龍神転生!世界の守護者は今日も気まま

シーチキンたいし

話し合い


「おぉ……大地のちゃんがめっちゃ怒ってる。だよねー」

『りゅーじんさまぁ』

「心配するな、私がここにいるかぎり、誰にも害されたりしない」

『りゅーじんさま!』

人間の集団が森に入ったときから、精霊達の目を通して、彼らを監視していた。

どうやら、精霊を捕らえに来たとかそう言うやからでは無いようだ。しかも、率いているのはこの国の第一王子らしい。

「龍神らしくしたほうがいいよね?」

最近はほとんど身体に引っ張られて、龍神らしくなってきていた。ちょっと真面目な感じで喋れば問題ないかと、重い腰を上げた。

こうして私は王子たちと初対面を果たしたのだ。


対面した王子達と喋っていると、なぜかすごい跪かれて、何だかこちらにまで緊張が伝わってきた。

もしかして、このドラゴンの姿だと喋りにくいのかな?と思い、初めての人化の魔法を使ってみた。

鏡がないのが残念だが、これはかなり上手くいったのでは?

「どうした?これなら話しやすいであろう?」

「ッ!!」

何だかドラゴンの姿より、緊張されてる?

まぁ、いっか。そう言えば調査とか言ってたけど…何のだろう?もしかして私がこの国に肩入れするかもとあわよくば思ってる?

無いな。

龍神として、精霊以外を贔屓するつもりはない。私は、もうほとんど精神も龍神らしくなってきていた。いや、神様に近いかも。

その人間を気に入ればあるかもだけど、だからって所属する種まで肩入れはしない。

調査の内容を聞こうとしたその時、私の視界に別の視界が入り込んできた。

「…その、調査なのですが」

「その汚い口を閉じろ人間」

「ッ!」

「あぁ、すまない。お前達ではない」

「わ、私達じゃない?」

これは、私が面倒臭がって作った魔法の一つだ。龍神の元々のスペックである精霊を通して世界を見ることができるならば、精霊が危機に貧したときにその信号をキャッチして、素早く対処できるような魔法が作れるのではないかと思って作った。

そうしてできたのが、精霊の精神が揺れたとき、強制的に自分の視界を繋げるものだ。これで精霊達虐げられている場所をすぐに感知し、神罰を与えていた。

いま、不意にその魔法が発動し、精霊との視界を共有したのだ。下位精霊のようで、酷く怯えている。

「また、我が子を虐める愚か者が出たようだ。全く、なんと下品なことか」

「す、すまない!我々は貴女に逆らうつもりなど無い!」

「お前が謝る必要はない。勘違いするな。私は生命に区別はせぬ。精霊を害す者は誰だろうと世界の敵である」

「!!」

「我、龍神の権限において施行する!精霊を汚す愚か者に神罰を!」

大きな魔方陣は突如として消えた。あれは神罰用の魔方陣。今頃検知した愚か者に神罰を下しているだろう。

「話の途中ですまぬな。愚か者を一人排除した。これで我が子も助かろう。で?調査だったか?」

「……貴女は、我々の敵ですか?」

「敵か否か……それで問うならどちらともだな。私は精霊に害を為さぬのであれば、敵にはならないが、精霊を汚すのならば敵だ」

「わかりました……。すみません龍神様、今日はこちらで野営をすることを許していただけるでしょうか?」

「……いい。許そう」


え?泊まってくの?

何故か泊まっていくことが決定した。










「どうします?殿下」

「いや、どうするも何も…俺達は調査にきただけだ。父上には龍神様はいた、と報告すればいいだけだ」

「それで、貴族達は納得しますかね?」

「しねぇだろうな」

テントのなかで話すリーフェンとラティオスは、今後の方針を考えていた。

「まさか本当に龍神様が存在するとは…」

「そうだな」

「どうかしました?殿下」

「……いや、何でもない」

ラティオスの心情は複雑なものだった。

初めてのあれほどの容姿の人間会った。いや、人間ではないが。それでも、王族として生まれたラティオスにはあらゆる美女が寵愛を得ようと集まってきた。

だが、彼女はそのどれにも当てはまらない。

ドラゴンの姿は美しく強かで、人の姿になっても変わらず美しかった。

初めての感情に戸惑うが。これを知らぬというほど鈍感でもなかった。

(よりにもよって…龍神様って…俺、超不幸だわ)

「なんとか説得するしかないだろう。貴族達を暴走でもさせて、龍神様の機嫌を損ねることになれば、それこそ待っているのは滅亡だ」

「はい。しかし、一度王に龍神様と会っていただいた方がよいのでは?」

「そうだな……、明日、早馬を出すか」

「お帰りにならないので?」

「あぁ、またここにこれる保証はない。ならば、龍神が許すかぎりここで待機した方がよくないか?そうすれば、貴族バカどもを牽制できる。」

「……分かりました。早馬に出す部隊を編成しておきます」

「頼んだ」

これは、ただのわがままだ。

一秒でも良い、少しでも長く、彼女の側にいたい。

国の、この世界の状勢を抜きにして、本気で、本気になってしまったから。だから、彼女の姿を少しでも多く胸に焼き付けたかった。
















「えー……」

精霊を通して監視していた私はそう言わざるえなかった。

だって、いきなり近所に人が引っ越してきた気分だ。居座る気だし。許可を出したの失敗だったかな?と思い始めていた。

「まぁ、いいか……」

『良いのですか?龍神様』

『人間…嫌いですわ』

『仕方ねぇだろ?龍神様は全部の精霊と繋がってる。遅かれ早かれ、ああ言う人間はいたぜ』

彼等は四大属性を司る最上位精霊たちだ。消えてしまっていた三体の最上位精霊…大地の最上位精霊と水の最上位精霊と火の最上位精霊である。

私がこの世界にやって来たことで、消滅してしまっていたが、再び復活することができた。最上位精霊なだけあって、散々人間たちに力を奪われて消えてしまっていたのだ。故に、人間と言うものをそもそも信頼していなかった。

「お前たちの気持ちもわかる。しかし、火のが言った通りだ。神様もおっしゃっていた。私が居ることで、利用しようとする愚か者は必ず出てくる。故に、私には神様にかわって罰を下す権利を頂いているのだから」

『龍神様…』

「無理に仲良くせよとは言わぬ。私も、二代目ではあるが、あの御方の眷属である。人間たちには私も少々腹立たしいからな」

『分かりました』

『わかりましたわ』

『了解!』

目を閉じれば、世界の全てが見える。

この新しい身体は、私に自由と幸福をもたらしてくれた。だから、それを与えてくれた神には、とても感謝している。

この身体に精神が引っ張られて、だいぶ人間離れしてきているが、それでも私はもうもとの世界に未練はない。

だからだろうか?今は、この世界に愛着が湧いている。精霊達も我が子のように接している。

「まぁ、どうにかなるだろう」

私はこの世界の龍神。

何者であろうとも、害されることの無い最強の存在になったのだから。


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