勝手に人をそんなロクデナシにするんじゃあない!!」
「ん、言ったな♪」
「あ、ぁ・・・・・・ぁぅ・・・・」


言葉も尻すぼみになり、になり、挙動不審になり。


「お前・・・一体、なんなんだ・・・・」


恐る恐る、警戒を解いた彼が紡いだ言葉は疑問だった。
オレは、「相棒」を肩にかけ、答えた。


「オレの名前は天城 空牙。狙撃手スナイパーでチーム:クロムナイツのリーダーだ。」


風がオレの髪を、身体を撫ぜ。去っていく。
そこで奇妙な感覚にオレは襲われた。


――――――――――ああ――――嗚呼、オレは、ここに来る為に今日まで生きてきたのかもしれない。
そんな不思議な感覚が体の中を通り抜け、出て行った。
見渡すが、当然にもない。
そっと見上げると、雲一つないそらが、オレを見下ろしていた。




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