超次元コンビニ 異世界支店 営業中

速翼

情報収集

赤髪の女性は店内を見て回るが、どうやら商品を理解できないようだ。


「ねぇ、この店って何を取り扱っているの?」


僕が赤髪女性を見ていると、ふとそんな質問をされた。

さてどう答える?お菓子や飲み物は通じるだろう。多分。ただ、カップ麺や電子機器はどう説明する?


「えっと、ひとつよろしいですか?」


彼女は無言で頷く。

情報を集めよう。僕はそう思った。そして僕が開示する情報のレベルを選ぶ。馬鹿正直に話しても危険なだけだ。


「3品まで無料。10品までは半額とさせていただきますので私に情報を頂けませんかね?」

「情報?」

「はい。如何せん私はこの辺りに無知なんですよ」


彼女はしばし考える。


「まぁ、私もそこまで詳しい訳じゃ無いけど...それでもいい?」

「是非」


交渉成立。という事で、バックヤードから椅子を二脚持ってくる。


「少し長引くかもしれないので、少しお話しながらなんてどうでしょう?」


僕は商品の紙コップとジュースを何本か持ってきた。


「紙コップですみません。ドリンクは紅茶でいいですか?」

「え?」

「え?」


かかった。そもそも紅茶は17~18世紀頃に高級品として広まったものだったと思う。つまりこの世界に紅茶があるのならそのくらいの文明レベルだと思われる。まぁ、異世界だから文明や発展のレベルは違うかもしれないけど、地球の文明はひとつの指針になるだろう。

ただ、この「え?」は紅茶を聞いた事ないから「え?」なのか、高級品の紅茶を飲ましてくれるの?に対する「え?」なのかは分からない。


「紅茶って、よく貴族の人が飲んでるっていう飲み物よね?」

「実はその件なんですが」


高級品ね、おっけ。でも紅茶が広まった時代を18世紀と見積もっても銃が一般的になってきた時代だし、腰に下げているロングソードの全盛期が16世紀くらいまでという事を考えると違和感を覚える。やはりこの世界と地球は全くの別物と考えるべきだろう。この時代に地球には無いものが、この世界ではあるかもしれない。


「実は私、事情がありまして。こちらの国には魔法があるのでしょうか?」

「は?何よいきなり」


魔法の有無はデカい。魔法があるならそれこそ文明レベルの予測ができない。


「当然でしょ?魔法部隊の無い軍隊なんて今どきあるの?」


魔法、あるんだ。じゃあ、今ぱっと思いついた言い訳を試してみよう。


「じつは、何者の仕業か分からないのですが、私は店ごと転移させられたようで」

「はぁ?」


必殺 全て何者かのせいなのですよ作戦。まぁ、間違ってないけどね。


「確かに見た事ない文字だけど。話してる言葉は大陸共通語じゃない」


いや、文字も話してる言葉も日本語ですけど。


「私の国ではジパング語として一般的に使われています」


その後も言い訳を繰り返して渋々納得してもらった。そしていくつか質問して分かったことを纏める。


ㅇこの世界には魔法があり、魔物もいる

ㅇ様々な依頼を達成する冒険者と、依頼を斡旋する冒険者ギルドがある

ㅇこの国の名前はアークラティア

ㅇこの国の政治体系は王政

ㅇ通貨は『両替』で出せるモノと同じ

ㅇ銃?何それおいしいの?

ㅇ女が冒険者してちゃ悪いの?今どきいっぱい居るわよ

ㅇって言うか紙コップって何?紙って高いのよ?しかもなんで破けないの?

ㅇねぇ、ねぇってば。聞いてるの?



「分かりました。有益な時間でした」

「無視?」


紙コップが水に強い理由なんか知るか。

とりあえず粗方の情報は集まった。おおよそ理解した。


「そういえば、あなたはこんな所へ何をしに?」

「何って、この店の裏ってダンジョンよ?」


な、ナンデスト!




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